60歳を迎える前に「自分探しの旅」へ。お金のためだけではなく「楽しく、自分らしく」90歳まで働き続けるための3つのポイント
2025年4月14日(月)12時30分 婦人公論.jp
(写真:stock.adobe.com)
健康寿命が延びる中、お金の不安を解決する唯一の方法は「働き続けること」。『とらばーゆ』元編集長であり、人生100年時代のライフシフトを研究する河野純子さんは、65歳までを年金の「待ち時間」とせず、「雇われる働き方」から「雇われない働き方」へとシフトする準備を始めるべきだと語ります。その目標は好きな分野で小さな仕事を立ち上げ、90歳まで続けていくこと。会社や家族のためではない、自分のための人生へ。ライフシフトするためのポイントを、河野さんの著書『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』より紹介します。
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お金のためだけでは続かない
90歳まで働く。そう聞いて皆さんはどう思いますか?90歳まで働けたらお金の心配はいらないかもしれないけれど、いったいどうやって? きっとそう思いますよね。
確かにそうです。私たちは人生100年時代のトップランナー、まだ身近にロールモデルがいないので、自分が90歳まで働いている姿は想像しにくいですよね。
でも安心してください。さまざまなデータや専門家の話、そしてすでにチャレンジを始めている先輩たちの話を聞いていると、私たちはこれから90歳まで十分に働いていくことが可能だと思えてきます。しかもいまよりもっと楽しく、自分らしく、です。
この「楽しく、自分らしく」というところは、とても大事なポイントです。お金のためだけに90歳まで働かなければならないと思うと、それは辛すぎます。
紆余曲折ありつつも、私たちがこれまで働き続けてきた理由は、経済的な自立のためだけではなく、そこに楽しさがあったからですよね。これからもそうでなければ、とてもあと30年も働き続けることはできません。
最近、仕事が楽しくないという人も、思い返してみてください。20代のころの自分と比べたら、仕事を通じてずいぶん成長できたはずです。人に喜ばれたり、何かをみんなで成し遂げたり、社会に役立ったと思えた経験、さまざまな出会いなど、働いていなかったら得られなかったものがたくさんあったと思います。
これからもそんな楽しさを、もっと自分らしい形で味わっていけるのです。
90歳まで楽しく働き続ける
では、どうすれば私たちは90歳まで、いまよりもっと楽しく自分らしく働き続けることができるのでしょうか。3つのキーワードをご紹介します。
【1】小さな仕事でOK
90歳まで働くことを前提として「生涯収支」を試算してみると、月々はそれほど多く
の収入を得る必要がないことがわかります。したがってこれからは収入よりもやりがいや、自分の好きを基準にして仕事を選ぶことができるのです。
【2】自分で自分を雇う
長く働き続けるためにはいつかは会社員を卒業し、自分で定年を決められる「雇われない働き方」にシフトする必要があります。そうすることで厄介な組織の論理から離れて、自分の裁量で、自分らしく働けるようになります。これは実に楽しいことです。
【3】時間を味方につける
私たちには時間という強い味方がついています。いまこれといった特技や専門性がなくても、これから新たに学んで、「雇われない働き方」へとシフトする時間がたっぷりあるのです。いまから、なりたい自分になれると考えるとワクワクしませんか?
時間を味方につけて必要なことを学び、自分の好きな分野で小さな仕事を立ち上げて、自分のペースで続けていく。これが90歳まで楽しく働き続ける作戦です。
『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』(著:河野純子/KADOKAWA)
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50代は第2の思春期
これからの私たちの人生は思っている以上にたくさんの選択肢があります。せっかく会社という枠組みを離れ、フリーハンドで未来図を描けるのですから、大いに悩んでみていいのではないかと思うのです。
実際に、50代で会社員から「雇われない働き方」へとライフシフトした人は、皆さん、実にジタバタしていました。私も含めて多くの女性たちが「自分探しの旅」を10代後半〜30歳ぐらいにかけてやってきてはいますが、そのモヤモヤが再びやってくるのです。
頭の中だけで考えていてもわからず、人に会って話を聞いたり、聞いてもらったり、こうして本を読んだり、ワークショップに出てみたり。何かを学び始めてやっぱり違ったと振り出しに戻ることもあります。
心理学者のダニエル・レビンソンは、40代〜50代を「ミッドライフ・クライシス」(中年の危機)と言っています。アイデンティティが揺らぐ時期という意味です。
組織コンサルタントであるウィリアム・ブリッジズは、人生の転機は、「何かが終わり、ニュートラルゾーンを通って、新しく始まる」と説いており、ニュートラルゾーンは不確実性や混乱が生じる苦しい時期といっています。
会社員が終わり、雇われない働き方へと移行(トランジション)するときも、「自分探し」というニュートラルゾーンを通るのです。それはしばしば苦しい時間でもあります。
ですから悩んで当たり前、むしろ50代の10年間は60歳以降の「ありたい自分」を見つける「第2の思春期」ぐらいにかまえて、じっくり取り組んでみましょう。
何かが早く見つかって準備ができたら、60歳まで待つ必要はありません。というより、何かが見つかると、やりたくなってしまうのです。会社を辞めないまでも副業でその何かを始めてみるのもよいアイデアです。
なかなか見つからなくても焦らずに。色々動いているうちに、必ず見つかります。なぜならば答えはすでに自分の中にあるからです。
いまはまだ見えていなくても、私たちはこれまでの人生の中でたくさんの経験をしてきています。そこが「第1の思春期」とは違う、私たちの強みです。
「本当にやりたいこと」より「いまやりたいこと」
60歳を迎える前にすべきこと。それは「自分探しの旅」に出ることです。日々の忙しさを言い訳にせずに、自分と向き合う時間をしっかりとることです。気が重いかもしれませんが、ここで気持ちが楽になるアドバイスがあります。
それはやりたいことを1つに絞る必要はないということです。「本当にやりたいこと」を探さなきゃと思うと、かなりのプレッシャーになります。1つに絞るということは、他の選択肢を捨てるということ。だから怖くて決められないのです。失敗したくない、後悔したくないという気持ちになってしまいます。
そうではなくて、いまはこれに関心がある、まずはこれから始めてみよう。それぐらいの気持ちで動き出してよいと思います。いくつかやりたいことがあるのなら、絞らずに全部やってみればいいのです。
変化の激しい時代に、1つの仕事、1つの収入源に絞ってしまうことはリスクも高い。いろいろやっていれば、どれか1つは育ってくれるものです。30年という時間があるのですから、順を追ってトライしていってもよいわけです。
例えば60代はパワフルに3つのことに挑戦して、70代で2つに絞り、80代はもっともやり続けたいこと1つに絞っていくという考え方もあります。
1つは経験を活かして収入も期待できること、もう1つは全くの未経験なので収入はまだ期待できないけれどこれから育てていきたい仕事、もう1つはその中間といった具合です。
これから30年は月々10万を稼ぐ必要があるとすれば、60代は15万円、70代は10万円、80代は5万円という稼ぎ方も現実的のように思います。
※本稿は『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
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