榊原郁恵×婦人科医・高尾美穂 関節痛、骨折…女性ホルモン減少で起こるトラブル。榊原「65歳、舞台の仕事中に腰痛に。急に不調を感じることも」

2025年3月17日(月)12時0分 婦人公論.jp


俳優の榊原郁恵さん(右)と婦人科医の高尾美穂さん(左)(撮影:浅井佳代子)

女性の体は年齢とともに変化し、さまざまな不調を感じやすくなるもの。「仕事を続けるためにも、調子のいい状態を長く保ちたい」と話す俳優の榊原郁恵さんが、婦人科医の高尾美穂さんに心と体をいたわる「セルフケア」の極意を学びます(構成:内山靖子 撮影:浅井佳代子)

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50代以降に増える不調の原因は


榊原 昨年、65歳になりました。これまでずっと健康そのものだったので、年齢を意識して「老いたなあ」と感じることはないんです。自分の体調に関して、少し鈍感なのかもしれません。

高尾 それだけ元気な証拠でしょう。50代以降になると、多くの女性が心身のさまざまな不調を訴えます。不調を感じないのはいいことですよ。

榊原 あ、でも……昨年、舞台のお仕事をしている最中に腰が突然痛くなったんです。今までに経験したことがないような痛みで、靴下をはくのも不自由になっちゃって。以前はそんなこと、まったくなかったのに。こんなふうに、急に不調を感じることもあるんですね。

高尾 腰の痛みは、女性ホルモンの減少も関係しているかもしれませんね。10歳頃から50歳頃までの約40年間、私たちの体を守っていた女性ホルモンが閉経あたりでほぼゼロになり、自分の体を守ってくれる働きがなくなります。でも、なかなかそのことに気づきませんよね。

榊原 なるほど。私たちの体は、それだけ女性ホルモンに守られていたんですね。

高尾 おっしゃる通りです。女性ホルモンがなくなると、郁恵さんのような関節の不調のほか、筋肉量が減ったり、骨がもろくなって骨折しやすくなったりします。また、血管のしなやかさを保つコラーゲンが減少し、高血圧や心筋梗塞、脳梗塞のリスクが高まる。

また、自律神経のバランスが崩れ、疲労感や頭痛、めまい、便秘・下痢などを起こすこともあります。そのほか肌や粘膜の乾燥・不快感、排尿トラブルなど、加齢による体の変化が顕著になっていくんです。

榊原 年をとりたくてとっているわけじゃないのに、そんなに不調が出てくるなんて、なんだか悔しい!

高尾 安心してください。「年だから仕方ない」と諦めず、女性ホルモンの代わりに自分で自分の体を守るセルフケアを身につければ、人生後半を悩み少なく過ごすことができますよ。

閉経後の過ごし方で人生が変わる!?


榊原 それは嬉しいことを聞きました。まずは何をすべきでしょうか?

高尾 自分の体をよく知ることから始めましょう。方法は2つ。1つは、年に1回は健康診断を受けて、深刻な病気につながる異常がないかを確認すること。「ちょっとした不調」だと思って放置していたら、重篤な病気だったという場合もありますからね。

榊原 実は遅まきながら、昨年初めて人間ドックに行きました。健康だからといって、この年齢になったら、ある程度は自分の体を管理しておかないと無責任かなと思いまして。でも、人間ドックだと小さな不調の種は見つからないでしょう?

高尾 ええ、チェックするのは命にかかわる病気につながる大きな問題がないか、ですから。そこでもう1つ、今、自分が生活で困っていることに目を向けてみましょう。たとえば階段を上りたくない、電車で立っているのがしんどい、新聞の文字が読みにくい——など。

そこには膝の痛み、疲労感、目のかすみなどの不調が隠れています。でも、これらは病院で完全によくなるというものでもありません。

榊原 私もそうでした。腰の痛みを感じたときに整形外科に行きましたけど、「原因は何でしょう?」と聞いたら、「何でしょうねえ」と言われて。(笑)


「簡単なストレッチを教わって続けているうちに、腰痛はだんだん治まっていきました」(榊原さん)

高尾 病院に行くこと自体はいいんです。その結果、深刻な病気ではないとわかるので。つまり、日々のメンテナンスや生活習慣の見直しでよくなる可能性が十分にあるということです。

