1台体制の矜持。リスク承知の「やったことがなかった」戦略で予選最上位を得たスリーボンド&福住仁嶺/第4戦

2023年5月20日(土)20時4分 AUTOSPORT web

 雨上がりの路面から走行がスタートした全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦オートポリスの予選日。午前9時35分から始まったフリープラクティスは気温15度/路面温度19度という肌寒さも感じるコンディションでスタートしたが、昼前から太陽が顔を覗かせ、14時30分の予選開始時点では気温23度/路面温度37度まで上昇した。


 この結果、一日を通したベストタイムは、フリープラクティス終盤でリアム・ローソン(TEAM MUGEN)がマークした1分25秒4。午後の予選では誰もこのタイムに届かず、コンディション変化への対応の難しさを口にするドライバーも数多くいた。


 全体的にタイムは下がったものの、暑くなった予選に向けた変化を読み切り、マシンのセットアップをうまく合わせ込めた陣営が、予選上位に並んだとも言える。


 そのなかの1台が、予選5番手に食い込んだ福住仁嶺(ThreeBond Racing)だ。福住の1台体制がスタートした昨年から苦戦が続いていたが、ここへ来て予選最上位を獲得したことになる。


 ただし、朝の走り出しから好調だったわけではない。フリープラクティスは22台中、21番手タイム。「朝は本当に不調で、トラフィックもあってまともにアタックもできず、流れは良くありませんでした。相当厳しいな、と思っていました」と福住。


 しかし、コンディションが変わった予選に向け、マシンのアジャストが決まった。


 また、福住の出走したQ1・Bグループでは、大津弘樹のクラッシュによる赤旗中断があった。車両によってはすでにアタックラップに入っていたが、幸いにも福住はアタック直前のタイミング。道上龍監督の「タイヤを温存して帰ってこいよ」との指示に従いピットへと戻り、再開後は温まったタイヤのままでアタック、見事Q2へと駒を進めた。


 Q2では当然ニュータイヤを履くが、ここで福住は「これまでやったことがなかった」という、“アウト・プッシュ”(アウトラップ翌周のアタック)を自ら決断。これは赤旗再開後のQ1が残時間の関係上アウト・プッシュになったこととは無関係で、「このままやって中途半端な順位で終わりたくなかった。ちょっとリスクをとりたかった」からだという。


「それがうまく結果には結びついたと思うけど、もう少し上げればトップ3に入れそうなところだったので、その辺は自分の腕の足りないところだったのかなと思います」と福住は悔しさを滲ませる。


 道上監督は予選後、朝から予選へのコンディション変化に対して、ギリギリのタイミングでセットアップ作業をしていたことを明かした。予選に向けた暖機が始まったのは、Q1・Aグループのセッションが始まる頃だったという。


「午前中の調子が良くなかったこともあって、予選始まるギリギリでアライメント作業が終わって……。コンディションも変わりましたし、タイヤのウォームアップラップをどうするかなども含め、結構考えてましたね」


 道上監督によれば、ウォームアップなしの“アウト・プッシュ”はQ1で他陣営を見ていても「できるのでは」と思ったというが、オートポリスはピンポイントでピークグリップを合わせ込まないと、全セクターで最速タイムを揃えるのは難しいという。


「早めにウォームアップしてしまうと、後半セクターでタレてしまったり。そのあたりを含め、(アタックタイミングは)ドライバーが見極めてくれないと難しいですね。不安はありましたけど、結果的に自己ベストというか、いい予選を見せてもらったと思います」と道上監督は福住の予選を評価する。


 1台体制でデータ面での不利を抱えるなか、福住とチームは「ときに険悪になりながらも」(道上監督)、信頼関係を積み重ねてきた。


「でもそれは喧嘩しているわけではなくて、お互いのリスペクトがあってのことですからね。仁嶺もいろいろと変わってきてくれているところもあるし、『1台体制でもできるぞ』っていうところを、自分たちは見せていきたいんです」と道上監督。


「去年から仁嶺が加入して、チームもピリっとしたし、ダンデライアンで乗っていた仁嶺が来てくれて、自分たちのクルマのいい・悪いも分かった。今年はSF23にシャシーが変わり、それが我々にとっては良かったのかもしれないですね」


 オートポリスの土曜日はコンディション変化をうまく読み切った形だが、「何が良くて、何が悪かったのかが、1台しかいないのでまだ明確には分からない」(福住)と、1台体制のチームとしてはまだ“核心(確信)”を手繰り寄せている最中のよう。


「明日のレースは(タイヤの)摩耗が厳しいレースになりそうな印象はあるので、しつこく、いいレースができればと思います」と福住。「ここはオーバーテイクできるサーキットだと思うので……とにかく速いクルマが作れるよう頑張ります」。


 予選に続き、決勝でも“1台体制のプライド”が見られるか、明日のレースに注目したい。

2023スーパーフォーミュラ第4戦オートポリス 福住仁嶺(ThreeBond Racing)

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