S耐最終戦岡山:777号車D’station Porscheが今季初優勝。8号車の王者獲得は提訴で暫定に
2017年10月16日(月)16時32分 AUTOSPORT web
スーパー耐久シリーズ最終戦となる第6戦が10月14〜15日に、岡山国際サーキットで開催され、グループ1では777号車D’station Porscheを駆る、星野敏/荒聖治/近藤翼組がポール・トゥ・ウインで今季初優勝。そしてグループ2では86号車TOM’S SPIRIT 86を駆る、松井孝允/坪井翔/蒲生尚弥組が5連勝を飾り、すでに決めているチャンピオンに華を添えた。
全6戦で争われる2017年のスーパー耐久シリーズも、早いものでこれが最終戦。前戦の富士で7クラス中4クラスのタイトルが決まっており、残る3クラスもポイントリーダーが圧倒的に有利な立場で臨んでいた。
土曜日に行われた予選はドライコンディションで、グループ1では永井宏明、佐々木孝太ともにトップタイムを記録した8号車ARN Ferrari 488 GT3が、開幕戦から6戦連続のポールポジション獲得記録を更新したかと思われた。しかし、再車検で使用燃料違反が発覚し、ふたりとも全タイムが抹消。最後尾からのスタートは許されたものの、窮地に立たされてしまう。
繰り上がってポールポジションを獲得したのは、D’station Porscheの星野敏/荒聖治/近藤翼組。日曜日の決勝レースは、RR駆動のポルシェが得意とするウエットコンディションに転じたこともあって、スタートを担当した荒が逃げて、その後を引き継いだ星野が、ジェントルマンドライバー対決で圧勝。実に40秒以上のリードを築いたこともあり、最終スティントを担当した近藤が難なく逃げ切って、今季初優勝を飾った。
「最高ですね、今年最後を優勝で飾れて。チームスタッフ全員のおかげです、感謝です」と星野。2位には終盤の激しい攻防の末に、YUKE TANIGUCHI/山内英輝/元嶋佑弥組の3号車ENDLESS ADVAN GT-Rがつけ、3位は植松忠雄/星野一樹/藤波清斗組の99号車Y’s distraction GTNET GT-Rが獲得。
一方、ARN Ferrari 488 GT3は5位でゴールし、チャンピオン獲得となったかと思われたが、予選の使用燃料違反に対し、控訴が提出されたため、結果は暫定に留められることになった。
ST-1クラスで孤軍奮闘の、31号車Nissoku Porsche 991 GT3 Cupの小川勝人/影山正美/富田竜一郎組は、ノートラブルで3時間を走り抜いて総合でも8位に。来季、ST-Xクラスへの移行を目指している小川に対し、指南役の影山はしっかり合格証を与えていた。
今年新設されたST-TCRクラス。完走さえ果たせば、初代チャンピオンが決まる98号車Modulo CIVIC TCRの黒澤琢弥/石川京侍/加藤寛規組だったが、なんと予選で石川がクラッシュ。マシンを修復し、決勝にはピットスタートでの参加が認められたが、大事をとって石川は欠場。さらに中盤にはターボ系のトラブルに見舞われた。ピットで必死の修復が試みられ、もし再出走できなければタイトルが掌中からこぼれてしまう状況に。
なんとかピットを離れることには成功した98号車は、無事チェッカーを受けて、黒澤と石川、加藤が初代チャンピオンに輝くこととなった。
「最後の砦だけは守りました。はっきりとした原因は分からないけど、ブーストがかからなくて、一時は完全にノーパワー状態。最後まで走れて良かった」と黒澤。
一方、チームメイトの不運とは対照的に、97号車Modulo CIVIC TCRの伊藤真一/幸内秀憲/中野信治組は、終始絶好調。ポール・トゥ・ウインで最終戦を飾った。
「最初は知識もなかったし、興味もなかったけど、やってみたらこんな楽しいレースはなくて。こんなに怖い顔せず済んだ1年間って、僕のレース人生には今までなかった」と中野。
