共働き子育て世帯が住みたい駅・路線は? 通勤の「新3大条件」からバイパス路線に注目
2025年4月12日(土)7時0分 マイナビニュース
都市圏を中心に、土地の仕入れから設計・建築販売まで手掛ける製販一体の業務形態で急成長を遂げるオープンハウスグループは、住まいに関する独自調査「これから家を買いたい人が住みたい駅・路線ランキング 2025 〜共働き子育て世帯編・関東版」を発表した。
物件価格の上昇、地価上昇、住宅ローン金利の上昇という昨今の局面において、関東1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の居住者かつ、3年以内に家を買いたいと思っている共働き子育て世帯が住みたい駅はどこなのか、また家に求める条件は何なのかを調査。その調査結果について、オープンハウス・ディベロップメント 開発事業部の須藤光輝氏が解説した。
今回の調査は、オープンハウスグループによって2025年2月17日〜2月21日の期間、共働きかつ子育て中の20代〜40代の男女を対象に行われたインターネット調査で、調査エリアは関東1都3県東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)。
調査項目は、「最寄り駅として検討している鉄道の路線と駅」と「家選びの条件」で、有効回答数は697名(東京都:344名、神奈川県:119名、埼玉県:126名、千葉県:108名)。なお、1人につき5駅まで回答しているため、結果はpt(ポイント)で表されている。
○「最寄り駅として検討している鉄道の路線と駅」調査結果
■全体
■東京都
東京都では、山手線沿線が上位を独占する結果に。特に新宿〜品川間が高い人気となっていることがわかる。
■神奈川県
神奈川県では、JRだけでなく東急東横線の沿線も上位にランクインしているとおり、都心へのアクセス、利便性が高い駅が人気を集めており、特に乗り入れの路線の多い駅が上位となっている。
■埼玉県
「埼玉は大宮と浦和が不動の1位・2位」と須藤氏が語る通り、「大宮」と「浦和」に人気が集中しているが、注目は3位の「和光市」。始発の駅であり、「有楽町」や「渋谷」まで乗り継ぎなしでアクセスできる利便性が評価されたものと考えられる。今後も「JR、私鉄は関係なく、利便性の高い駅がランキングに入ってきそう」とのこと。
■千葉県
千葉県は他の地域と比べて、上位駅でもポイントが低く、千葉を選ぶ人が少ないだけでなく、現在住んでいる人からもあまり選ばれていないことから、須藤氏は「帰属意識が低いのでは」との見解を示しつつも、「潜在的な可能性も感じている」と評価。特に、公示価格の上昇率が高い「流山おおたかの森」が7位に入ってきているのが注目ポイントとなっている。
各ランキングを現在の居住地別に見ると、次のような傾向が見られる。
■東京都居住者
■神奈川県居住者
東京都に住んでいる人は、基本的に東京を選び、神奈川県に住んでいる人は神奈川県を選ぶ傾向にある。その中で、神奈川県の2位に「品川」がランクインしていることについては、「神奈川から近い駅として選ばれているのではないか」との見解を示した。
■埼玉県居住者
■千葉県居住者
一方、埼玉県居住者では、「大宮」「浦和」といった不動の1位・2位が人気を集めているが、3位に「横浜」が入っているほか、7位には「新横浜」が入っているなど、神奈川県を選んでいる人も多く見られる。また、埼玉県とのアクセスの良さから、6位には「池袋」がランクインしている。
そして、千葉県居住者では、3位に「五反田」が入り、さらに5位には「中野」がランクインしているが、「その理由については、正直わからない」という須藤氏。他地域居住者と比較して、回答がばらけているのが千葉県の特徴で、先述したとおり、千葉県居住者で千葉県内の駅を選んでいる人が少なく、千葉県内の駅を1駅も選ばなかった人が33.3%に達しているという。
ここまでは駅別のランキングを紹介したが、路線別にすると、以下のようなランキングとなる。
■人気の路線ランキング
1〜3位を主要な路線が占めており、「ある意味順当な結果」という須藤氏だが、武蔵野線や横浜線、南武線がランキングしている点について、「実際に住むという観点では、メイン路線に入るための“バイパス路線”が注目を集めている」との見解を示す。
また、ここまでの結果を踏まえて、家を買う場合は、自分が知っている駅に住みたい、住んでいるまちにそのまま住みたいという回答が多くなっており、同じ駅を候補に入れた人は40.6%、同じ路線から探す人が68.3%となっている。これは、回答者が“共働き子育て世帯”のため、通勤や子育て環境を変えたくないという要望が強く感じられる。
○「家の購入で重要視すること」調査結果
「家の購入で重要視すること」では、おもに「環境の条件」と「金額の条件」について調査が実施されている。
■居住環境で重視する項目
