ヤバすぎる加漆肉身像……死後に僧侶がミイラ加工される究極の悟りとは?

2024年1月16日(火)17時2分 tocana



 2014年のオランダで、 ドレンテ博物館が所有し展示していた一体の仏像が医療センターのCTスキャンにかけられた。そしてその結果、仏像の中にはおよそ1000年以上前の僧侶のミイラが入っている ことが判明し、地元をはじめ日本でも報じられ話題となった。
 この仏像は、オランダの建築家オスカル・ ファンオフェレームが1996年に香港で購入したものであると言 われており、そのミイラの正体は、 西暦1100年ごろの宋の時代に死亡した僧侶・柳泉(Liu quan)であると考えられている。瞑想を続けて絶命しそのままミイラとなったいわば「即身仏」を像に入れたのではないかとも言われていたが、即身仏とは異なり補強や装飾などがなされていることから「加漆肉身像」(かしつにくしんぞう)ではないかとの見解が強い。
 加漆肉身像とは、遺体に幾重も麻布を巻き付け、漆を塗ってさらに彩色を施したものであり、 唐の時代に流行り始めた一種の風習であるという。 即身仏とは異なり、死後に加工がほどこされており、 先のオランダのものでは内臓が取り除かれた上その部分から古代中 国語の文字が書かれた紙切れも発見された。唐代当時、 高僧が亡くなったときにその肉体を保存して礼拝するという習慣が 盛んになったが、次第に「ミイラにならなければ高僧ではない」 といわれるまでに過激となったという。しかし、 よく知られている即身仏はその多くが失敗してしまっており、 まともな形状を保ったままでミイラ化するには至らないことが殆ど なのだ。そのための様々な技術が開発された結果の一つが、 この加漆肉身像であると考えられる。
 日本において座禅を組みその果てにミイラ化することの習慣は、大陸に留学した空海によってもたらされたと言われている。その信仰が強く見られるのは国宝である鑑真和上坐像だ。鑑真は、仏教の神髄を伝えようと幾度もの日本への渡航の果てに失明するも 最後には到達を果たした高僧として知られている。鑑真和上坐像はその弟子たちによって作られた像であるが、それまでに日本で作られていた仏像とは異なり、眉毛やまつ毛そして口回りのヒゲといった非常に細かい部分まで描 かれている。このことは、いかに当時の強いミイラ化への信仰と、それに加漆肉身像のように見立てる弟子たちの思いが伺える。
 余談だが、先のオランダのミイラ像については2018年に中国から返還を求める訴訟が起こったという。当該の仏像は、1995年に中国東部の楊春という村の寺院から忽然と姿を消したものであるとして、 購入者を相手取って訴訟を起こしたというのだが、諸々の事情からこの訴えは却下されている。


【参考記事・文献】
1, 100年前の仏像をCTスキャンしたら中に本物の人間が入っていたことが発覚?
即身仏? 仏像内に隠された僧侶のミイラ、スキャンで明らかに
鑑真和上像
小杉一雄 再読(中国の肉身佛像が発見される)


 


【文 黒蠍けいすけ】

tocana

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