インディ3勝目は琢磨とチームの作戦勝ち「抑えるところを抑えれば、イケると思った」

2018年9月3日(月)14時45分 AUTOSPORT web

 佐藤琢磨のインディカー通算3勝目は、過去の2勝とは違う意外な形で挙げられた。だが琢磨の喜びはかつての勝利と同じように、笑顔と拍手に包まれて祝福される幸せいっぱいのものだった。


 インディカー第16戦ポートランドは、11年ぶりの開催。街をあげてインディカー・ウエルカムのムードを醸し出していた。


 もちろん琢磨にとっても初めてのコースで、水曜日に現地入りして記者会見に臨んだ琢磨は「ポートランドはまったく初めて。素敵な街だし、食べ物も美味しいし。コースについてはノーアイディア(笑)。チームメイトのグラハムに教えてもらって、これから勉強するところ(笑)」とコメント。


■レッドタイヤのスピードに悩む琢磨


 木曜日には一日テストデイが設けられ、琢磨とレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングにとってはありがたいテストだった。ただ満足する速さを手に入れられたわけではなく、試行錯誤しながらの周回だった。午前中は9番手、午後12番手というタイム。4セットのタイヤで92ラップを走行した。


 走り終えた感想を琢磨は「いいコースだと思いますけど、1周1分を切るくらいだから気を抜く暇もないですね。オーバーテイクもターン1しかないかもしれない。まだクルマのスピードがちょっと足りないかな……」というテストデイだった。


 金曜日のプラクティスでは、午前のFP1は8番手だが、午後のFP2はなんと21番手まで落ちてしまう。


「レッドタイヤでのスピードが足りなかったですね。ちょっと考えないと……」と感想を漏らす。


 土曜日のFP3、琢磨は復調して5番手まで浮上して来た。「マシンもかなり変えたのですが、良い感触ですね。いいと思います」と思わせぶりな答えだ。


 しかし、5番手という予選奇数番手組のグループ1になってしまったことが、ツイていなかった。奇数番手組には速いドライバーが集まってしまい、Q1突破のハードルを上げた。それを裏付けるように、Q1で57秒7349をマークしたチームメイトのグラハム・レイホールは5番手で突破したのに、琢磨は57秒7848で10番手。Q1突破どころか予選グリッド20番手という後方に沈んでしまう。


 1周57秒あまりでラップするインディカーの予選がいかにコンペティティブか、わかるだろう。


■2ストップ作戦で勝機を見出す


 20番手から如何にして順位を上げるか? 抜きどころの少ないポートランドである。琢磨とレイホールのエンジニアのたちは、レース前に入念にミーティングを重ねた。


「ミーティングで今日は2ストップ(定石通りなら3ストップ)で行くと決めました。20番手からは上がるにはそれしかない。イエローが出れば、計算上大丈夫だったので……」と琢磨は後に明かしてくれた。


 レースは琢磨が期待していた通り、スタート直後のターン3の出口で多重クラッシュが起き、すぐさまイエローコーションになった。その時点で15番手だったが、ピットがオープンになるとすぐさまピットに入り、燃料を満たしてコースに戻る。


 7周目にレースが再開すると琢磨は16番手からのレースになった。燃料をセーブしつつ、後続との距離を保つベテランらしい走りだ。しかし、攻めるところでは攻め、ヘアピンの進入で前のマシンをパスするなど、琢磨らしいアグレッシブさも失ってはいなかった。


 他のマシンが1回目、2回目とピットインしていくと琢磨は次第に順位を上げる。


 コースアウトするマシンが増える中で、琢磨のポジションは上がり続け、レースの半分をすぎた頃に3度目のコーションが出た時には琢磨は2番手まで浮上していた。


 71周目にはトップに立ち、最後のピットインをした75周目には前にいるのは、マックス・チルトンのみ。しかもチルトンは、タイヤ交換を終えておらず、早かれピットに入るのはわかっていた。


 勝負は後ろのライアン・ハンター-レイ、そしてセバスチャン・ブルデー。その2台に集中すれば良かった。


ハンター-レイに迫られるもレースをリードする琢磨

 85周目にチルトンがピットに入り、自動的に琢磨はトップに浮上。残り20周の勝負だった。プッシュ・トゥ・パスを使いハンター-レイも勝負を仕掛けてきたが、琢磨もターンインの要所をしっかり抑えて、これを封じ込めた。


「チルトンを無理に追う必要はなかったし、ライアンに1秒のマージンだけは築いておく。最後にライアンが来るのはわかってました。プレッシャー? もう長いことレースやってますからね(笑)。抑えるところを抑えれば、イケると思ってましたよ。後はミスしないようにと思ってました」と琢磨。


■ベテランらしくレースをコントロールした琢磨


 今回は2013年のロングビーチ、昨年のインディ500の勝利とは違い、予選後方からの追い上げての勝利で、明らかに琢磨とチームの作戦勝ちだった。


「151戦目ですか?(笑)。今シーズン苦しんでなかなか結果が出せなくて、不運なこともあったりしましたけど、終盤になって優勝できたのは本当にうれしいですね。チームもここまで本当に頑張ってくれたし、今日はクルマも速かった」


「完璧な仕事をしてくれたクルー、いいクルマを作ってくれたエディ(ジョーンズ)を始めエンジニアのみんなにも感謝したいですね。それからいつも応援してくれる日本のファンとスポンサーの皆さんにもありがとうと言いたいですね。今年は残り1戦になりましたけど、最後のソノマでもいいレースをしたいと思います」と3勝目の喜びを語った。

表彰台はホンダのベテランドライバー3人が登壇

今シーズン初勝利を喜ぶレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング


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