慶大野球部密着で人気のYouTube「ANDTV」が開局2周年 次なる展開「30703」に込めた意味とは
2025年5月17日(土)17時0分 スポーツ報知
アマ野球ファンにはすっかりおなじみになった「ANDTV」のサムネ。視聴者の「知りたい」へ徹底的に応えていく
東京六大学野球リーグの慶大に密着取材するYouTube「ANDTV」が6月2日で開局2周年を迎える。深く濃い番組制作が野球ファンのハートを射止め、この1年でチャンネル登録者数は3000人から1万5000人へと激増した。「ANDTV」を主宰する、慶大野球部OBで元テレビ東京スポーツ局プロデューサー、現在は合同会社AND代表の山崎満靖さんに、今後の展開を聞いた。(加藤 弘士)
「ANDTV、見た?」は東京六大学野球ファンの合言葉だ。東京六大学野球の開催日、外苑前に向かう銀座線に乗れば、車内でANDTVを視聴するファンに遭遇することも珍しくない。この2年間、山崎さんは慶大野球部への尋常ならざる愛を胸に、キャンプ地の鹿児島や旭川、さらには海の向こうの米スタンフォード大まで独自取材を敢行。ファンの「知りたい」に応えてきた。
「一番見て頂けたのは、高橋由伸さんが慶大野球部を指導する『母校に帰るシリーズ』で、もうすぐ再生回数が40万になります。慶応高校の夏の甲子園Vメンバーである丸田湊斗選手、大村昊澄選手の奮闘や、清原正吾選手のプロ志望届提出なども多くの方々に見て頂けました。昨夏の大学日本代表候補強化合宿では、早大の選手たちに『ANDTV、安部寮の食堂でみんなで見てます』と言われて(笑)。あれはうれしかったですね」
あまりの密着ぶりに、視聴者の多くがこう思うことだろう。「山崎さんは、どうやって生計を立てているのだろうか?」。巷で流れる「資産家説」を否定し、実情をこう明かす。
「実家は愛知県の農家、資産家でも何でもありません(笑)。ANDTVを始めて2年間、全部持ち出しで本当にギリギリです。テレ東時代の“貯金”も底が見えて、このままでは今のペースでの制作が難しくなるので、今後は何とかご協力いただけるスポンサーさんの目処をつけられればと思っています」
上質の番組制作には交通費などの経費がかかるのが実情だ。そのためにも、さらなるチャンネル登録者増は必須の課題。当面の目標を「30703」と定める。その意味とは?
「神宮球場の座席数です。超満員の数字を一つの目安にしています。チャンネル登録者数イコールANDTVのファンと捉えれば、好きでいてくださる方で、神宮球場を満員にしたいイメージです。自分がやりたいのは、日本のスポーツ文化に寄与する理想のメディア作りであり、テレビ作りです」
そして自らの使命として、「野球指導者の参考書になるような番組制作」を掲げた。
「少年野球に行くと『指導者ガチャ』があるじゃないですか。野球への入り口で指導者の方がきちんと教えられるかどうかで、子供たちの興味も変わってきます。面白くないと、サッカーやバスケに行っちゃいますから。今までは慶大の堀井哲也監督の指導哲学をメインにお届けしてきましたが、今後は『参考書』の多様性も広げていきたいです」
内容について「“日本一濃い”チャンネルになった」と自負する山崎さん。東京六大学野球の現役部員やその家族、ファンの間で、その評価は揺るぎないが、視聴者をさらにライト層へと広げていきたい思いがある。
「やっぱり、もっと現役の学生に神宮球場へと来て欲しいですよね。そのきっかけ作りとなる番組になれたら、最高ですよね」
取材から編集まで、全て一人で行ってきたが最近、変化が生まれ始めているという。
「現役大学生や20代の社会人から『できることがあればANDTVを手伝わせて欲しい』との連絡が来るようになりました。特に若い世代に響いていると思うと涙が出る程、うれしかったです」
野球を愛するファンの輪が少しずつ広がり、チャンネル登録者数が「3万0703」になれば、番組を制作する上での“可動域”も広がり、新たな展開が可能になるだろう。
「神宮球場で試合を見ていると、たまに心ないヤジも聞こえますよね。でもそれを全て応援の声にしたいんです。3万にとどまらず、10万、30万…と愛される番組制作を続けていきたいと思っています。日本のスポーツ文化発展を目指して、化学反応を起こしていきたいですね」
ファンに響くコンテンツ制作に最も必要なのは、熱意。山崎さんの動画にはそれがある。アスリートへの愛にあふれたANDTVへの共感の輪は今後、さらに広がりを見せていく。