「お姉ちゃんでしょ」が心の傷になり愛着障害の原因になることも。普通の家庭で育っても、自己肯定感が乏しくなる理由

2025年2月28日(金)12時30分 婦人公論.jp


お姉ちゃんの気持ち(写真提供:Photo AC)

「自分のことが嫌い」「自己肯定感が乏しい」「周囲にとても気をつかう」それは子どもの時に育まれる愛着がうまく形成されなかったからかもしれません。愛着の問題があると、逆境やストレスに弱くなってしまいます。では、大人になってからでも愛着の形成はできるのでしょうか?精神科医の村上伸治さんが「自己肯定感を育てて、何があってもグラつかない自分になる方法」を教えてくれる『大人の愛着障害:「安心感」と「自己肯定感」を育む方法』から一部を抜粋して紹介します。

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些細な誤解で親子の距離が広がってしまった


虐待などの不適切な養育環境ではなく、まったく普通の家庭で育てられたにもかかわらず、愛着に問題を抱えている人が実は多いのです。

もっとも典型的なのは、神経発達症(発達障害)がみられる子どもの場合です。

愛着関係は相互のやりとりで形成されます。ASD(自閉スペクトラム症)がある場合、他者に関心を向けるようになるのは小学生以降になることが多いです。

他者との情緒・相互的交流の発達はとてもゆっくりなので、親との愛着形成もゆっくりで、少しずつしか進みません。

また、発達の問題がなくても、些細な誤解がきっかけとなり親子関係にボタンのかけ違いが生じ、それが長期化し、親子の距離が広がってしまった可能性も考えられます。

目立った衝突や葛藤がないため、親も子も自分たちのあいだにある溝を、なかなか自覚できません。

しかし原因はどうであれ、基本的安心感や自己肯定感が乏しく、それが子どもの頃から続いているのなら、どこかに愛着の問題(広義の愛着障害)が隠れていると考えるべきでしょう。

くり返す精神疾患の背景になっている


うつや不安症などの精神疾患がくり返されるケースでは、表面化している症状だけを見るのではなく、根底にある身体の機能的な問題(発達の問題)と養育の問題(愛着の問題)にまで目を向ける必要があります。

下図に示したように、精神疾患の根底には発達と愛着の問題が存在すると考えると理解しやすいでしょう。


『大人の愛着障害:「安心感」と「自己肯定感」を育む方法』より

とくに愛着は、物心のつかない、自我ができあがっていない時期に生じ、精神という建物の土台をつくります。

ここに問題があると、土台の歪みが、やがて別の精神疾患などを引き起こします。

上層階や屋根が立派でも土台が弱ければ、その建物は傾いてしまいます。

外にあらわれた疾患の背景にある愛着の問題に目を向け、自己理解を深めていくことは、精神疾患の根本的な治療にもつながるのです。

「お姉ちゃんでしょ!」で心を傷つけられる人も


《Doctor’s VOICE:優しかった子が急に反抗的に》

ある幼稚園の女の子に妹が生まれましたが、赤ちゃん返りもせず妹をかわいがっていました。

ところがあるときから急に反抗的になり、幼稚園で先生の話を無視したりお友だちとケンカしたりするようになりました。

お母さんに尋ねると「そういえば、最近妹に少し意地悪をしたことがあり、『お姉ちゃんでしょ!』と叱ったことが何度かありました」と、答えました。

恐らくこの子は叱られて、「お母さんにきらわれた」と感じてしまったのでしょう。

そこでお母さんには「とにかく『あなたのことが大好きよ』と言ってあげてください」とお願いしました。

お母さんは家に帰ると娘さんに謝り、「お母さんはあなたのことが大好きよ」と抱きしめてあげたそうです。

娘さんはその後しばらく甘えていましたが、やがてもとの活発で優しい子に戻ったということです。

子どもにとっていちばんの関心事は?


《Doctor’s VOICE:「大好きだよ」とフォローされない人も多い》

子どもにとっていちばんの関心事は「母親にきらわれないこと」です。

母親にきらわれることは子どもにとって生存の危機を意味します。

母親にしてみればきょうだいを平等に愛することは当たり前でも、子どもはささいなきっかけで「親にきらわれている」と感じ、そこから親の手助けを拒絶する子に変わることもあるのです。

※本稿は、『大人の愛着障害:「安心感」と「自己肯定感」を育む方法』(大和出版)の一部を再編集したものです。

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