イオン「トップバリュ」が2025年度新商品を発表! 物価高騰で存在感を増すPB商品、働く消費者の簡便・時短ニーズにも対応
2025年3月10日(月)14時11分 マイナビニュース
イオンは3月6日、トップバリュの2025年度の取り組みと春の新商品についての発表会を開催。新たなニーズにアプローチする今春発売予定の商品などを多数紹介した。
○価格高騰の中で存在感を増すPB商品の役割
不安定な世界情勢や先行き不透明な景気などの影響で、増加の一途をたどる家計負担。さまざまな商品サービスの価格が上昇傾向にあり、小売りの現場ではプライベートブランド(PB)の存在感がいっそう高まっている。
発表会でイオントップバリュ社長の土谷美津子氏は、近年の消費動向と2025年度の商品開発の方針について説明した。
「この1月に内閣府が実施した消費者動向では、生活者の消費マインドは全体的にダウントレンドでした。雇用環境も芳しくなく、消費者の態度指数として"あまりお金を使いたくない"という傾向を示しており、暮らし向きが急降下しています。今月は約3,000品目、4月は3,500品目の生活必需品や光熱費の値上げが予定されているという状況です」(土谷氏)
2024年度、トップバリュ3ブランド(「トップバリュ」「トップバリュ グリーンアイ」「トップバリュベストプライス」)の伸長率は、いずれも高い水準を記録し、2023年度比で売上は2桁増に。利益高は110%を超え、売上は約1兆800億円に達する見込みとのことで、消費者の同ブランドへの期待感を物語る内容となったようだ。
「我々が実施した全国600名の生活者へのアンケート調査では、7割の方が『ナショナルブランドからPBへの切り替えが増える』と回答し、年代に関わらずPB比率は増えていることが見て取れます。また、PBに求めることに関する質問には『価格の安さ』をトップに、『味・おいしさ』『品質の良さ』を重視する回答が続きました」(土谷氏)
2025年度は売上1兆2,000億円を目標に掲げた同社。「2025年問題」に象徴される少子高齢化や労働力不足の加速化を背景に、共働き世帯や単身世帯を中心にいっそう高まる簡便・時短な商品のニーズにも対応していくという。
「トップバリュの商品を通じて、生活者の課題解決でどんな貢献ができるのか。"おいしい"ことは、もはや当たり前。2025年も引き続き、"もっとワクワクする商品の創造""トップバリュがあるからイオンに行く"をテーマに、暮らしの圧倒的な味方としてお買い得価格を実現する企業努力を行なってまいります。本日はこの春の新商品や購入頻度の高いコモディティな商品の紹介を通じ、トップバリュのおいしさと価値をお伝えしたいと思います」(土谷氏)
○"コツコツコスパ"を体現にした新商品の数々
"コツコツコスパ"を銘打ち、生活に寄り添ったコストパフォーマンスの高い商品を開発してきた「トップバリュ」。商品開発本部長の髙橋幹夫氏は、新商品の詳細説明の前に基本的な開発方針について次のように述べた。
「コストパフォーマンスを考える上では、商品の価格だけではなくさまざまなコストを考えることが大切です。調理や後片付けにかける時間的コスト、身体的・心理的な負担といったコスト、調理の際に消費する光熱費のコスト。我々はこうしたお客様のコストをできるだけ軽減するため、知恵を絞りながら商品開発を行なっています」(髙橋氏)
同氏から最初に紹介されたのは、ベストプライスから発売される「早ゆでスパゲティ3分」と、野菜の価格高騰で注目を集めたカット済み冷凍野菜シリーズの新商品「スライスきゅうり」の2商品。
早ゆでスパゲティの最大の特徴は、直輸入によって中間コストの大幅削減で実現した、500g198円という圧倒的な価格優位性だ。調理時間も従来の半分以下に短縮し、同社試算ではパスタを茹でる際の光熱費を約3〜4割削減できるという。
