阪神・村上 TORACOのハートにストライク!甲子園56年ぶりの2戦連続無四死球完封は「マダックス」
2025年5月11日(日)5時15分 スポーツニッポン
◇セ・リーグ 阪神2-0中日(2025年5月10日 甲子園)
阪神・村上頌樹投手(26)が10日の中日戦で2試合連続完封勝利を飾り、両リーグトップとなる6勝目を挙げた。前日からのスライド登板の影響を感じさせず、98球で自身初の100球未満の完封「マダックス」を達成。2戦連続で甲子園での無四死球完封は69年5月の若生智男以来56年ぶりとなった。この日から開催された「TORACOデー」を彩る快投。貯金を5とし、首位をキープした。
思いを乗せた98球目。村上が最後の打者ボスラーを二ゴロ併殺に打ち取ると、静かに両手で拳を握った。チームメートからの祝福を受け、ようやく頬を緩めた右腕。球団では21年の高橋遥人以来となる2試合連続完封を自身初の「マダックス」で飾った。
「完封できたのがまず一番。2試合連続だったのでそこはうれしかった」
唯一のピンチは早々に訪れた。初回1死二塁。上林に右前打を浴びたが、右翼・森下の好返球で岡林を本塁で憤死させた。「1点取られるのと、ゼロで抑えるのとは全然違う。いいプレーに助けられた」。ひとたび流れをつかむと、誰にも勢いは止められなかった。
キレキレの直球は中日打線を惑わせた。4回2死一塁では鵜飼を空振り三振。6回1死一塁では上林を空振り三振に斬るなど、高めのつり球に手を出させて凡打の山を築いた。5個を加えた奪三振数は39個となり、リーグトップタイに浮上。「真っすぐがいいからじゃないですかね。いい空振りが取れていると思います」。7勝11敗だった昨季は直球の被打率が・267だったが、今季は同・217に良化。表情からも自信がみなぎる。
両リーグトップの6勝目。好調の秘けつは最長10時間の睡眠にある。昨年から自分に合った疲労回復法を研究してきた右腕。温かい湯と冷たい湯に交互につかる交代浴、サウナなど試行錯誤を続けた末に、たどり着いた。
「やっぱり寝るのが一番だった。8〜10時間ぐらいは寝られるようにというので、それぐらい寝てたら(体調は)良くなりました」
シーズン中のナイター翌日は基本的に午後0時まで寝るよう心がけて、睡眠時間を確保した。デーゲームの際は「工夫して早めに寝るようにしています」と生活リズムを順守。寝る子は育つを体現する「爆睡男子」だ。
この日を含め3度の完封はいずれも無四死球。甲子園での中日戦は6戦6勝と無双を誇る。「いいリズムになって投げられている。負けたくない気持ちと、そういうのがうまくかみ合っているんじゃないかな」。先発の柱として、疲労は睡眠で吹き飛ばす。目覚めるたびに右腕は進化を遂げる。(山手 あかり)
<データ>
○…村上(神)が前回登板の5月2日ヤクルト戦から自身初の2試合連続完封。無四死球で連続達成は、阪神では20年に西勇が9月11日の広島戦と同17日の巨人戦で記録して以来だが、両方甲子園で達成したのは、69年若生智男の5月7日広島戦と同11日の巨人戦以来56年ぶりになる。
○…投球数98は自身4度の9イニング完投で最少。100球未満で完封の「マダックス」は阪神投手では21年10月2日、中日戦の高橋以来4年ぶり。右腕では10年9月12日、ヤクルト戦の秋山拓巳以来15年ぶりとなった。
▽マダックス 大リーグで100球未満での完封を意味する言葉として定着した。86〜08年にブレーブスなどで活躍したグレグ・マダックスの名にちなみ、マダックスは通算35完封のうち13度を100球未満で達成。抜群の制球力は「精密機械」と呼ばれ、通算355勝、サイ・ヤング賞4度、最多勝利3度、最優秀防御率4度。14年殿堂入り。