全日本ロード:HRCの開発も担当する水野涼に聞くホンダ新型CBR1000RR-Rの強さ/新型マシンフォーカス

2020年9月15日(火)17時37分 AUTOSPORT web

 日本のトップメーカーからプライベートチームまでがしのぎを削る2020年の全日本ロードレース選手権。そのなかから2020年に登場した新型マシンをピックアップして、ライダーにマシンのインプレッションを取材。今回は、新型のホンダCBR1000RR-Rにフォーカスして、JSB1000クラスを戦い、HRCのファクトリー仕様のマシン開発も行う水野涼にバイクのポテンシャルや開発状況を聞いた。


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 2019年11月5日にEICMA2019(ミラノショー)で世界初公開されたホンダの新型マシン『CBR1000RR-R FIREBLADE』。3年ぶりにフルモデルチェンジされたホンダのフラッグシップモデルは、マシンの名称にRがひとつ増えていることやカウルに空力パーツ(ウイングレット)が採用されていたことで注目を集めた。


 また、MotoGPのワークスマシンRC213Vで培われた技術を応用した新設計の水冷直列4気筒999ccエンジンを搭載。それにより市販モデルの最高出力は218馬力/14,500rpm、最大トルク113Nm/12,500rpmを発揮する。

ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(グランプリレッド)


■新型CBR1000RR-Rの強さと弱点
 2017年に全日本ロードJ-GP2クラスのチャンピオンを獲得し、翌年からJSB1000クラスでCBR1000RR SP2を駆った水野。今季は新型CBR1000RR-Rに乗り換えているが、初めて新型マシンに乗ったときの印象をこう語る。

水野涼(MuSASHi RT HARC-PRO.Honda)/2020年全日本ロード第1戦SUGO


「バイクがとにかく速くて、そのなかでもストレートスピードが速いです。昨年はファクトリー仕様のバイクに乗っていたのですが、今年乗っているキット車でも昨年以上にスピードが出ているので、マックスのパワーが出ていることが一番印象に残っています」


「予想していた以上に良いところがあったし、願っていた部分がなくてこれから変えなければならない部分もあります。バイクにはすごく満足していますが、これから開発していかなければならない大変さも、初めてテストしたときに感じました」

2020年全日本ロード第1戦SUGO:水野涼(MuSASHi RT HARC-PRO.Honda)


 水野のいう通り、CBR1000RR-Rは開幕前の事前テストから最高速の速さが評判だった。「昨年以上にトップスピードは出ていますし、コーナーの立ち上がりのウイリーを抑制したり、ストレートエンドのブレーキング時にフロントを押しつけてくれるので突っ込めます」と改良された部分を明かす。


 カウル側面のウイングレットにも効果を感じているようで「ウイングのおかげもあり、フロントに接地感を感じることができ、コーナーの進入に関しては有利に働いていると思います」という。


「バイクが速いことは武器にはなると思うし、直線が速いというのはレースを戦ううえではすごく有利です。昨年のマシンと似ているのはスピードで、昨年以上に良いところはコーナーの進入のスタビリティーがすごく上がって、昨年以上に速く走れることです」

水野涼(MuSASHi RT HARC-PRO.Honda)/2020年全日本ロード第1戦SUGO


 トップスピードが上がったCBR1000RR-Rは、MotoGPマシンRC213Vと同一のシリンダー内径と行程が採用されている。水野は新設計のエンジンに関しては高回転域ではパワーが出るというが、低回転域ではあまり出ないような仕様になっていると説明した。


「エンジン特性は2ストロークみたいです。4ストロークらしくなく下(低回転域)がスカスカで一気にパワーが来るピーキーなバイクなので、加速時は少し(パワーが)足りなくて車体の接地が感じづらいです。コーナーの脱出時に(アクセルを)開けていきづらいことが課題で、今一番改善すべき点だと思っています」


「(全日本ロードでは)ライバルメーカーはヤマハです。ヤマハはコーナリングスピードが速く、コーナーを武器に戦っているので、比べるとコーナリングに問題があるという形です」

