榊原郁恵×婦人科医・高尾美穂 理想の睡眠は7時間強。朝のたんぱく質で16時間後は自然と眠りに。榊原「寝るのは早くて深夜1時。睡眠は劣等生かも」
2025年3月17日(月)11時59分 婦人公論.jp
俳優の榊原郁恵さん(右)と婦人科医の高尾美穂さん(左)(撮影:浅井佳代子)
女性の体は年齢とともに変化し、さまざまな不調を感じやすくなるもの。「仕事を続けるためにも、調子のいい状態を長く保ちたい」と話す俳優の榊原郁恵さんが、婦人科医の高尾美穂さんに心と体をいたわる「セルフケア」の極意を学びます(構成:内山靖子 撮影:浅井佳代子)
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<前編よりつづく>
睡眠は質だけでなく量も必要
榊原 運動はそれなりにしているものの、睡眠に関しては劣等生かも。私、0時前に寝たことがないんです(笑)。早くて深夜の1時や1時半くらい。
高尾 かなり遅めですね。
榊原 それでも夫(故・渡辺徹さん)がいた頃は、「まだ起きてるのか? 早く寝ろよ」なんて言われましたけど、今は何時まで起きていようが自由。だからどんどん遅くなっちゃって。
高尾 ちなみに、朝は何時頃に起きているんですか?
榊原 舞台の仕事をしているときは、大体7時くらい。前の晩に何時に寝ようが、その時間になったら必ず起きるのが長年の習慣になっているんです。
高尾 それが郁恵さんの睡眠パターンになっているけれど、できれば睡眠時間はもう少し増やしたほうがいいですね。理想は7時間強。これは自分で意識しないと確保できないので、ぜひ気にしていただきたいです。
榊原 最初の3時間しっかり寝れば大丈夫とか、「量より質」という話も聞きますが……。
高尾 確かに、最初の3時間にぐっすり眠るのも大切です。成長ホルモンが多く分泌され、肌や髪の潤いの維持につながりますから。ただ、この時間は「頭」を休めているので、「体」も休めるためには後半の4時間強も必要なんです。
榊原 へえ! ちなみに夜中に目が覚めてしまった場合、その後の睡眠時間も足していいのでしょうか? 最近、トイレに起きることもあるんですけど。
高尾 そのとき、完全に覚醒していなかったら合算してもOKです。でも、スマホを見たり部屋の電気をつけて明るくしたりすると、脳が覚醒してしまいます。できれば足元灯などを活用し、強い光を目に入れないようにするといいですね。
榊原 夜の睡眠時間が足りないときに昼寝をするのは? 舞台で昼夜2公演あるときは、必ず間に横になっています。足を高めにして15分ほど目をつぶっているだけで、すごくリフレッシュできるので。
高尾 いいと思いますよ。起床直後に太陽の光を浴びて体内時計をリセットしたうえで、午後の早めの時間帯に軽く昼寝をするのは効果的です。
榊原 でも、それは舞台の仕事があるときだけで、自宅で昼間に横になるのは苦手です。いったん横になってしまうと、二度と動けなくなりそうで……。
高尾 私のクリニックを訪れる患者さんには「寝つきが悪い」とおっしゃる方が多くて、お話を聞いてみると、夕方にソファでごろ寝をしちゃうとか。そうすると、本当に寝たい時間に眠れなくなってしまう。目を覚ましている間、睡眠を誘発する物質が脳に溜まっていくのですが、途中で寝てしまうとその物質が減ってしまうんです。
榊原 えっ! そうなんですか。
高尾 ですから夕方以降は、自分が本当に寝たい時間まで絶対に眠らないことが大切なんです。
榊原 そんな仕組みがあったとは知りませんでした。うっかり長時間昼寝をしてしまわないよう、気をつけたいと思います。
必要な栄養の効率的な補い方
高尾 食事に関して言えば、閉経後の女性はたんぱく質、ビタミンD、エクオールの意識的な摂取が必須です。
榊原 エクオールって?
