阪神・中野 「一歩目の準備」が生む安定感 回転しない送球が鉄壁一、二塁間の極意

2025年5月20日(火)5時15分 スポーツニッポン

 【猛虎プロフェッショナル“技の流儀”】阪神選手の「ここが凄い」というプレー、技術、数値などに迫る企画「猛虎プロフェッショナル“技の流儀”」。第2回は、中野拓夢内野手(28)の「一、二塁間深めの打球処理」に迫る。コンマ何秒の差を争うプロの世界。守備職人のこだわりは、相手打者が打つ直前に施す特別な「準備」にあった。

 右前へ抜けようかという白球へ、中野が懸命に左腕を伸ばす。グラブの先でかろうじてつかみ、右足を軽やかに後方へ踏み替えて一塁手・大山へ送球。塁審が右拳を振り下ろし、天を仰ぐ打者を横目にベンチへ——。23年の二塁コンバートから3シーズン目、何度も目にしてきた光景だ。

 「技術もスピードもある。(一、二塁間は)追いつけそうにないのに、追いついてくれる。助けられている」

 田中内野守備走塁コーチも、全幅の信頼を寄せる。一、二塁間への打球を、高確率で凡打にする“タクムの技”。捕球後の勢いに任せた体の回転を伴う送球ではなく、軽妙にバックステップを踏み、身を切り返して送球する高度な技術を、田中コーチが解説する。

 「体を回転させた方が投げやすいし、送球時に(ボールを)引っかけにくい。でも、回転しない方が速い。回転したらセーフ、というのも何個かあった」

 体を回転させない方が一塁への視線が切れないため、送球もブレにくい。一塁へ近い左打者は言うに及ばす、流し打ちになる右打者も体重が一塁方向へ傾く分、走り出しやすい打者走者との攻防。アウトとセーフの微差を制する、体を回転させないスローイングの安定感を「彼の強み」と田中コーチに称えられても、「プロでいろんな打球を捕ることで、そうなった」と中野は冷静沈着。重要視するのは「準備」だけだ。

 「(打球へ)スタートを切る一歩目を、インパクト(投球とバットが当たる瞬間)に合わせる。そこが全て」

 インパクトで両足がそろうと、前後左右、全方向へのスタートが一瞬遅れる。「ベストの一歩目が切れると(捕球直前の)“残りのあと一歩”を追いつける。どんな打球も、まずは捕ることなので」。リーグの規定打席到達者の内野手で、目下無失策は中野ただ一人。「試合の打球は生きている。試合でないと経験できない打球も多い」。日々の鍛錬と過去の蓄積に支えられ、範囲と正確性を増す「エリア51」。鉄壁の極意は「一歩目」に詰まっていた。(八木 勇磨)

スポーツニッポン

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