うれしいニュース!うさ耳を持つ「ミミナガバンディクート」の個体数が増加
2025年4月18日(金)8時0分 カラパイア
image credit:Brad Leue/Australian Wildlife Conservancy
有袋類の宝庫オーストラリアからうれしいニュースが舞いこんだ。ウサギのように長い耳をもつ固有の有袋類ミミナガバンディクートが、かつて君臨していた広大な生息域を取り戻す希望の光が見えてきた。
かつて大陸の70%以上に生息していたミミナガバンディクートだが、外来捕食者や干ばつや火災などで絶滅危惧種に。分布もごく一部に限られてしまった。
その後保護のかいあって、2023年の大規模調査で絶滅の危機から復帰し始めたミミナガバンディクートの群れに、このほど着実な増加が確認された。
その数なんと3000匹以上と、保全活動と再導入プログラムの成果がついに目に見える形で現れたのだ。
オーストリアの「生態系エンジニア」という重要な役目も担うミミナガバンディクート。その目覚ましい回復ぶりに、生態学者も手ごたえを感じている。
ミミナガバンディクートが3300匹に急増
オーストラリア野生生物保護協会 (AWC)が2025年度の最新の調査報告として、絶滅から回復を目指す固有種のミミナガバンディクート(Greater bilby)の急増を発表した。
ミミナガバンディクートは、国内4か所に設けられた、野生の捕食者を阻む大きなフェンスで守られた保護区で暮らしているが、その個体数の合計がおよそ3300匹に達したことが明らかとなった。
2023年に絶滅危惧種からの回復種として認められて以降、徹底した管理のもとで、着実に増えつつあるミミナガバンディクート。このうれしい結果はフェンスの導入の成果でもあるようだ。
image credit:Helenna Mihailou/Australian Wildlife Conservancy
子どもや若い個体も確認
南オーストラリア州保護団体、アリッド・リカバリーによると、例年の捕獲調査は来月だが、過去2週間の初期調査だけでも充分な個体数が確認できたという。多くの子どもや若い個体が目撃され、繁殖期も順調だったようだ。
中央オーストラリアのニューヘブン野生生物保護区では、独立した若いミミナガバンディクートも発見された。
その個体は自分の2倍くらいもある大きな穴を掘ってる最中だったが、健康診断を受けた後、ちゃんと元の穴掘り場所に戻されたそう。
赤土の上に立つミミナガバンディクート /image credit:Brad Leue/Australian Wildlife Conservancy
かつてオーストラリアに多数生息していたミミナガバンディクート
オーストラリア野生生物保護協会・上級生態学者のジェニファー・アンソン博士は「個体数調査の結果に、これまでの活動の成果が表れてました」と語る。
この種はかつてオーストラリア全土の約4分の3に生息してましたが、現在でもその80%が姿を消しています。彼らは皆、種の広範な絶滅を招いたのと同じ要因によって今も脅威にさらされています
急激に増えた個体にはリスクも
捕食者が入ってこない保護区の中は、種の繁栄に適した安全で健全な生息地となっている。
現在ある6つの個体群のうち、4つの群れは比較的新しく、過去10年間に再導入されました。中には過去5年間に再導入された個体もいます。その群れは、オーストラリアでも広いほうの保護区の一部で暮らしていて余裕もあります。
乾燥に適応したこれらの種は、条件が良ければ非常に素早く繁殖し、個体数を増やせます。裏を返せば、彼らのように急に増えた群れは、環境条件に左右されやすく、つねに増減する可能性があります (アンソン博士)
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大移動で「適応能力」を高める群れ
中には、2年半も続いた干ばつで土地が乾燥し、食糧資源が不足したことで、従来の生息域の端から端まで大移動した群れもある。
その個体数は2023年2月に1770匹いたが、2024年11月に986匹まで減少した。だがアンソン博士は、群れの回復に期待を寄せる。その移動には彼らの「適応能力」を高めるねらいもあったからだ。
彼らの今の保護区は大規模なので、個体数の増加が見込まれ、環境の変化にもある程度回復力が期待できます