「土地の地形・形状」や「住居の向き・採光状況」が上位を占めるが、「教育環境」や「商業施設」といった便利さも重要視されている。世代的に見ると、20代では上位となっている「教育環境」や「商業施設」が、30代、40代では少し低くなっており、逆に、20代は「住居の向き・採光状況」への興味が薄い一方、30代、40代では重要視する傾向にある。また、20代では「病院・クリニック」が近くにあることを重要視しているなど、世代によって、居住環境と家そのものに対する考え方が違っていると考えられる。
■居住設備で重視する項目
居住設備で重要視されているのは、「直近、災害関係が話題になることが多い」ことからも「耐震性・耐火性」を重視する人が多く、逆に「設計の自由度」に関してはほとんど重視されていないことがわかる。一方、世代別に見ると、「耐震性・耐火性」「断熱性・気密性」については、いずれの世代でも高くなっているが、「防犯性・安全性」は20代で高く、30代、40代ではやや低めとなっている。また、「住宅設備(キッチン・洗面・浴室・トイレ)」に関しては、20代では高く、30代、40代では低めの結果にとなっており、「若い世代ほど家の中に、30代、40代は家の外に求める傾向にある」と分析された。
■家から最寄りの駅までの徒歩時間
駅までの徒歩時間は「短ければ短いに越したことがない」という事実を踏まえつつ、現実的な範囲では、「15分以内」が境界値との結果に。理想は「6〜10分圏内」だが、現実を考えると「15分未満」が妥協点であり、「15分以上は妥協もしたくない」という結果が見て取れる。
■通勤における電車の乗車時間
通勤時の乗車時間は、世代を問わず、「30分以上1時間未満」がもっとも多くなっている。駅までの徒歩時間とは異なり、「15分未満」という短時間が少なくなっているのは「会社の近くには住みたくない」との気持ちから。その反面、通勤の負担などを考慮すると、「30分以上1時間未満」が理想であり、妥協点ともなっている。
■通勤における電車の乗り換え回数
「乗換なし」で、会社まで行けることが理想だが、家を買うのであれば「乗換1回」が譲歩点という結果に。実際のところ、メイン路線のひとつ外側となるパイパス路線を居住環境と選ぶことが、金銭面からも、「理想と現実が一致するライン」だと考えられる。
■住宅購入時の月々の支払額(住宅ローン)
一方、「金額の条件」として、現在の住居費と比べてどこまで許容できるかという質問に対しては、「+3万円」までが許容範囲という結果に。なお、須藤氏によると、この結果は、今回のアンケートだけのものではなく、過去に行われたアンケートでも同様の結果が得られているという。
ここまで「家の購入で重要視すること」について見てきたが、家選びでは何よりも最寄り駅からの徒歩時間が、住居費や乗換回数、さらには急行停車駅といった観点よりも重視されており、境界値は「15分以内」となっている。
さらに、「通勤乗車時間1時間未満」「乗換1回」といった点も重視されており、「15分以内」「1時間以内」「乗換1回」といった3大条件を満たし、現在の家賃より「+3万円以内」であれば購入検討物件になることがわかる。
○調査結果と実需から見る穴場駅
ここからは、調査結果と実需から見た穴場駅を須藤氏が紹介。
■東京都
ランキングTOP10の駅では「大崎」を推奨。また、山手線沿いを狙うのであれば「内側よりも外側が狙い目」。さらに、ランク外からは「赤羽」「東北沢」「板橋」といった3つの駅が穴場駅として提示された。
■神奈川県
ランキングからは「川崎」「武蔵小杉」「海老名」を推奨。「海老名」は距離的にはやや遠いが、落ち着いた町並みに加え、商業施設もどんどん開発されているほか、意外と都心へのアクセスも悪くないと評価する。また、ランク外からは「新綱島」「登戸」「橋本」の3駅が示された。
■埼玉県
ランキングからはやはり「大宮」と「浦和」が不動との評価だが、同じ路線の「さいたま新都心」に着目。新宿や品川とのアクセスも良いため、「今後ランキングも上がってくるのでは?」との予想する。ランキング外では、かつて推奨していた「川口」に変わり、「戸田公園」を新たな穴場駅として提唱する。
■千葉県
千葉県はいずれの駅もポイントが低くなっており、「千葉」が1位になっていることが、「千葉の人にとっては驚くべきこと」ではないかと推測。公示価格が上がっているにも関わらず「流山おおたかの森」の順位が低いところからも、「まだまだ千葉のポテンシャルが感じられる結果」とあらためて言及する。ランク外の穴場駅としては「新浦安」と「海浜幕張」を推奨。
ここまでのアンケート結果を踏まえて、「これから家を買う共働き世代の正解は?」という問いに、「駅選びの新基準はバイパス路線」という須藤氏。特に共働き子育て世帯の家選びでは、「徒歩15分以内」「乗換1回」「電車の乗車時間は1時間以内」が通勤の「新3大基準」になっていることが、今回のアンケート結果からわかったという。
住宅の購入は「未来への貯蓄」であり、基本的に、住宅を買うほうが家賃を払うよりも安く抑えられることから、土地という資産性も考慮すれば、「住宅を購入することもひとつのおすすめなのではないか」と締めくくった。
※グラフ画像は同発表の調査結果から引用