ST-2クラスでは、すでに59号車DAMD MOTUL ED WRX STIの大澤学/後藤比東至組が王座を決めていたが、6号車新菱オート☆DIXCEL EVO Xの冨桝朋広/菊地靖/大橋正澄組が、一矢報いることに成功した。
予選は合算タイムがコンマ1秒にも満たない差だったが、決勝になると、菊地が早々にリードを築き、それを冨桝と大橋が守る格好に。今季2勝目をマークして、ランキング2位も確定させた。
「今年はクラッシュこそなかったけど、リタイアもしたし、優勝もできたし、波乱万丈のシーズンでしたが、最後こういう形で締めくくれて最高です」と冨桝。
ST-3クラスでは、39号車ADVICS TRACY RC350の手塚祐弥/前嶋秀司/鈴木陽組が今季2勝目をマーク。レースの大半をリードしていたが、完走さえ果たせばチャンピオンが手に入る62号車DENSO Le Beausset RC350の嵯峨宏紀/中山雄一/山下健太組が2位につけたことで、ランキングでは涙を飲んだかと思われた。
ところが、レース後の再車検でDENSO Le Beausst RC350には、燃料タンク最低地上高違反があって失格処分。これで手塚と前嶋、鈴木に期せずしてタイトルが舞い込んでくることになった。
「開幕の10日前に、前嶋さんに突然電話をもらって『俺が教えてやるから』という誘いに、すぐ飛びついたのが、すべてでした。前嶋さんの真似をして、できるようになったことでオートポリスで優勝を飾れて、まさかこんな結果になるとは!」と手塚は喜びを隠せない様子だった。
グループ2の決勝レースでは、TOM’S SPIRIT 86の松井孝允/坪井翔/蒲生尚弥組が、ポール・トゥ・ウインを達成。途中2回もSCランが行われたが、最初のSCランでなんと蒲生を2周で交代させる、贅沢な展開も見せて、難なく逃げ切り成功。
「ローリングスタートの練習を、ということで最初に乗らせてもらったのに、SCスタートになってしまって残念です。でも、そのあとはプッシュし続けてリードを作り、この勝利に大きく貢献させてもらいました」と坪井。そして松井は、「岡山はホームコースなんですが、決勝ではなんかいいことなかったので、これでやっと流れを変えることができました」と語っていた。
2位はウエットコンディションに乗じ、333号車GLORY RACING A-ONE FN2の廣田築/中島佑弥/野間一組が予選11番手から大きくジャンプアップして獲得。そして、3位は最終ラップのストレートで54号車TC CORSE iRacing ROADSTERをかわした、13号車ENDLESS ADVAN 86。大逆転の立役者となった小河諒は、高橋翼と花里祐弥とともに自身としては15戦連続の表彰台に立つこととなった。
ST-5クラスもポールポジションを奪った88号車村上モータースMAZDAロードスターNDの村上博幸/脇谷猛組も使用燃料違反によって全タイム抹消となり、最後尾スタートを強いられることに。
しかも、決勝がウエットコンディションとあって、ホームコースでのチャンピオン凱旋レースこそ飾れなかったが、ロードスター勢の最上位となる8位を獲得
「岡山チャレンジカップでさんざん走ったコースですから、久しぶりの水しぶきに、懐かしいなぁとか思って(笑)。やりつくした感は十分あります」と脇谷。
レースは、ウエットコンディションを得意とするデミオ勢、66号車odula MAZDA DEMIO 15MBと37号車DXLアラゴスタNOPROデミオSKY-Dの一騎討ちに最後はなった。橋本陸が井尻薫を抑え続けていたが、アトウッドでのワンミスで井尻がラスト10周で逆転。DXLアラゴスタNOPROデミオSKY-Dが2連勝を飾った。
「うちも最後はタイヤが厳しかったんで、向こうがミスをしてくれなければ抜けなかったでしょう。もともと強めの雨を得意としているクルマだし、1回無給油にしてロスを最小限にしているんですよ、それがたぶん効きました」と井尻。関豊と横田剛とともに、表彰台の中央で笑顔を見せていた。