F1へのステップアップを目指す福住と牧野。FIA F2第2戦バクーで直面した高く分厚い壁

2018年5月1日(火)14時8分 AUTOSPORT web

 F1と同じようにFIA F2のバクーラウンドも大いに荒れた。しかし2人の日本人ドライバーたちが直面したのはバクー・シティ・サーキットが持つ難しさではなく、それ以前の問題だった。


 福住仁嶺は自身初の市街地サーキットだったが、レッドブルのシミュレーターで準備を重ねていたこともあってスムーズに馴染んでいった。F3でマカオやポーを走った経験がある牧野任祐は「特性はマカオに似ているけどこちらはコースも広いしバリアもちゃんとしていて、マカオの方が危なくて難しいかなという印象です」と語る。


 しかし予選ではセッション終了直前に黄旗と赤旗が出て福住は満足のいくアタックができず、牧野はマシンのフィーリングの違和感を拭えないまま終わってしまった。


福住は「最後のアタック1周目にターン7で(ニコラス・)ラティフィがスピンしていてクラッシュしそうになりました。その周はアタックを止めてもう1周アタックしたら、ラティフィがまだいてアタックできず。一体何をやっているんだか……」と語る。

福住仁嶺(左)と山本雅史モータースポーツ部長(右)


一方の牧野は「ブレーキングがダメで全然スタビリティがないんです。バーレーンの時もそうだったんですけど、リヤが浮いてすごく軽くなってしまう。超アンダーステアで全然攻めていけなかったし、チーム全体として多分クルマのバランス的に何か問題があったんだと思います」と語った。


 土曜のレース1では牧野がフォーメーションラップのスタート時に「グリッドにラバーを乗せようと全開でクラッチを繋いだのにストールしてしまった」と開幕前から頻発しているクラッチトラブルに呆れ顔。


 その後、ピットスタートを余儀なくされたものの前方での混乱もあって一時は8番手まで浮上。しかし、結局9位に終わりレース2のリバースポール獲得はならなかった。マシンのフィーリングは依然として好ましい状態ではなかったと牧野は言う。


「セットアップを変えたんですけど、マシンの特性が変わりすぎて全然攻めることができませんでした。昨日も同じアンダーステアではあったんですけど、今日はどこもかしこもすごいアンダーステアで、ブレーキングのフィーリングも良くなったわけではないけど昨日とは違って、ブレーキバイアスも自分が思っているのとは全然違ってしまっていました。それで頭がこんがらがっています」


 福住はアーデンの使用した技術スタッフパスの数が規定の12人より1人多かったため予選失格となり後方グリッドからのスタートとなったが、ペース自体は良くピットストップを終えた段階で6番手まで浮上していた。


 しかし15周目あたりから急にペースが落ちた。エンジンにトラブルが発生したのだ。


「最初にかなりプッシュしたんでタイヤがかなりキツく、中盤にプッシュしたけどペースが上がらなくて走りは厳しかったです。抜かれるときはあっさりと抜かれてぶつからないようにしようということだけ気をつけて走っていました。そうしたらレース終盤になって一気にパワーがなくなって、ストレートでも全然前についていけなくなりました」


 ピットインして新しいタイヤに交換しセーフティカーがチャンスをもたらしてくれることを願ったが、その幸運は訪れず、エンジンの問題も解決せず、どうすることもできなかった。


 レース後、福住のエンジン内部にブロー痕が見つかり、エンジンを交換することになった。F2開幕戦のバーレーン、スーパーフォーミュラ開幕戦の鈴鹿、そして今回と3戦連続でトラブルに見舞われている福住も自分の不運さに呆れるしかなかった。


 日曜のレース2では原因不明のペース不足で後方グリッドから追い上げることもできず、


「全くペースが上がらないしどんなにプッシュしても前に付いていけなかったです。全体的に遅くて、原因は全く分かりません。エンジンを交換したので、もしかするとそれが影響しているのかもしれないし、別の理由かもしれないし、スーパーフォーミュラからF2に乗り換えたからプッシュしすぎているのかもしれないし。とにかく異常に遅かったんで、そこはもう一度データを見直して次のバルセロナのレースに向けてしっかりと原因を見つけたいと思います」

牧野任祐/ロシアンタイム


 牧野もレース2ではスタートで6番手まで浮上してみせたが、後続を抑えるだけのペースがなく、ズルズルと順位を落として9位でフィニッシュするのが精一杯だった。


 それは曲がりくねったセクター2の低速コーナーからの加速が明らかに鈍く前走車に離されてしまい、肝心のメインストレートでDRSを使うための1秒以内に入ることができなかったからだ。


 開幕ラウンドから車速の伸びに疑問を感じていた牧野だが、エンジンの不調は確信に変わったという。


「タイヤのデグラデーションが来る前から全部のコーナーの立ち上がりで離されていきました。なんで? っていうくらい離されるんで、あまりこういうことは言いたくないけどウイングどうこうではなくてエンジンが何か足りていないんじゃないかって……この2戦で疑問が確信に変わりました」


「セクター2の低速コーナーの立ち上がりでビックリするくらい離されましたから。旧市街を走るセクター2で離されるんで、メインストレートでDRSが使えないから余計に離されるしっていう悪循環だけでした」 


 開幕前のテストから新車のエンジンとターボ、そしてクラッチにはトラブルが続発し、バーレーンではトラブルを防ぐため出力を抑えて走っているようだった。それでもバクーではマルケロフがエンジンブローに見舞われ、福住も問題を抱えた。クラッチの問題でスタート時にストールするマシンも多数出ている。

牧野を激励する山本雅史モータースポーツ部長


 FIA F2のテクニカルディレクターを務めるディディエ・ペランは「新車だから細かなトラブルは仕方がない。しかし改善に向かっているしもうすぐ解決できるはずだ」と言うが、F1直下を標榜し高価な参戦費用を必要とするワンメイクカテゴリーでトラブルや品質のばらつきに成績を大きく左右されるなど、あってはならないことだ。


 しかしFIA F2に挑戦し成功を収めるには、技術的なノウハウだけでなくこうした政治的な面で上手く立ち回り優れた道具と環境を手に入れることも必要不可欠な要素だ。F2からF1へのステップアップに挑む日本人ドライバーたちは今、高く分厚い壁に直面している。


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