「判定狙いはせこい」パリ五輪男子66キロ級連覇の阿部一二三、81キロ級に一本勝ちも120キロの相手に敗れる

2025年4月30日(水)6時0分 スポーツ報知

1回戦で一本勝ちの阿部一二三(カメラ・岡野 将大)

 体重無差別で争われ、昨夏のパリ五輪男子66キロ級で2連覇した阿部一二三(27)=パーク24=が初挑戦で1勝を挙げた。1回戦で、2階級上の81キロ級選手に背負い投げで一本勝ち。2回戦では登録体重120キロの相手に一本負けこそしたが、真っ向勝負を貫き、大きな見せ場を作った。決勝は、香川大吾(28)=ALSOK=が原沢久喜(32)=長府工産=に優勢勝ちし、初優勝した。原沢は2年連続の2位だった。

 伝統の舞台で大きな存在感を見せた阿部が畳から下りると、館内から惜しみない拍手が送られた。五輪2連覇で軽量級から、体重無差別の歴史ある大会に初挑戦したが、2回戦で一本負け。それでも「全日本選手権の畳の上に立てて、すごく幸せ。投げにいく、自分の攻める姿勢で試合ができた。悔いはない」と、すがすがしい表情だった。

 宣言通りに真っ向勝負でぶつかった。1回戦は15キロほど重い佐藤佑治郎(23)=山形県警=を得意の背負い投げで1分23秒の一本勝ち。正々堂々と組み合い、攻撃的な柔道を貫く姿に会場は大きく沸いた。2回戦は、登録体重120キロの鈴木太陽(22)=日本製鉄=との一戦。重量級が相手だけに劣勢の展開となった。

 左手から出血し、試合を止めて治療を受けた。残りは約1分。畳に戻ると「判定狙いはせこいというか、自分らしくない」と果敢に仕掛けた大内刈りを、体重差がほぼ倍の巨漢に返された。壮絶に散ったが「最後は正面からぶつかれて良かった。負けたのは悔しいが、すっきりした」と、よどみなく言った。五輪連覇中の王者は「挑戦者の気持ちが大切だと、改めて感じた」とうなずいた。

 小学生時代は体の大きな相手に負けて、よく泣いた。試合後は当時を振り返り、「僕も小さい頃は大きい選手に勝てなくて悩んでいた。柔よく剛を制すというか、軽量級でも重量級と戦える。柔道は楽しいと思ってもらえればうれしい」と小柄な子どもたちに思いをはせた。

 全日本柔道連盟の山田利彦強化委員長(55)は「思い切りのいい柔道を見せてくれた」と評価した。懸念された大きなけがもなく、視線は5度目の制覇が懸かる6月の世界選手権へと向かう。エースは「全日本選手権であれだけの勝負ができた。一回りも二回りも成長したい」と、さらなる高みへ闘志を燃やした。(三須 慶太)

 ◆近年の主な軽中量級の全日本選手権挑戦

 ▽古賀稔彦(71キロ級) 1990年の全日本選手権で75キロ前後ながら決勝進出。前年の世界選手権で当時の最重量級だった95キロ超級を制した小川直也に敗れて準V。

 ▽吉田秀彦(78キロ級) 91年に3位。翌年のバルセロナ五輪で金メダルに輝くと、雪辱を狙って94年に再び出場。準決勝で小川に判定による優勢勝ちを収め、大会6連覇を阻んだが、決勝で金野潤に判定負け。

 ▽内柴正人(66キロ級) 2004年アテネ、08年北京五輪で金メダルを獲得。いずれも出場資格を得た翌年に出場したが05年、09年ともに初戦敗退。

スポーツ報知

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