【番記者の視点】柏の強さは守備にあり? パスサッカーの存在感に隠れるリーグ最少失点の堅守の秘密

2025年5月7日(水)13時24分 スポーツ報知

柏・古賀太陽

◆明治安田J1リーグ ▽第15節 柏1—0清水(6日・三協F柏)

 【柏担当・浅岡諒祐】苦戦しながらも勝ち点3をもぎ取った。日中降り続いた雨の影響で芝の上には水たまりがちらほら。パスやドリブルの際には「びしゃっ」と音が鳴ることもあった。そんな湿ったピッチの中、柏の攻撃は湿らなかった。持ち味のパスサッカーを軸に、相手陣地に攻め込んだ。

 後半7分には華麗な連携から先制した。DF古賀太陽の相手守備陣の間を切り裂くスルーパスにMF仲間隼斗が抜け出すと、仲間が送った左クロスに反応したFW垣田裕暉が右足で合わせてネットをの中へ。前回の名古屋戦(2〇1)を終えてから重点的に取り組んだというクロスから得点を奪った。

 リカルド・ロドリゲス監督は「清水さんの守備が固いがゆえに、なかなかゴールを割ることが出来なかった前半だった。この試合は拮抗(きっこう)した試合でしたから、先制点を取ることが両チームにとって難しかった展開だったと思います。その中、先制点を取れたのは大きなキーポイントだった」と試合全体を総括した。

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 今季の柏は攻撃的なスタイルを掲げるチームである。今季の始動時に指揮官が「私は当然、攻撃的な主導権を握るサッカーをしたいです。そのような明確なスタイルとともに勝ちを目指し、勝利を目指していく。まずは明確な攻撃的なプレイスタイルへの変化、改革というところをしっかりと目指していきたい」と宣言していたことからも明らかだろう。現時点でリーグ最高のボール支配率とパス数と、数字にも如実に現れている。

 しかし、ここまで攻撃力以上に威力を発揮しているのは“ディフェンス”。引き分けがリーグ最多の6回と多いこと、試合後に選手が追加点の必要性を訴えていたことで印象が薄いが、今節を終えた段階で失点数は10点でリーグ最少。リーグ戦で複数失点したのは、現在首位を走っている鹿島と対戦した第5節(1●3)だけだ。その鹿島戦が今季唯一の敗北。現在リーグ最小の1敗を誇る「負けないチーム」の源は、失点を最小限に抑えることから生まれている。

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 なぜ失点が少ないのか。攻撃が最大の防御、という言葉があるように、まずはポゼッション重視のサッカーをやっていることが理由の一つだろう。ボールを保持する時間が長くなれば、必然的に相手が攻める時間が少なくなる。昨季までも井原正巳前監督のもと、「まずは守備から」という意識のもとプレーしたが、保持される時間が長いがゆえに最後に決壊する場面もあった。

 選手個々の守備能力の高さも光る。前線には、187センチの長身を誇りながら走力にも優れる垣田が積極的なプレスで相手に圧力をかけ続ける。ロドリゲス監督が「彼の評価、価値は攻撃においてのコンビネーションもそうですし、守備においてしっかり前からプレスに行くところ」と言えば、鹿島でともに1年半ほどプレーした仲間も「どんなことも惜しまず100%でやってくれる選手。あの体格であのスピードがあって、ゴール前の迫力がある」と称賛する。同じく190センチの体格を誇る長身FW木下康介、そしてエースのFW細谷真大も前線からの献身的な守備が武器。フォワード3枚の誰が先発で、どの組み合わせで出ても、そこの質は失われない。

 中盤から後ろも、185センチの大型ボランチであるMF熊坂光希が長い足を伸ばしボールを奪い、最終ラインでは古賀を中心とした連携で侵入を許さない。さらに、ゴールマウスには日本代表にも選出された経験があり、長いリーチで好セーブを連発するGK小島亨介が控える。古賀は「攻撃の時間が長いからこそ、守備を安定させなきゃいけないと強い気持ちを持って臨んでいる。それが実際に数字につながっているのは充実感がある」とうなずく。

 組み合わせも柔軟である。柏は開幕の先発を務めたDF杉岡大暉とDF原田亘が負傷中。3センターバックの左と右でパスと守備両面で大きく貢献してきた両選手の離脱は、本来ならばチームの命運を左右するような痛手だ。しかし、杉岡の場所には下部組織出身の21歳のDF田中隼人と前への推進力があるDF三丸拡、原田の場所には実績十分の主将DF犬飼智也と攻撃力の高いDF成瀬竣平がそれぞれ穴を埋めている。左右のどちらかにサイドバックの動きが得意な選手がおり、試合の中で疑似4バックにも変形するリカルドサッカー、そしてその中でも多様な組み合わせを試すことによって難局を乗り切っている。

 田中は「杉(岡)くんもぼくも三(丸)くんも全員タイプが違う。守備の予測、1対1の部分で学ぶことも多い。ベンチにいるときは杉くんも三くんもすごい良いプレーをして刺激になっている。負けてられない」と言えば、古賀も「選手が替わっても考え方は変わらず、全員が同じものを表現しているからこそ、人が替わっても今の数字を保てている」と手応えを示す。

 古賀はその上で、「去年以上に人を意識するようになった。監督からも最終局面で人にやらせないように要求されている。勝手に自分の背中を放棄することがなくなった。人が足りていないという状況が生まれにくくなっている」と分析。可変式のフォーメーションは攻撃だけで無く、守備でもプラスに働いている。

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 ロドリゲス監督は「攻撃的な主導権を握るサッカー」を大前提に、「私が目指しているのは、攻守にわたって完成度の高いパーフェクトなチーム」とも語っていた。首位の鹿島とは勝ち点4差の2位。攻守の完成度をさらに磨き、追走する。

スポーツ報知

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