水野涼(MuSASHi RT HARC-PRO.Honda)/2020年全日本ロード第1戦SUGO


 そして、コーナー立ち上がりの加速を課題にしているのは水野や全日本ロードのホンダライダーだけではないという。


「SBKのファクトリーチーム(TEAM HRC)も同じような問題を抱えているようで、全日本ロードのブリヂストン、SBKのピレリといったタイヤメーカーは関係ないようです」

MuSASHi RT HARC-PRO.Hondaのピット/2020年全日本ロード第1戦SUGO


 では、加速面での課題を改善すべく、現在水野はどのようなマシン開発の手段を講じているのだろうか。


「シャシーも変えないといけないし、エンジン特性も変えていかないといけないから、すべてをできる範囲で変更していく必要があります。簡単にできるのはフレームやスイングアーム、リンク機構の変更ですが、エンジン特性は違う方向にできてもキャラクターは変えられません」


「今年は新型コロナウイルスの影響でテストが少ないし、そのなかでレースが始まったのでこのような問題を抱えていますが、レースとテストを重ねられれば、今使っているものでももっと良くなると思います。バイクのポテンシャルもまだ活かしきれていないと思うし、まだそこは未知数という感じですかね」


■HRCのファクトリー仕様のマシンもテストする水野がいう開発状況
 水野は全日本ロードではMuSASHi RT HARC-PRO.HondaからJSB1000クラスに参戦しているが、ホンダワークスのテストライダーも担当している。7月に鈴鹿サーキットで行われた2輪4メーカー合同テストなどでは、Team HRCから参加してファクトリー仕様のマシンをライディングした。


「全日本ロードはキット車で、テストはHRCのワークス仕様に乗りました。キット車よりはいいところがありますが、自分が想像している以上の差はありませんでした。しかし、昨年のワークス車とキット車は全然別というくらい差がありました」


「だから良い部分ももちろんありますが、ワークスでもキット車でも抱えている問題は同じだから、(仕様に関係なく)新型CBRに改善すべき点があるとHRCでテストして思いましたね」

水野涼(Team HRC)/鈴鹿2輪4メーカー合同テスト


 現状のCBR1000RR-Rの完成度について尋ねると「昨年までのキット車と比べるとすごくレベルは高いと思います。市販車で買えるバイクであのポテンシャルがあるのはすごくいいと思いますし、すごくポテンシャルは高いので95点くらいかなと思います」と評価した。


「レースを戦う上で見ると50点くらいかなと思いますね。テストをそこまでしていないから、まだ50点としか評価できないかもしれません」

水野涼(MuSASHi RT HARC-PRO.Honda)/2020年全日本ロード第1戦SUGO レース2


「マシン作りやセットアップについては昨年のファクトリーマシンと比較してしまうところがあります。昨年を参考にセットアップをしてきたけど全部うまくいかなくて、マシンが別だからセットアップのスタイルを変えていかないといけないのかなと思うことがあります。今はセッティングの考えを変えなければならないのか、頭を柔らかく使いながら方向性を変えずにやっていくべきなのかも手探りな状態です」

2位表彰台を獲得した水野涼(MuSASHi RT HARC-PRO.Honda)/2020年全日本ロード第1戦SUGO レース2


 マシンの改善点は多いとコメントした水野は、全日本ロード第1戦SUGOではレース1でリタイアを喫したが一時は2番手を走行。そしてレース2では、バトルを繰り広げ追い上げて2位表彰台を獲得した。


 次戦は9月19〜20日に第3戦オートポリスが開催され、JSB1000クラスは2レース行われる。新型のホンダCBR1000RR-Rは優勝争いに食らいつけるだろうか。そしてこの先開発が進んだCBR1000RR-Rはどこまでのポテンシャルを発揮するだろうか。

水野涼(MuSASHi RT HARC-PRO.Honda)/2020年全日本ロード第1戦SUGO

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