93歳・大村崑さんがお勧めする<ハヤオソ歩き>とは。鎌田實「崑ちゃんは僕の歩き方革命をしっかり広めてくれた」
2025年3月19日(水)12時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
60代でヨボヨボが始まってしまう人もいれば、80代で元気な人もいますが、なにが違うのでしょうか。今も現役で活躍している、93歳の喜劇役者・大村崑さんと76歳の医師・鎌田實さん。元気ハツラツなシニアライフを送っているお二人が大切にしているのは「筋肉」なのだそう。そこで今回は、大村さんと鎌田さんの共著『崑ちゃん・鎌田式 老化のスピードを緩める最強の習慣!』から一部をお届け。雑誌の企画で再会したときの語らいについて鎌田さんが綴ります。
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トレーニングを続けられているのは……
トレーニングを続けられている理由は、褒められることにあるという。
「『やりくりアパート』とか『番頭はんと丁稚(でっち)どん』、それから『頓馬天狗(とんまてんぐ)』でブレイクしてからというもの、東京の大ベテランにはコテンパンにいじめられましたよ。
舞台でわざとセリフを間違えてきたり、夜中に匿名の電話があって“夜道に気を付けろよ”と言われたり。守ってくれたんは渥美清さんと谷幹一さんと関敬六さんです。
ほんまにさんざんいじめられましたから、2000年に由利徹さんの後任として日本喜劇人協会の会長(現在は相談役)になってからは、ここぞとばかりに威張り散らしましたよ(笑)」
人前と舞台では大村崑やけど……
この日の取材は、東京都内の貸会議室で行った。エレベーターを降りて、取材場所の部屋まで歩いてくる崑ちゃんを見ていて、一つだけ気になったことがある。
歩幅が狭く、ヨタヨタ歩いているように見えたのだ。僕がそのことを話題にすると……。
『崑ちゃん・鎌田式 老化のスピードを緩める最強の習慣!』(著:大村崑、鎌田實/潮出版社)
「先生、やっぱりよう見てるわ。スーパーマン(ジムの担当トレーナー)にも言われるんです。もっと大股で歩いてくださいって。僕も人前に出たり、舞台に立ったりしたら“大村崑”ですから大股でシャキッと歩くんですけど、普段は年寄りの“岡村睦治(むつじ)(本名)”なんですわ。
さすがにトレーニングを始めてからはなくなりましたけど、以前は趣味みたいによう転んでましたから。まあ、この歳やから、いくらトレーニングしてるとはいえ、こけてケガせんように本能的に小股で歩いてるかもしれませんね」
102歳まで生きて赤い霊柩車で逝く
崑ちゃんには明確な目標がある。100歳まで仕事とトレーニングを続けて、102歳まで生きる。そして、亡くなったあとの葬式は盛大にやって、斎場から火葬場までは真っ赤な霊柩車で移動する。
「片平なぎささん主演の『赤い霊柩車』に葬儀社の専務役で出させてもろてたでしょ。だから、もう押さえてます。北海道に赤い霊柩車があるんです。神戸で仕事をしてたときに見つけたんです。葬式も派手にやりますよ。エキストラを呼んだっていい。斎場では僕が活躍した『頓馬天狗』の映像なんかを皆さんに見てもろてね。で、最後に赤い霊柩車ですよ」
賑やかな葬式にするのは、コロナ禍によって家族にすら会えずに亡くなっていった知人・友人らを思ってのことだという。葬式では生前に映像を撮影して本人からも挨拶をする予定。そのセリフはもう決まっている。
「僕は一足先にあっちの世界に旅立って、毎日ここにいる皆さんのご健康とお幸せを祈っていますから、頑張って長生きしてください。そして、今日来なかった皆さんのことは恨み倒してやるからな」
最後まで笑いを取るつもりなのだ。さすがは喜劇役者である。
「ハヤオソ歩き」
崑ちゃんいわく、トレーニングを始めて、自分より年下の中高年から身体を褒められることが増えたそうだ。すぐさま、トレーニングを勧めると少なくない人が「犬の散歩してますから、大丈夫です」と返してくる。
「犬の速度で歩いても筋トレになりません。犬の散歩を1時間してるなら、30分で済ませる。いっぺん家に帰って犬を置いて、同じコースを歩くんです。3分大股で歩いて、次の3分は息を整えながら草花なんかを見て、また次の3分で大股で歩く。坂や階段があったら上る。そしたら、あんたも犬みたいに元気になる。相手の人にはそうやって言うんです」
僕はこれを「ハヤオソ歩き」と言っている。僕の“歩き方革命”をしっかり広めてくれてるのだ。
さすがは崑ちゃん。『崑ちゃん・鎌田式 老化のスピードを緩める最強の習慣!』では、崑ちゃんと語り合いながら、僕たちの「老化のスピードを緩める健康習慣」を紹介する。読者の皆さんもこれを読んで、“元気ハツラツ”なシニアライフを取り戻してもらいたい。
※本稿は、『崑ちゃん・鎌田式 老化のスピードを緩める最強の習慣!』(潮出版社)の一部を再編集したものです。
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