また、個体数が極端に少なすぎると、交配の偏りなどが見られる場合もあるが現時点での遺伝的な心配はないそうだ。
広大な保護区で個体数が増え、多様性が保たれているため、今後も長期的に存続できる可能性が十分にあるという。
もし変動があったとしてもその個体群は健全さを維持しながら回復し、成長し続けるでしょう。むしろさまざまな環境の選択圧にさらすことで、気候の変化に対する遺伝的な耐性が生まれ、より強くなります
image credit:Caitlin Potts/Australian Wildlife Conservancy
野生での再定着を目指す研究
にしても今後ミミナガバンディクートが順調に増え、野に放たれる日が来ても過酷な気候変動に対応できるのだろうか。
オーストラリアの乾燥地帯では、熱波がより高温になり長期化。さらに頻発化している。そうしたストレスに、夜行性で穴を掘る習性をもつミミナガバンディクートらがどう対処するかはわからない。
ニューサウスウェールズ大学では博士課程の学生ジャック・ビルビーとアリッド・リカバリーのチームが、たとえ異常な酷暑に遭遇するリスクがあろうとも、かつての生息域で、再び定着することを目指して研究中だ。
極度な暑さに対するミミナガバンディクートの反応を知るために、軽量なデバイスでその動きや行動を追跡。そのデータを別の乾燥地帯の穴掘り動物、外来種のヨーロッパクロウサギのデータと比較しているという。
保護区での調査が終わって放たれたミミナガバンディクート/image credit:Credit: Jessica Holding/Australian Wildlife Conservancy
オーストラリアの「生態系のエンジニア」
またアンソン氏によると、ミミナガバンディクートは生態系にとって本当に重要な存在であるという。
これらの個体群を、かつての生息域全体に地理的に分散させれば、山火事や近年の洪水のように、壊滅的な災害の影響を抑えることもできます。
彼らはとてもカリスマ性がある象徴的な種であり、いわば「生態系のエンジニア」です。ですから、彼らがあちこちで生息することは、オーストラリア全土の健全な景観の維持にもつながります
生態系にも重要なカギでもある、ウサギみたいでネズミみたいなミミナガバンディクートがまたオーストラリアで普通にみられる日がきたら、ぜひこの目でみてみたい。でも夜じゃないと見れないのか。
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穴掘りが得意なミミナガバンディクート
ウサギのような長い耳と、ネズミに似た尖った鼻先と長い尾をもち、ぴょんぴょん跳ねて移動するミミナガバンディクート(通称ビルビー)は、そのどちらでもなく、哺乳綱バンディクート形目ミミナガバンティクート科の有袋類でオーストラリアの固有種だ。
その見た目からウサギバンディクートとも呼ばれている。体長は30cmから55cmほど、オスの体重もウサギとほぼ同じだが、メスのほうがやや小柄。その特徴どおり聴覚と嗅覚が優れている。
基本夜行性で、昼間は暑さと捕食者を避けるため地下に潜り、夜になると活発に活動する。食性は昆虫や果実、種など。
穴掘りがとても得意で、自ら掘った広い巣穴(最大12個)は、複数の部屋がある快適な隠れ家であるとともに、土壌の空気循環や栄養分の分解を助けるなど、地域の生態系に重要な役割を果たすという。
かつては全土に広く分布していたミミナガバンディクートだが、火災や熱波などの気候変動のほか、猫やキツネなどの外来種による捕食により大幅に減少。幸いにして絶滅のピンチを逃れた現在は、野生への復帰を目指している。
References: Cosmosmagazine[https://cosmosmagazine.com/nature/animals/bilby-populations-boom-awc/] / Aridrecovery.org.au[https://aridrecovery.org.au/news/2025/can-bilbies-and-rabbits-beat-the-heat] / Environment.gov.au[http://www.environment.gov.au/cgi-bin/sprat/public/publicspecies.pl?taxon_id=282]