湘南ベルマーレ、昨季の悪癖またも露呈でJ2降格危機に。敗北のC大阪戦を検証
2024年9月25日(水)21時0分 FOOTBALL TRIBE

2024明治安田J1リーグ第31節の計10試合が、9月21日と22日に各地で行われた。湘南ベルマーレは22日、本拠地レモンガススタジアム平塚にてセレッソ大阪と対戦。最終スコア1-2で敗れている。
今節終了時点で、J2リーグ降格圏の18位ジュビロ磐田と勝ち点32で並んでいる17位湘南。これに加え、現時点で磐田は湘南よりも消化試合数がひとつ少ないため、後者としては危機的状況だ(磐田30試合、湘南31試合消化)。
湘南が今節逆転負けを喫した原因は何か。ここでは両チーム合わせて3ゴールが生まれたC大阪戦の前半を振り返るとともに、湘南の敗因や今後に向けたポジティブな要素に言及する。

キックオフ直後は湘南が優勢
この試合における両チームの基本布陣は、湘南が[3-1-4-2]でC大阪が[4-2-3-1]。C大阪は守備時にレオ・セアラと北野颯太の両FWが横並びとなり、[4-4-2]へ隊形変化。キックオフ直後からフィールドプレイヤーのほぼ全員が自陣にこもり、湘南のパスワークを封じにかかった。

対する湘南は、前半1分にMF鈴木淳之介(3バックの一角)がボールを運ぶと、左ウイングバックを務めるDF畑大雅がC大阪の右サイドハーフとサイドバック(MFルーカス・フェルナンデスとDF奥田勇斗)の間に立ちアウェイチームの守備をかく乱。L・フェルナンデスと奥田が畑に気を取られた隙を突き、湘南MF平岡大陽(インサイドハーフ)がこの2選手間で鈴木淳之介からの縦パスを受けると、この直後に湘南はコーナーキックを得ている。ホームチームのキックオフ直後の攻撃配置は良好だった。

C大阪のハイプレスも回避
湘南のサイド攻撃を浴び続けたC大阪は、前半5分に北野が放ったロングシュートを機に最前線からの守備を立て直す。この直後に湘南が3センターバックを起点にパスを繋ぐと、北野、レオ・セアラ、MF為田大貴(左サイドハーフ)の3人がここに立ちはだかる。湘南最終ラインとの3対3の数的同数を作ると、味方DF髙橋直也のパスをタッチライン際で受けた湘南MF鈴木雄斗(右ウイングバック)には、C大阪のDF舩木翔(左サイドバック)がプレスをかけた。
この場面では鈴木雄斗が相手サイドハーフやサイドバックのプレスを浴びやすい立ち位置をとっていたが、ツータッチでC大阪の最終ライン背後へロングボールを送ったため大事には至らず。C大阪のハイプレスに対する、湘南の選手たちの状況判断も試合序盤は的確だった。

湘南が犯したミスとは
前半12分、MF阿部浩之による右サイドからのフリーキックにFW鈴木章斗がヘディングで合わせ、湘南に先制点をもたらす。ホームチームは幸先の良いスタートを切ったものの、ひとつのミスでC大阪に試合の主導権を渡してしまった。
迎えた前半21分、センターバック鈴木淳之介から左ウイングバック畑への縦パスをL・フェルナンデスにカットされる。そのままL・フェルナンデスに左サイド(C大阪にとって右サイド)を突破されると、同選手のラストパスに反応したレオ・セアラに同点ゴールを奪われてしまった。
この場面ではセンターバック鈴木淳之介とウイングバックの畑が自陣後方タッチライン際で追いつめられたうえ、この2人が一直線に並んでしまったことでパスコースが無くなっている。3バックの一角がペナルティエリアの横幅からはみ出し、なおかつウイングバックが自陣後方タッチライン際に立った状態でショートパスを繋ごうとした結果、相手のハイプレスを浴びてボールを失う。これは昨2023シーズンや今季序盤戦にも見られた湘南の悪癖であり、同クラブはまたしてもこのミスを犯している。チーム全体の攻撃配置が悪かったため特定の選手が責められるべき場面ではないが、縦のパスコースが無かった状況を踏まえると鈴木淳之介はL・フェルナンデスに捕捉されていた畑へのパスではなく、自身の斜め後ろに立っていた味方DFキム・ミンテへのバックパスを選択すべきだった。
前半24分にはC大阪MF田中駿汰(ボランチ)のロングパスに反応したレオ・セアラが湘南最終ラインの背後を突き、ゴールゲット。ここでは味方センターバック付近でボールを受けた田中駿汰への湘南FW鈴木章斗の寄せが緩く、それゆえ簡単にロングボールを繰り出されている。パスの出し手にプレスがかかっていないにも関わらず、湘南最終ラインの位置取りが高かったため、レオ・セアラの突破も許してしまった。

悔やまれる1失点目
湘南は今節も攻撃配置の悪さから失点を喫したものの、試合序盤以外にも自陣後方からのパス回しに成功したシーンがあった。
この最たる例が、前半29分の攻撃シーン。自陣ペナルティエリア手前で鈴木淳之介がボールを受けると同時に、ウイングバックの畑が自陣へ降りる。ここで鈴木淳之介が畑にパスを出すと思いきや、同選手は左サイドを駆け上がった平岡へのロングパスを選択。この場面ではC大阪の右サイドバック奥田が畑を捕まえるべく飛び出していたため、同選手の背後が空く形に。ここへ走った平岡が鈴木淳之介のロングパスを受けたことで、湘南の速攻が始まった。
センターバックが自陣へ降りてきたウイングバックへパスを出すと見せかけ、その奥のインサイドハーフへロングボールを送る。この攻撃は湘南が最終スコア2-1で勝利したJ1リーグ第12節(サガン鳥栖戦)でも繰り出されたものであり、この試合では湘南DF大野和成(センターバック)がウイングバックの畑へパスを出すと見せかけ、平岡へロングパスを供給。ここから阿部の決勝ゴールが生まれている。今節のC大阪戦では得点に結びつかなかったが、鳥栖戦と同じくウイングバックを囮(おとり)とする攻撃を繰り出せたことは、湘南にとってポジティブな要素と言えるだろう。良い攻撃もできていただけに、センターバックからウイングバックへのパスを奪われたことで喫した今節の1失点目は悔やまれる。湘南としてはこの失敗を糧にしたいところだ。