二世ドライバーのジンクスを跳ね除けるハータの速さ「僕はインディカーでチャンピオンになりたい」

2021年4月30日(金)13時0分 AUTOSPORT web

 インディカー・シリーズで二世ドライバーが偉大な父親を超えるケースは稀だ。


 いちばん頑張ったのはマリオ・アンドレッティの息子のマイケルだろうか。彼は父のやれなかったチーム・オーナーという仕事で成功してもいる。アル・アンサーの息子もインディ500で2勝など高い実績を誇った。


 ボビー・アンサーの息子はパイクスピークでは成績を残していたけれど、オープンホイールのトップカテゴリーでは成功できず。パーネリ・ジョーンズの息子たちも、リック・メアーズの息子たちもトップ・オープンホイールで活躍することはなかった。


 今のNTTインディーカー・シリーズに出場している二世たちは、ボビー・レイホールの息子のグラハムとブライアン・ハータの息子のコルトン。


 グラハムはキャリア6勝を挙げているが、近頃は振るわない。コルトンは今回が4勝目だった。デビュー3年目でこの数字は素晴らしい。しかも、今回は5回目のポールポジションからのスタートだった。グラハムのデビューして15年めになるが、PPは3回と少ない。


 コルトンのデビューは2018年の最終戦ソノマ。インディライツのチャンピオンシップを戦い終えて、経験を積むために……という出場だった。


 そして翌年からフル出場。3PP、2勝を記録した。エントリーはアンドレッティ・ハーディング・スタインブレナー・オートスポートから……ということになっていた。

26号車を駆るコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)


 今年もアンドレッティ・スタイブレナー・オートスポートやアンドレッティ・ハータ・ヒューパート・ウィズ・マルコ&カーブ・アガジェニアンといったチームがあるけれど、もろもろ出てくる名前は皆マイノリティー・オーナー。基本、全部マイケル・アンドレッティのチームだ。


 チームの意向で、今年からコルトンは26号車に乗ることになった。エントリーはアンドレッティ・オートスポートからだ。本家からの出場としてランクが上がったかのように感ずる人もいるかもしれないが、基本的には昨年とほとんど変わらない。


 ただ、マシンのメイン・スポンサーがゲインブリッジになった。インディ500のスポンサーも務めている会社だ。チームとして大型スポンサーに“勝てるドライバー”をあてがったということだ。そして、2戦目にして早くも勝利を飾った。3シーズンぶりの勝利だ。


 コルトンのピットには父ブライアンがいる。インディ500で2勝の名ストラテジストは、息子のことを知り尽くしているので、余計な声をかけたりしない。コルトンもその点が気に入っているようだ。そして今回、コルトンの勝利数は父ブライアンの勝利数と並んだ。PPは10回なので、まだ追いつくのにはしばらくかかりそうだ。

息子コルトンをみつめるブライアン・ハータ


 コルトンにはスピードがある。それも、父親譲りじゃなく、父親以上のスピードが。初優勝のサーキット・オブ・ジ・アメリカズでの速さも衝撃的ですらあったし、去年のミド・オハイオ/レース2での勝ちっぷりも見事だった。細身だが体力が十分にあることが今回の酷暑下での勝利で証明された。


 コルトンの速さはチームメイトたちを混乱させてさえいる。昨年のミド・オハイオ/レース2ではアンドレッティ・オートスポートのドライバーが表彰台を独占したが、ウイナーはいちばん若いハータで、2位はアレクサンダー・ロッシ、3位はライアン・ハンター-レイだった。


 ハンター-レイはもう年齢的にインディ500以外ではパフォーマンスが下がっている印象もある。ハータより9歳年上で、デビューが3シーズン早かったロッシは、一時は豪快な走りとスピードでセンセーションを起こしていたが、去年はPPなし、勝利もなしだった。


 今年もハータが先にPPを獲得し、優勝を記録した。ロッシはキャリア7勝で、PPは6回。ハータがこれらの数字を超えるのは時間の問題と見えている。コルトンは今やアンドレッティ・オートスポートのエース。21歳にして。ロッシはそれを認めたくないかもしれないが……。

コルトン・ハータの勝利を喜ぶオーナーのマイケル・アンドレッティ


 コルトンのような優れたドライバーが出てくる時には、強力なライバルも出現する。開幕戦ポールポジションのパト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)、開幕戦ウイナーのアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)たちとは、コルトンは長いこと戦って行くことになるのだろう。


 オワードはインディライツでハータを倒してチャンピオンを獲得。インディカーでもコルトンのチームメイトとなるはずだったが、紆余曲折あり、日本で走ったりもして、遠回りはしたがマクラーレンのシートを手に入れた。


 インディライツ時代、オワードはコルトンより完成度の高いドライバーだった。彼も21歳の若さでスピードと安定感を兼ね備えている。未だ勝利はないが……。コルトンは昨年ランキング3位だった。オーワードはランキング4位。もはや正真正銘のトップコンテンダーなのだ。


「僕はインディカーでチャンピオンになりたい。インディ500で勝ちたい。自分が何をやりたいのかはわかっている。その目標達成のために毎日努力をしている」と優勝会見で話したコルトン。これをさらっと言い切ってしまうところ、その純粋さが素晴らしい。


「この勝利でチャンピオン争いに必要な勢いを手に入れた」ともコルトンは語った。今年チャンピオンになる気満々なのだ。


 また、セント・ピーターズバーグの勝利でヨーロッパからの注目も集まっている。ハースからF1参戦に興味は示すも「フェラーリが支援するプログラムに所属できる場合だけだ」とハータは語っている。今シーズンの活躍次第で、彼のレース人生は大きく変わるかもしれない。

はやくも1勝目を挙げたハータ。昨年のシリーズ3位を上回る成績を残せるか注目される

AUTOSPORT web

「ジンクス」をもっと詳しく

タグ

「ジンクス」のニュース

「ジンクス」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