悪しき因習に縛られる村人&異を唱えるよそ者…「ガンニバル」で描く世界の縮図
2025年4月20日(日)12時15分 シネマカフェ
「ガンニバル」シーズン2© 2025 Disney
“この村では、人が喰われるらしい”。美しい村をめぐる恐ろしい噂。その真相に警察官・阿川大悟が迫る中、村の秘密を守ろうとする後藤家がついに一線を越え、警官隊と衝突する。後藤家との狂乱の戦いに自ら身を投じていく大悟は、真相を暴くことができるのか。全ての鍵は、呪われた一族・後藤家の過去にあった...。
本作は、累計発行部数400万部を超える二宮正明が放つ同名サスペンスコミックの実写化。村の真相に迫るため、狂気と暴力の渦に自らを投じる主人公の警察官・阿川大悟役の柳楽優弥をはじめ、供花村を支配する後藤家の当主となった後藤恵介役の笠松将、大悟の妻・阿川有希役の吉岡里帆らが続投。
新キャストとして、供花村に狂気のはじまりをもたらす若きころの後藤銀役で恒松祐里、銀に見初められ、惑わされ、やがて渦巻く供花村の呪いに取り込まれていく神山正宗役で倉悠貴が参加。大悟が真実にたどり着く寸前のところで幕を閉じたシーズン1だが、シーズン2では村に隠された全ての真実がついに明らかに。
舞台となる供花村は、自然豊かでのどかな原風景が広がり、村人たちとの温かい交流のある、田舎のとある村。阿川一家も重い過去を背負いながらも、その傷を癒すためにふさわしい場所としてここを選択し、移住する。
しかし、早すぎる噂の広まり、村人同士の異様なまで結束力、常に監視されているような視線、同調していかなければ居場所を失うことになる年長者の存在、「一族以外は人間と認めない」という歪んだ思想をもった村を支配する後藤家など、ホラーとは違う、村特有の怖さと気味の悪さが本作の特徴のひとつとなっている。
後藤家当主・恵介(笠松将)は、一族の繁栄を大事にしながらも、村の因習を変えたいと考えているが、一族の古くから根付く考えに縛られ、葛藤する人物。柳楽は「後藤家は昔からのルールやしがらみを変えられない今の日本を表している」と述べ、これを受けて脚本の大江崇允は「柳楽さんの感性はさすがだなと思います。一方、僕自身はむしろ後藤家を含めた供花村の人々に、なにかもう少し肯定の目線を向けたかった気持ちが強いです。村には独自の法律があって、その秩序の中で彼らなりに必死に生きてきた。そんな彼らの存在自体は否定できないと思いました。もし排除が止むを得ない選択だとしても、もっと人間的な方法はないものだろうかと」と語る。
「人が喰われているらしい」という奇妙な噂と、その真相の鍵を握る後藤家を調べる大悟。国も供花村に隠された因習と実態が明らかとなり、武力行使で終息に向け動きだすが、それは村の外にいる者、外から来た人間によるエゴだという考えも。
第2話では、村の年長者・さぶ(中村梅雀)が「おめぇら外のもんに何が分かるんじゃ!わしらの平和を壊したのはお前なんじゃ!わしらなんも悪いことしとらん。村には秩序がある。従うことで家族が暮らしていけるんじゃ!」と村人たちの気持ちを代弁している描写がある。
阿川家の絆、後藤家の複雑な血筋、村の秩序など、それぞれの正義が衝突する構図は、世界の縮図ともいえるが、プロデューサーは「今の時代性に対する意識はものすごくありました。この作品はヴィレッジ・サイコスリラーというジャンルの皮を厚くかぶった価値観の闘争の物語なんです」「我々の社会の外にある自分たちがあまり深くは理解できていない人たちのことを簡単に否定して欲しくない。異なる信条や信念を持ってる人たち、例えば宗教や慣習、固有の歴史に基づく暮らしのメカニズムを一方的に捻じ曲げてしまうことが、いかに残酷なことかと。“他者をきちっと理解する”ことの重さや難しさといった主題も、この物語を通して語られているんじゃないかなと思います」とコメントしている。
なお、16日(水)には第7話、23日(水)には最終話となる第8話が配信となる。そして、相関図も公開。シーズン2で描かれる現代から約70年前の過去とを繋ぐ人物たちの関係性がまとめられている。
「ガンニバル」シーズン2はディズニープラス スターにて独占配信中(全8話)。