「巨人の4番の代わりは簡単には見つからない」原辰徳氏が主砲・岡本和真を欠くチームにエール 全員に必要な強い自覚
2025年5月24日(土)5時40分 スポーツ報知
4回、赤星(手前)が中前に2点適時打を放ち、喜ぶベンチの阿部監督(右)ら(カメラ・中島 傑)
◆JERA セ・リーグ 巨人5—0ヤクルト(23日・東京ドーム)
巨人軍前監督で、オーナー付特別顧問の原辰徳氏(66)が23日、スポーツ報知に特別寄稿した。指揮官として球団史上最多となる1291勝を挙げ、9度のリーグV、3度の日本一に導いた名将は、左肘じん帯を損傷した主砲・岡本和真内野手(28)を欠いて戦うチームに、選手全員が「俺がけん引するんだ」と自覚を持ってプレーしてほしいとエールを送った。
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赤星が見事な完封勝利を挙げた。甲子園で2日続けて4時間を超える試合を戦ったうえでの移動ゲーム。中継ぎ陣を休ませる意味でも最高の殊勲者に間違いないが、ここはあえて打線に目を向けてみたい。4点を奪った4回だ。門脇、甲斐、ヘルナンデス、赤星がすべて中堅から逆方向への安打を放った。バットのヘッドを最後まで返さず、軽打でつないだ。2巡目に入ったところであり、ベンチの意図がはっきりと見えた攻撃だった。
5月6日に岡本和真が負傷してから、巨人は本来の4番を欠いた戦いが続いている。言うまでもなく4番打者とは大黒柱で、中でも巨人軍の4番は特別だ。チームの勝敗を背負い、勝てば時に賛辞を受け、負ければ堂々と矢面に立つ。長嶋さん、王さん、落合さんだってそう。松井も和真も、もちろん私も。巨人軍の4番を担ってきたすべての選手がその矜持(きょうじ)を持ち、戦ってきた。その覚悟はすぐに備わるものではなく、そういう意味でも代わりは簡単には見つからない。
監督という立場としてもラインアップの4番に毎日、同じ名前を書き込めることほどありがたいことはない。少なくとも1、3、4番が固定できるチームは安定した戦いができるよ。和真の長期離脱でそれがかなわなくなったのは大きな痛手だが、ここで本当に大事なことは、その不在を引きずらないこと。得点力という面では苦しくなるが、「4番がいないんだからしょうがないでしょう」などと思う選手が一人でもいるようなら、それは厳しい戦いになってしまう。全員に「俺が巨人をけん引するんだ」という強い自覚が必要になる。
ピンチはチャンスだよ。そういう気持ちで臨んでもらいたいね。個人的な思いを少しだけ記させてもらえるなら、この時期に多少痛い思いをしてでも門脇と浅野には一本立ちしてもらいたい。門脇の守備力は球界屈指だ。浅野も見ていてワクワクさせる魅力がある。2人とも特別な選手であることは間違いない。この試合で4回1死満塁の絶好機で浅野は見逃し三振に倒れた。続いて打席に立った投手の赤星が放った2点タイムリーをどう見ただろうか。仲間の雄姿をたたえる一方で、悔しさを感じてほしいね。本来は、翔吾が決めなきゃいけない場面だからね。
最後にもう一つ。テレビ解説のためバックネット後方の席から俯瞰(ふかん)してみた球場は、本当に多くのお客さんに入ってもらっていた。選手は幸せに感じてほしい。ファンあってのプロ野球ということは、いつの時も変わらない。(巨人軍オーナー付特別顧問)