東武野田線に新型車両80000系が登場、このたび報道陣に公開された。キャッチコピーは「人と地球によりそう電車」。沿線に多く暮らす子育て世代の家族が快適に利用できるようなデザインと車内設備が個性的だ。
東武野田線(愛称「東武アーバンパークライン」)に新型車両80000系が登場した。東武野田線は大宮(埼玉県)から春日部、野田市、流山おおたかの森、柏、船橋(千葉県)とJR武蔵野線の外側を北から東に向けて環状に走る路線だ。
都心に向かうには、大宮、春日部、流山おおたかの森、柏、新鎌ケ谷、船橋で各路線に乗り換える必要があるが、緑豊かな住宅地が点在していて、特に若い子育て世代に人気がある。沿線には大宮公園、清水公園といった公園もあるので、東武アーバンパークラインという愛称が付いている。
新型車両80000系の特色

新型車両80000系は、スタイリッシュな前面が特徴だ。すでに野田線を走っている60000系で採用されたフューチャーブルーとブライトグリーンのカラーリングを踏襲し、野田線のイメージアップに貢献している。正面をよく見ると、左端の非常扉の窓が運転台の窓よりも一段低い位置まで下がっている。

車内に入ると、運転台後ろの窓位置も同様に低くなっている。これは、背の低い幼児でも1人で立ったまま前面展望が楽しめるようにとの配慮だ。

子どもへの配慮はこれだけではない。4号車には「たのしーと」というコーナーが車端部の2カ所に設置される。普通の電車でもよく見かけるクルマ椅子&ベビーカー用のスペースを発展させたものだ。
普通の車両は、ここには座席がないのだが、「たのしーと」には1人掛けのシートがある。車内を向いて座ることも、あるいは窓を向いてクロスシートのように座ることもできる。子どもが座ってもよいし、ベビーカーを持ち込んだ母親がここに腰かけてくつろぐことも可能だ。子ども部屋をイメージした楽しくワクワクするようなイラストが楽しい。

ホームで電車を待っているとドアの脇に水玉模様の外観が目に入るので、「たのしーと」の停止位置は一目瞭然だ。


ほかの車内もリビングをテーマとした気持ちが安らぐような落ち着いた客室空間である。ドア脇の仕切りは透明な板となっていて、横に線が並んだような模様である。これは、野田線の全35駅と同じ数になっているとのこと。遊び心満載だ。
将来を見据えた5両編成化に懸念の声も

80000系は5両編成。これまでの野田線は6両編成だったので1両短くなる。沿線人口が漸減(ぜんげん)傾向にあり、利用客もコロナ禍前の水準に戻っていないため、環境負荷軽減のため1両減らしたとのこと。
もっとも、流山市のように人口が増えている地域もある。一部区間のラッシュアワーの混雑は激しく、5両編成化に懸念を示す声も聞く。場合によっては、区間運転の増発も検討課題であろう。

80000系は、最初の数編成は5両全てを新造するが、導入予定の25編成のうち18編成は、4両のみ新造する。そして、60000系を6両編成から5両編成に短縮化する際に派生する1両を80000系に流用して5両編成に組み替える。サステナビリティの観点からの施策とのことだ。
古びたイメージを一新する新型車両と新駅舎


野田線には半世紀ほど活躍を続ける8000(はっせん)系がまだまだ主力として頑張っている。これに取って代わるのが新たに登場する80000(はちまん)系だ。デビューは2025年3月8日の予定である。

野田市駅周辺も近年高架化され、単線のままではあるが、面目を一新した。新たな時代を迎え、東武野田線(愛称「東武アーバンパークライン」)の一層の発展が期待される。
取材協力=東武鉄道
この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
(文:野田 隆)