"手指の痛み"も更年期症状? 人種によっても異なる? 大塚製薬が取り組む女性の健康課題とは

2025年2月10日(月)17時30分 マイナビニュース


「女性活躍」が叫ばれて久しい日本社会において、見過ごせないのが女性の健康課題である。本課題は今や日本の市場成長とは切っても切り離せない。経済産業省によれば、女性の健康課題による社会全体の経済損失は年間3.4兆円にも上るといい、昨今このような課題に着目して事業展開をする企業も少なくない。
トータルヘルスケアカンパニーである大塚製薬もその一つ。同社は2月7日、大塚製薬におけるグローバルでの女性の健康事業の取り組みと今後の展開についてセミナーを開催。日米における女性の健康課題はじめ、女性の健康事業におけるこれまでの取り組み、今後の展開について発表した。
■女性の健康事業に取り組む大塚製薬
はじめに、大塚製薬 代表取締役社長 井上眞氏が登壇し、同社の取り組みについて触れた。
大塚製薬は、1990年ごろから女性の活躍に対する取り組みを開始。人事制度を整えたり、啓発セミナーを実施したり、事業内保育園の設置などに取り組んできた。しかしながら、女性の活躍が思ったペースで進まなかったと井上氏は振り返る。
その背景として同氏は「女性の健康課題」を挙げた。「会社として機会を提供するだけでは、女性の活躍の場は広がらない。そこで女性の健康に関する啓発を社内外で行うとともに、ヘルスケア企業として女性の健康をサポートできないかということで生まれたのが『エクエル(女性のための基礎サプリメント)』です」と説明。商品を通じて女性の健康支援にも取り組んできたことを語った。
大塚ホールディングスが昨年発表した第4次中期経営計画の長期ビジョンの1つには、「女性の健康」が掲げられた。井上氏は「女性の健康では科学的根拠に基づいた製品開発で、女性特有の働き方に対する健康ソリューションを提案してまいります。加齢とともに複合化する女性の健康ニーズを長期的にサポートしていきます」と、今後の戦略について述べた。
近年、大塚製薬は国内だけでなく北米にも目を向けており、同エリアで女性の泌尿器系の健康分野に特化した製品とプラットフォームに強みを持つユコラ社、女性の健康分野に特化した製品の製造販売を行うボナファイドヘルス社を大塚製薬の傘下に収め、グローバルにおける展開も加速させている。
■人種によって異なる!?「更年期症状」
当日は、ボナファイドヘルス社よりチーフメディカルオフィサーであり婦人科医のAlyssa Dweck(アリッサ ドウェック)氏を迎え、日米における女性の健康課題の違いについて伝えられた。その中でも更年期についてみていこう。
卵巣の機能が徐々に低下し、月経が永久に起こらなくなった状態を「閉経(メノポーズ)」といい、閉経前の5年間と閉経後の5年間をあわせた10年間が「更年期」とされている。更年期にはさまざまな症状が現れるが、特に症状が重く日常生活に支障を来すような状態を日本では病気としてとらえている。
一方、米国では「更年期症状は病気ではなく、人生の自然な一つのステージとして考えられています」とドウェック氏。また、閉経に至るまでの4〜10年の期間を米国特有の用語である「ペリメノポーズ(閉経周辺期)」と表現し、この期間、ホルモンは不安定で大きく変動し、気分の変化やホットフラッシュ、睡眠障害、体重増加、筋力低下、骨量減少などさまざまな症状が現れることを解説した。
そのほか、更年期症状における民族の違いについても言及。米国で行われた全国女性健康調査(SWAN)によると、黒人やラテン系の人々は空腹症状に苦しんでいる一方、アジア人の症状は深刻ではなかったと報告されており、更年期症状の経験は民族によって差があることを伝えた。
このように国や地域、人種によって、健康課題における症状や考え方は異なっており、単一的な商品やアプローチだけでは解決できないことを示唆した。
■"手指の痛み"も更年期症状? 認知向上への取り組み
続いて登壇した大塚製薬ニュートラシューティカルズ事業部の上野友美氏は、離職などにもつながる女性の健康課題と同社の今後の取り組みについて紹介した。
上野氏は女性の健康課題に対し、さまざまなケアの必要性を訴えると同時にグローバルな取り組みを行う上では、女性の悩み・周辺環境が異なる点について考慮する必要性がある、と指摘。
更年期症状を例に挙げると、日本では患者だけでなく医師も更年期に関して理解が乏しいといった課題がある一方、米国の場合はホットフラッシュ・膣(ちつ)症状への対処のみで他科連携がないといった課題を指摘し、国や地域によってその課題や状況は異なることを説明した。
上野氏は、これらの課題を解決するためには認知を高めていくことが重要だと訴える。「正しい情報を提供してその国に適した解決策を提供していくことが必要。情報を収集するだけではなく、情報を鵜呑(うの)みにせずに、必ず自ら確認していくという方針を続けていきたい。日米の違いだけではなく、共通点も含めて科学的に検証していきたい」と力を込めた。
加えて、日本での更年期症状における認知向上の取り組みについても紹介。更年期症状を有した患者が、最初にどの科で診療されるのかを調べたデータ(HAPによる45〜59歳を対象として健康に関する意識調査)を提示し、婦人科よりも内科や整形外科が多く受診されていた点をピックアップ。
当時、患者は更年期の時期に手指の痛み、指の関節の痛みを感じていたが、当時の産婦人科や整形外科の医師たちは、これが更年期症状であることを認識できていなかったため、そのまま放置されていたという。
この状況に対し、大塚製薬は専門家とともにエビデンスに基づく啓発を、医師はもちろん生活者にも行った。上野氏は「更年期症状はホットフラッシュだけではないという認知を広げたことで、よりみなさまのQOL向上に貢献できた」と話し、認知向上における取り組みの重要性を強調した。
現在、同社は北米において女性たちが更年期において何に悩んでいるかの調査を実施。何か健康課題が生み出された場合、実証実験を経て、米国人女性に適した製品を展開していきたいという。
また、研究開発においては、ボナファイドヘルス社らとそれぞれのやり方や戦略を相互に取り入れながら、よりスピーディな製品開発、製品価値向上を図っていきたいとした。
矢吹結花 やぶきゆか 編集者・ライター。旅とお酒とスポーツが大好き。ライフスタイルやヘルスケア系の記事を担当しています。 この著者の記事一覧はこちら

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