日本人初“世界5団体制覇”ボクサーから、また“被弾”しないように…担当記者も驚いた高山勝成の引退発表
2025年5月24日(土)16時0分 スポーツ報知
祝勝会で引退を発表した高山勝成さん
驚いた。3月、プロボクシング世界王者の高山勝成(41、当時)が祝勝会で突然、引退を発表した。過去に世界主要4団体ミニマム級王座を獲得した歴戦のチャンプ。昨年12月にはフィリピンで王座決定戦を制し、日本ボクシングコミッション(JBC)非公認のIBO同級王者にもなった。日本人初“世界5団体制覇”を祝う席で電撃発表。海外で防衛戦を行う計画もあったが、プロ45戦し「次戦へ意欲が湧かない」と明かした。大慌てで記事を書いた私。ボクシングに例えるなら“被弾”し、のけぞった。
高山に驚かされたのは何度目か。2010年には、JBC非公認の王座を求めて日本を飛び出した。フィリピン・セブ島を練習拠点とし、13年には敵地メキシコでIBF王座を3度目の挑戦で奪取。JBCが同年、IBFとWBO両王座を公認する呼び水になった。WBO王者だった17年には、「東京五輪で金メダル」を掲げ、アマ転向。五輪予選で敗れたが、再びプロ復帰後の昨冬、パッキャオ(フィリピン)ら名王者も巻いたIBOベルトを日本人で初獲得。挑戦の理由はいずれも「そのタイトルが欲しいから」とシンプルだった。
4月下旬。高山や関係者と食事をする機会があった。「もう試合もないし、ビール飲む?」と私が聞いたが、高山はこれまで通りのウーロン茶。「先のことは分かりません」と意味深に笑い、肉をほおばった。「えっ、引退撤回?」。一瞬あ然とした。その場は冗談だと解釈したが、こちらの想定外を連発してきた男だけに、記者の思い込みは禁物だ。
12日に42歳となった高山。近い将来、高校社会科の免許を持つ教員になってアマ指導か、あるいはジム会長になってプロ育成か、はたまた…。また“被弾”しないよう、しっかりとアンテナを張っておきたい。(ボクシング担当・田村龍一)
◆田村 龍一(たむら・りょういち) 1998年入社。かつて取材したボクサーらが次々ジム会長になり、時の流れを実感する。悩みは五十肩。