F1技術解説:ピンク・メルセデスの問題は“見た目”じゃない。ブレーキダクト内部への疑惑
2020年7月17日(金)20時54分 AUTOSPORT web

オーストリア、レッドブルリンクで行われた第2戦シュタイアーマルクGPの終了後、レーシングポイントの今季マシンRP20に対し、ルノーが「知的所有権違反」だと正式に抗議した。
2020年のF1スポーティングレギュレーション(競技規則)付則6によれば、リストに提示されたパーツはチーム(マニュファクチャラー)が設計、製作することを義務づけ、他チームからの購入は禁止している。
レーシングポイントは、それに違反した行動を取っているというのだ。
具体的なリストの内容はモノコック、サバイバルセル、ロール構造、前後ウイング、フロア、ディフューザー、そして「気流が通過する表面を覆う」車体がそれに当たると記してある。
それ以外のギヤボックスやサスペンションなどは、たとえばハースがフェラーリから、アルファタウリがレッドブルから購入しているように、規則上は合法である。
ブレーキダクトは空力上重要な役割を果たすパーツだということで、今季から新たにパーツリストに加えられた。ルノーの抗議はこれを受けたもので、RP20の前後ブレーキダクトは、明らかにメルセデスのデザインを流用しているというのだ。
さらにレーシングポイントはこのパーツの製作を、メルセデスと同じメーカーに依頼しているという。
実際、両マシンのパーツを写真で比較すると、酷似ぶりは驚くほどである。ただし、外観の類似は問題ではない。
ライバルチームのマシンデザインを参考に似たようなものを作ることは、特に空力分野においては頻繁に起きていることである。F1の世界では珍しいことではない。
しかし内部構造を完全にコピーすることは、外観写真からだけでは不可能だ。特に今回問題としてあげられているブレーキダクトの場合は、外からは見えない複雑なパイプの取り回しになっている。
つまり、設計図を参照しない限り同じものは作れない。ルノーがFIAに要求しているのもまさにその部分である。
レーシングポイントRP20と、メルセデスの昨年型マシンW10のブレーキダクトの内部を直接比較しろというのだ。
すでにFIAはRP20のブレーキダクトの現物を回収し、メルセデスからの供出を待っているところだ。FIAの最終的な判断までには、まだ若干の時間がかかる見込みである。