榊原 私の場合、整形外科で紹介してもらった理学療法士さんに診ていただいたら、立ち方に問題があると。背筋と腹筋が衰えて反り腰になり、腰に負担がかかっていたんです。簡単なストレッチを教わって続けているうちに、腰痛はだんだん治まっていきました。

高尾 それがまさにセルフケアの効果です。女性はもれなく女性ホルモンをつくれなくなるのに、不調の出方には個人差がありますよね。それは持って生まれた体質や遺伝に加え、意識的に自分の体を管理できているかも影響しているのです。

榊原 セルフケアってすごく大切なんですね。不調を放っておくのと、きちんとケアしていくのでは、この先の人生が違ってくるのでしょうか?

高尾 はい。とくに50代で閉経してからの過ごし方が非常に大事です。それ次第で、70代、80代でフルマラソンを走るのも夢ではありませんよ。

榊原 今は人生100年時代でしょう。70代以降も、やっぱり元気で過ごしたいです!

高尾 そう、人生がまだ3分の1近くも残っていますからね。体調がよくないせいで自分がしたいことをできないのは、本当にもったいないと思います。

自分に合った運動を日常動作に取り入れて


榊原 定期的に体の状態をチェックする以外に、どんなことを意識すればいいのでしょうか。

高尾 セルフケアの基本の三本柱は「運動」「睡眠」「食事」。なかでも重要なのが運動です。閉経後の女性が健やかに過ごすには、弾力性のある血管、骨量、そして骨を動かす筋肉の3つを維持することが重要。そのためにも、みなさんにもっと運動する習慣を持ってほしいのです。

榊原 私は毎朝体重計に乗るのが日課で、筋肉量や骨量も一緒に測っています。

高尾 適正体重を保つためにも、毎日体重を量るのはいいことです。ただ、家庭用の体重計で測定できる骨量はかなりアバウト。正確な数値を知るには、年に1度、毎回同じ整形外科で、脚なら脚、腕なら腕と、同じ部位の骨密度検査をしたほうがいいですね。

榊原 え〜、知らなかった(笑)。毎日測っているからこそ痛感しますが、骨量も筋肉量も、意識していても減っていきますね。

高尾 それは加齢によるもので、仕方がないことです。ただ、運動を習慣にすれば、筋肉量や骨量が減少していくカーブをゆるやかにすることができますよ。

榊原 私はハードな運動は苦手なので、毎日スクワットを1分半と腹筋を1分半くらい。あと、私たちの年代は潤滑油が失われて、体の節々がギコギコいっているじゃないですか(笑)。

そのままの状態で舞台に立ってケガでもしたら迷惑をかけてしまうので、柔軟な体でいられるように自己流のストレッチでやんわりと筋肉を伸ばしています。

高尾 十分です! 無理してしんどいことはせずとも、自分の状態に合わせて体を動かせばいいんですよ。軽い運動でも続けることが大切。継続すると体の変化がよくわかり、不調にも早めの対処ができますからね。

榊原 とはいえ、主婦は運動する時間がなかなかとれません。今は母と2人暮らしですけど、夫や息子たちが家にいたときは、運動より家事が優先でした。

高尾 だったら、家事をするときに意識して体を動かせばいいんです。洗濯ものを干すときに思い切り背中を伸ばしたり、膝をつけずに床の拭き掃除をしたりすれば、腹筋も背筋も鍛えられます。

榊原 そういえば、うちの母は91歳で少し腰も曲がっているんですけど、つい先日まで一生懸命腰を伸ばすようにして洗濯ものを干していました。

高尾 素晴らしい! ほかにも、椅子に座る直前に空気椅子のポーズで5秒間静止すれば、スクワットに近い効果が得られますよ。自宅で手軽にできる運動といえば、ヨガもおすすめです。

榊原 先ほど撮影のときに教えていただいた反りのポーズ、とっても気持ちよかったです。

高尾 背中をシャキッと伸ばすと背筋が鍛えられますし、肺が開いて呼吸が深くなることで、メンタルも安定します。心身ともによい状態を保つには、やはり運動が欠かせないんです。

<後編につづく>

婦人公論.jp

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