高尾 納豆や豆腐など大豆イソフラボンが含まれる食品を食べたときに、腸内でつくられる成分です。これが女性ホルモンと似た働きをして、閉経後の女性の体を助けてくれます。
榊原 それは心強いですね。
高尾 ただ、大豆を摂れば全員が腸内でエクオールをつくれるわけではなく、体内でつくれない体質の方が一定数います。簡単な検査で調べられるのですが、私もつくれない体質なので、エクオールのサプリメントを飲んでいるんです。
榊原 サプリメントってとにかく種類が多いですよね。自分では専門的なことはわからないので、人に勧められると、ついあれもこれもと摂りたくなっちゃう。(笑)
高尾 腸内でエクオールをつくれる体質なら、カルシウムを骨に吸収させる働きを持つビタミンDだけ補充すれば大丈夫。ビタミンDは太陽の光が当たることによって皮膚からもつくられるのですが、冬は肌を露出しませんし、夏は日焼け止めを塗るでしょう。なので、サプリメントで摂れば確実です。食品だと、鮭、鰻、干し椎茸、キクラゲ、舞茸、卵黄などに多く含まれていますね。
榊原 私、たんぱく質は朝に摂るようにしていて。あるテレビ番組に出演したときに、それがいいと聞いたんです。朝食の前に、プロテインと青汁も飲んでいます。
高尾 私も以前はベジタリアンでしたが、最近はお肉も食べるようになりました。郁恵さんがおっしゃるように、食べるタイミングを意識することも大切ですね。筋肉量をキープするという意味では、夜にたんぱく質を摂ってもいい。でも、せっかく摂るならやはり朝がベストです。
榊原 なぜ、朝がいいんでしたっけ?
高尾 朝にたんぱく質を摂ると、それが材料となって、昼間には幸せを感じさせるセロトニンが、そして夜には睡眠を誘発するメラトニンが脳内で生成されるから。つまり日中はイキイキと楽しく過ごせて、16時間後には自然と眠くなるという理想のサイクルをつくってくれるのです。
朝はコーヒーとトーストだけという人は、トーストにチーズをのせたり、コーヒーに牛乳を入れたりするだけでも効果が期待できますよ。
セルフケアで「ほどほど」を目指す
榊原 年齢を重ねると、体だけでなく精神的な衰えも感じます。複数のことを同時に考えられなくなったり、段取りがスムーズにできなくなったり。私の場合、体の不調というより、むしろそちらのほうが大きいかもしれません。
高尾 女性ホルモンが失われると認知機能にも影響が出ますし、メンタルが不安定になる人もいます。子どもが独立したり介護していた親御さんが亡くなったりして、何かと「喪失感」を抱きやすい年代でもありますね。
榊原 私も夫が亡くなったとき、心にポッカリ穴が開いたようでした。でも、「悲しい、悲しい」と沈んでばかりでは、周りの人も気を使うでしょう。もちろん悲しい気持ちはぬぐえませんが、周りの人と気軽に夫の話をしたかったので、なるべく明るくしていようって。
高尾 そうですね。すぐに立ち直るのは難しいけれど、頑張りすぎず、自分ができることをできる範囲で心がければいい。セルフケアも同じです。完璧である必要はないので、少しだけ底上げするつもりで「ほどほどの健康」を目指しましょう。
榊原 「ほどほど」でいいんですね。先生のお話を聞いて、ちょっと気がラクになりました。
高尾 そして何より「続ける」ことが大事です。郁恵さんのように、自分でいいと思える習慣を見つけて続けていらっしゃるのは理想的! 50代以降の女性は、心身の衰えをゆるやかなカーブにしていくのが目標ですから、昨日できたことが今日もできるのは「進化」なんですよ。
榊原 維持することが進化! いい言葉ですね。これからもずっと元気でいたいので、私も自分の体の声に耳を傾けながら、無理せず頑張りたいと思います。
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