男子バレーが成長した”もうひとつ”の理由 石川祐希が象徴する「時代」の変化とは

2023年7月7日(金)17時56分 ココカラネクスト

石川を筆頭に海外でプレーする選手やプロの道を歩む選手が増え、その経験が代表に還元されている(C)Getty Images

 男子バレー日本代表、好調の秘密。1つは10年スパンで取り組んできた強化が継続し、実りの時期を迎えたことにあるが、もう1つ、大きな要素がある。プロ選手が増えたことだ。

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 プロリーグである野球、サッカー、バスケットボールと異なり、バレーボールの国内リーグ、Vリーグはプロリーグではない。日本代表選手の多くが属するV1リーグの10チームの大半が企業チームであり、パナソニック、サントリー、トヨタ系企業など日本を代表する大企業名がチーム名にも反映されている。所属する選手もバレーボールを仕事とする“社員”であり、現役を引退後はその母体企業で営業や製造、総務などサラリーマンとしてのセカンドキャリアも保証される。競技発展のために興業化を推進する声が年々高まる一方で、アスリートを引退してからも安定したキャリアが見えている環境は選手にとって魅力であるのは確かだ。そのため、これまでは日本代表に選出され、活躍する選手も多くは社員選手、というのがバレーボール界の実情でもあった。

 だが入社から退社まで1つの会社で過ごす、いわば終身雇用の概念が少しずつ薄れていく昨今と並行して、バレーボール界でも同じチームで社員選手として契約するばかりでなく、プロとして選択肢を広げる。近年は企業チームに属しながらも1人のプロ選手として契約する選手や、そもそも日本のリーグでプレーするだけでなく海外でのプレーを選択するプロ選手が増えた。

 象徴となるのが、現在日本代表で主将を務める石川祐希だ。

 中大在学時から世界最高峰リーグの1つで、各国の代表チームで主軸を担う選手が揃うイタリア、セリエAへ。中大でもリーグ戦やインカレなど大会に出場しながら、モデナ、ラティーナでもプレー。卒業後はプロ選手となりシエナ、パドヴァ、ミラノとイタリアリーグの中でも着実にステップアップを遂げてきた。

 チームメイトに各国代表選手がいるのは当たり前で、対戦相手も世界トップ選手ばかり。磨かれた技や知識、メンタルを日本代表としても披露する。これ以上ない“世界”を見せる石川の存在は、大きな影響を与えたと言っても過言ではないはずだ。実際に石川と同様に日体大在学中の髙橋藍も2021年の東京五輪を終えた同年12月からパドヴァへ渡り、昨シーズンは開幕から閉幕までイタリアで1シーズンを戦い抜いた。

 海外へ渡ったのは石川と髙橋藍だけでなく、昨シーズンは宮浦健人がポーランドのニサ、西田有志が一昨年はイタリアのヴィーヴォ、同じく関田誠大もポーランドのルビンへ。西田と関田はVリーグでプレーしながら社員選手としてではなく、プロ選手としての道を選択している。海外でプレーこそしていないが、小野寺太志や山本智大、小川智大などかつては少数だったプロ選手が、今では代表でも多数を占めるようになった。

 もちろんプロになることだけが正解というわけではない。どの環境であろうと、自身の長所をアピールしポジションをつかみ取る。日々競争の繰り返しで、周囲の意識が高ければ高いほど引き上げられるのも確かだ。だが間違いなく言えるのは、プロの世界は一見すれば華やかに映る一方、すべて結果次第。ダメならば容赦なく切られ、責任を背負うのは自分だ。海外のプロ選手たちが自身のキャリアアップに向けて、闘志をむき出しにぶつかり合う姿を目の当たりにすれば、自ずと意識は変わる。そしてそのメンタリティが日本代表にも還元されているのは確かだ。

 チャレンジを恐れず、新たな場所へ飛び込む。そんな「個」の強さが集まるチームへと成長、進化を遂げた。時代は、確実に変わり始めている。

[文●田中夕子(フリーライター)]

ココカラネクスト

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