【GT500コースサイドチェック】SPアウトはカルソニック IMPUL GT-R速し。朝と予選で様子は一変

2021年9月11日(土)21時50分 AUTOSPORT web

 スーパーGT第5戦SUGOの予選日。観客との隔離のため、今回はSPコーナー観客席へのメディアへの立ち入りは禁止されていた。しかしメディア用駐車場はSPアウト観客席の上にあるので、そこからSPインとSPアウトをみることができた。SPアウトへのアプローチを正面受けでみることができるので、コーナーリング姿勢が確認することができる。


 中速で鈍角に連続して左〜左と曲がるSPコーナーの脱出速度は、ストレートスピードを決める最終コーナーの進入速度を左右する。SPコーナーは最終コーナー〜ホームストレートの速度を決める重要なコーナーなのだ。


 なかでも一番重要なのはSPアウトの脱出速度である。この速度を高めるためには、SPアウトのアプローチでできるだけ早く向きを変えて、かつ早くスロットルを開けて全開にしたい。


 公式練習の序盤。その点に着目して目立ったのはENEOS X PRIME GR Supraの山下健太と、KeePer TOM’S GR Supraの平川亮だった。転舵からすぐにアウト側両輪に荷重が乗り、修正もなく直線的なラインでスロットルも早く開いているようにみえた。


 意外だったのは公式練習最速だったARTA NSX-GTだ。セッション前半に乗り、タイヤ選択を進めていた野尻智紀は、上記2台に比べると転舵から姿勢が定まるまでに待つ時間があるようにみえた。


 ダンパーの減衰値が高いときのような動きのイメージ。実際どうなのか確認したわけではないが、それによって他のコーナーではプラスがあるのかもしれない。


 技術規定の小変更を受けてより、開発領域が狭くなり2020年に導入されたGT500車両。空力については2020年頭に公認を受けて以降、各陣営独自の変更は許されていない。それは今季も継続している。以前のように富士仕様特別エアロの導入も認められていないので、どこに重点を置いて空力設定するのか、そこも開発陣の腕の見せどころだった。


 フロア下面のストレイキ等の細かな空力付加物が禁止されたことで失うフロントダウンフォースを補うことを重視して開発したのがニッサンGT-RニスモGT500であり、ホンダNSX-GTも、効率を高めながらもフロントまわりのダウンフォースを重視しているようにみえる。対するトヨタGRスープラGT500は効率優先で、車両サイドのラテラルダクト出口の造形は極めてシンプル。上面形状が優れていることの賜物なのだろうが、他2車とは考え方が異なるようにもみえる。


 昨シーズンは新型コロナ対策に追われて、開幕が遅れて、開催ラウンドも変則的に富士スピードウェイとツインリンクもてぎ、鈴鹿サーキットだけに限定された。なかでも富士がシリーズ中3戦となり、上記のような空力開発の違いがどのようにシリーズに影響するのか、わからない面もあった。今季、海外戦は見送られたものの、通常通り国内6サーキットが舞台に設定されたことで、改めてその「答え合わせ」をすることになる。


 空力設定の違いをそのままあてはめるとテクニカルコースではNSX-GTとGT-Rが有利となりそうなものだが、ここまで4ラウンドの結果はそうとも言い切れない。開幕岡山ではGRスープラが上位を独占。第2戦富士はNSX-GTが優勝。第3戦鈴鹿が延期となり、シーズン3戦目の大会となった第4戦もてぎの優勝はNSX-GTだったが実力はGRスープラと拮抗していた。


 サクセスウエイトのバランスもありGT-Rが表彰台独占となった鈴鹿を経て、SUGOではどうなるか? 冒頭にふれた車両の動きの違いもイメージとは逆。フロントのダウンフォース重視のNSX-GTの方が動きはクイックなのではないかと想像していたが、GRスープラの方が鋭い動きをみせていた。


 公式練習後半、どちらもロング想定の走行をしていると思われるARTA NSX-GTの福住仁嶺と、カルソニック IMPUL GT-Rの平峰一貴を比べてみると、やはりターンインの鋭さは平峰の方が上に見えた。タイヤの履歴やガソリン搭載量も不明なので、ラップタイムは参考にならないものの、この時点では平峰の方が速かった。同じNSX-GTでの比較でもセッション前半時間をガレージで費やしたSTANLEY NSX-GT牧野任祐のほうが動きクイックにみえた。


 ラバーグリップが載り、路面ができた予選Q2ではARTA NSX-GT福住のSPコーナーでの動きはそれまでとは違って鋭く見え、ラップタイム順位と見た目の速さが一致した。予選最後の路面を想定してセットアップを組み立てていたのかもしれない。


 一方、カルソニック IMPUL GT-RのSPコーナーでの鋭さはQ2になっても衰えていなかった。それを証明するようにSPアウト出口から最終コーナーからストレートまで続くセクター4において松下信治がベストタイムを刻んでいた。フロントロウをNSX-GTが独占。タイトル争いにむけてGRスープラ勢は最高位7番手と厳しい状況に置かれたようにみえる。


 このSUGOにおいて劣勢であれば、続く第6戦オートポリスもコース特性はSUGOと似ているので厳しい戦いが強いられる可能性がある。第3戦鈴鹿同様に決勝においては、GRスープラ勢が順位を挽回してくるのか、それともNSX-GT勢がそのまま第5戦を制圧するのか、タイトルを占う上でも重要な一戦となる。


 ちなみに、開幕戦岡山では公式練習から予選Q1へのGRスープラ勢のタイムアップが急激で予選ブーストを使っていた可能性がある。ライバルの予選戦略を撹乱するに充分な効果を発揮した。


 年間2基と定められているエンジンの2基目を多くのチームが投入したこのレースでホンダ陣営が逆襲。高ブースト設定で予選Q2に臨んだのだろうか? そこまで織り込んでハイダウンフォースセッティングで臨み、サスペンションもそれに合わせた設定だとしたら公式練習から、予選での見た目の変化も説明がつく。

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