明石市出身の山崎、同じ被災県の子どもたちの前で「気持ちを入れていきたい」…連敗を止める103球の力投でファンの記憶に
2025年5月29日(木)6時0分 読売新聞
7回途中1失点と好投した山崎(28日)=片岡航希撮影
巨人4—1広島(セ・リーグ=28日)——巨人が広島戦の連敗を4で止めた。一回に増田陸とキャベッジのソロ本塁打で逆転し、七回にも加点した。広島は八回無死満塁の好機を生かせなかった。
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巨人の山崎は昨季、地方球場で5戦4勝と無類の強さを見せた。いつもとは傾斜や硬さの違う慣れないマウンドでも力を出せるのは、試合の中で修正できるセンスと繊細な感覚があればこそだ。今季初の地方球場となったこの日も、尻上がりに状態を上げた。
今回の舞台は、両翼91・5メートルと狭い石川県立野球場。「ちょっと慎重にいきすぎた」と一発を警戒するあまりカウントを崩し、初回のピンチでは坂倉に甘く入ったスライダーを狙われて適時二塁打を浴びた。だが、すぐに捕手の甲斐と意見交換し、「うまく使えた」という速球主体に切り替えた。
五回には、今月15日に逆転満塁本塁打を浴びた小園を外角の真っすぐで遊ゴロ併殺に仕留め、六回は初回の失点に絡んだ末包、坂倉から速球で連続三振を奪った。四回以降は二塁も踏ませず、「粘り強く投げられた」と振り返った。
石川県での巨人戦は4年ぶりで、スタンドには能登半島地震と豪雨で被災した子どもたちも駆けつけた。山崎は兵庫県明石市出身。阪神大震災を体験したという両親から、折に触れて「本当に大変だった」と当時の話を聞かされて育ったそうだ。だからこそ「野球で(人の)心を動かすことって少ないかもしれないけど、気持ちを入れていきたい」と特別な思いで臨んだ。
昨季は広島に0勝2敗と勝てず、今季も初黒星をつけられた。そんな天敵相手に我慢強く立て直し、七回途中1失点でリーグトップに並ぶ6勝目をつかんだ。「勝つことで、一層楽しい一日になったと思う」。広島戦でのチームの連敗を止めた103球の力投は、きっと被災地のファンの記憶に残るだろう。(財津翔)