今季初勝利を挙げた阪神・大竹「2軍は自分がいる場所じゃない」心理テストで前向きな考えに
2025年5月18日(日)5時15分 スポーツニッポン
◇セ・リーグ 阪神5—2広島(2025年5月17日 甲子園)
投手は球速が全てではない。大竹が今季初勝利で、それを証明した。4イニング連続で3者凡退に抑えた4回から7回まで、直球は全て130キロ台。4回は打率リーグトップのファビアンを、チェンジアップを2球続けた後の内角137キロ直球で、見逃し三振を奪った。末包は79キロのスローボールで捕邪飛に抑えた。
150キロ全盛の時代に逆行する球速でも、威力があった。「(7日に)ファームでけっこう点を取られて。もう1回原点に立ち返って、1球1球、打者としっかり向き合って投げようと思った。打者と投手の間には、球速表示やトラックマンのデータには表れないことがあると思うので」。頭脳派が重視したのは心。意識的に腕を強く振ったことで、多彩な変化球が副産物的に生きた。8回途中2失点で広島戦通算10勝(1敗)。今年も鯉キラーは健在だ。
春季キャンプ終盤に下肢の張りを発症して大きく出遅れた。開幕しても2軍。周囲の活躍が聞こえ、焦りで状態が上がらない悪循環に陥った。出場機会が巡ってこない、ソフトバンク時代の辛い2軍生活が頭をよぎった。「だから、ちょっとしたことでイライラしていた」。停滞の日々から抜け出せたのは、ある心理テストのおかげだった。
「それはうつ病などの治療で使われるもので、認知行動療法というものでした」
学年でビリの女子高生が難関私大に合格する「ビリギャル」の著者で心理学に詳しい坪田信貴さんと阪神移籍後に知り合ったことでメンタル面の知識が増え、心理テストにたどり着いた。どんな時に心が軽くなり、逆に暗くなるのか。設問に答えることで自分を見つめ直した。前向きに考えられるヒントをつかんだ。同時に、「2軍は自分がいる場所じゃない」と自分に強くいい聞かせ、登板機会をじっと待った。
「色々な1勝目があるけど、今回も重みがある。トレーナーさんにも支えてもらった。1人じゃ何もできなかった。これからも気持ちを込めて投げたい」
まだ5月。勝ち星を重ねる時間は十分に残っている。(倉世古 洋平)