部屋の乱れは心身にトラブルを抱えているサイン。小林弘幸「自律神経が乱れて胃腸の働きや睡眠の質が低下。50代のころ、自宅を徹底的に片づけたら人生が好転した」
2025年5月17日(土)12時30分 婦人公論.jp
(イラスト:ナカミサコ)
一見、関係なさそうに思える「片づけ」と「健康」。この2つを結ぶカギは、自律神経にありました。(構成:浦上泰栄)
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すぐに始められる究極の健康法
なぜ、モノが多くて片づかない家で暮らしていると、人は不調を感じやすいのでしょう。まず、掃除がおろそかになるためにホコリやカビが発生し、健康を害するのはいうまでもありません。また、床に置かれたモノにつまずいて転倒する危険も増えます。なにより重要なのが、自律神経との関わりです。
自律神経には、興奮・緊張状態になると働く「交感神経」と、リラックスしたときに活動する「副交感神経」があり、2つがバランスよく働くことで心身が安定し、ストレスに強い健康的な体を保つことができます。
ところが、散らかった部屋で長い間暮らしていると交感神経の活動が過剰になり、副交感神経の働きが弱まって、自律神経のバランスが乱れてしまう。なぜなら人は、ゴチャゴチャして整理整頓されていない状態を目にすると不快感を覚え、ストレスを感じる生き物だからです。
みなさんも、家に帰ったら玄関に散乱している靴を見てイラッとした、という経験があるはず。本来はくつろぎの場であるはずのわが家が、ストレスの元凶になっているのです。
私も50代の初めごろ、仕事や人間関係で悩んだ時期がありました。そこで、衣類がギュウギュウに詰まったクローゼットを手始めに、自宅を徹底的に片づけてみたのです。すると、頭の中がスッキリ整理されて気持ちも前向きになり、人生を好転させることができました。
以来、私にとって部屋の状態は心と体の健康を測るバロメーターになっています。部屋が乱れているのは心身にトラブルを抱えているサイン。なんとなく気分がもやもやするときは部屋を片づけて心を整えるのがおすすめです。
次からは、多くの人が抱く疑問にお答えしていきます。これらを参考に、ぜひ「究極の健康法」に取り組んでみてください。
【Q】部屋が整っていないと、どのような不調が起きますか?
A 自律神経が乱れて胃腸の働きや睡眠の質が低下します
自律神経は体内のあらゆる臓器とつながっていて、呼吸や体温、血圧、消化、代謝など、生きるうえで欠かせない生命活動を維持するために、24時間休むことなく働き続けています。
何らかのストレスによって自律神経のバランスが乱れると、交感神経が過度に働いて血管が収縮。すると血流が低下して体中に酸素や栄養が行き渡らず、肩こりや片頭痛、手足の冷え、疲れやすさといった症状に悩まされるようになります。
同時に、副交感神経の動きも抑えられるため、胃腸の働きが悪くなったり、睡眠の質が低下することも問題です。胃腸の働きが衰えると免疫機能が低下して、感染症やアレルギー性疾患に罹りやすくなります。
また睡眠の質が落ち、日中にボーッとして頭が働かない、下痢や便秘になる、イライラがひどくなるといった症状が表れることも。
体を動かして片づけに励むと、血流がよくなります。加えて、整理整頓してモノの置き場所が決まることで探しものや忘れものが減り、自律神経にとってもプラスに働くでしょう。
【Q】「汚部屋」で暮らしていると、脳にも影響がありますか?
A 片づかない部屋でストレスを抱えると、脳の老化が進みます
人は情報の約8割を視覚から得ているといわれます。目から入ってくる情報は脳に与える影響が大きいため、生活環境が乱れていると、少なからず脳の働きも乱れてしまうのです。
たとえば、書類を読もうとしてテーブルに向かっても、読みかけの雑誌やチラシ、お菓子などが散乱していると、気が散って集中力がそがれ、作業の効率が落ちてしまいます。
私が知っている高名な外科教授のデスクはいつ見ても整然としていて、モノを置きっぱなしにすることがありません。デスクがきれいだと脳が活性化して課題に集中しやすく、いいアイデアが生まれるとわかっているからです。
加齢とともに脳も老化し、集中力や記憶力、判断力などが低下しますが、汚部屋でストレスを抱えていると脳の老化に拍車がかかり、認知症のリスクが高まります。
また、自律神経の乱れによって不眠やイライラなどの状態が長く続くことで、うつ症状を誘発することも。
片づけには選択の回路を動かして、脳を活性化させる働きがあるので、整理整頓を心がけましょう。
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