「早ゆでスパゲティはソースが絡まりやすい麺の形状にもこだわり、高いコスパを実現した商品に仕上がっています。スライスきゅうりは、1袋あたり3本のきゅうりをスライスした冷凍商品です。年間を通じて安定的な価格で供給することで、冷凍ブロッコリーのように本商品が冷蔵庫の必需品となることを目指します。今後も冷凍野菜では既存商品の改善と、ニーズを捉えた新商品の開発を進めているところです」(髙橋氏)
続いて紹介されたのは、「レンジでできる! 中華炒めないの素」というレンジ加熱だけで炒め物ができる新商品。麻婆豆腐やホイコーローなど計5品で展開し、家庭内の食品ロス削減にも貢献する。
「電子レンジで加熱するだけで焼きたての餃子などの中華惣菜を味わえる商品も発売します。餃子の商品は発熱シートを用い、餃子の表面にしっかり焦げがつくというもので、油やフライパンを使う必要がありません。洗い物が少なく、単身世帯の方にも受け入れられやすい商品だと思います」(髙橋氏)
骨取り済み・焼成済みで食べやすい「レンジでおいしいひもの」シリーズも"簡便需要"に対応した商品のひとつ。より手軽に魚を味わえるといったコンセプトもとで、「さば」「縞ほっけ」「あじ」「さけ」「かれい」「ぶり」の計6魚種を選定し、商品化されるという。
○酢を活かした新カテゴリーを展開
美と健康を意識する市場の拡大を狙うカテゴリーとして、カクテル風や紅茶フレーバーの「飲む酢」、牛乳を加えることでぷるぷるのデザートになる「食べる酢」などの"酢"関連商品も展開する。
「飲む酢はフルーツとお酢を組み合わせ、甘さを抑えたビターテイストの飲料で、5色の鮮やかなカラーが特徴です。これまでも度々発売されてきた酢の飲料ですが、今回、私どもはワクワク・楽しい・おしゃれといったキーワードで、気分に応じてテイストを選んでいただける商品の開発を行いました。また、食べるお酢は牛乳と混ぜてスイーツ感覚でお酢をおいしく召し上がっていただけるという、新コンセプトの商品となっています」(髙橋氏)
加えて、韓国でトレンドのティーカフェなどから着想したという、希釈タイプのビネガードリンク「TEA&Vinegar」(ティーアンドビネガー)も新発売。さらにオーガニック「純玄米黒酢」「純りんご酢」の2種類を同時発売する。
「値上げラッシュでスイーツ関連が苦戦しているなか、若年層を中心にチーズデザート領域の商品が支持を集めています。その伸長ぶりを受け、アサイー&ラズベリーなどのデザート感覚で楽しめる新フレーバーのチーズデザート商品を投入いたしました」(髙橋氏)
「こちらと合わせて、近年人気の無糖・低アルコール度数の缶チューハイとして我々が提案させていただくのが、『甘くないたんさん酒(しゅ)』です。低アルの缶チューハイは甘さを添加したものが中心となっていますが、こちらはその名前の通り甘くない低アルの缶チューハイとなっています」(髙橋氏)
最後に紹介された「ビーツで味わうボルシチ」は、昨年、某テレビ番組で有名シェフからの手厳しい指摘を受けて、商品を1から見直したという商品。開発担当者のこだわりが詰まった渾身の自信作となったようだ。
「我々は専用フリーダイヤルを持ち、お客様の声を日々お聞きする体制をとっており、お褒めの言葉だけではなく、たくさんの厳しいご意見も開発の糧にしています。商品の発売前にはホームユーステストやモニターテストなど定量的な試験の実施、香味分析による科学的・客観的な評価も行いながら、シェフ監修商品なども発売してきました。今後も手を止めることなく、価格優位性だけではない高コスパな商品の開発を進めていきます」
伊藤綾 いとうりょう 1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催 @tsuitachiii この著者の記事一覧はこちら