節約は「収益性の高い副業」だ。お金の賢者3人の視点から探る、節約生活を継続するヒント

2025年4月22日(火)11時0分 マイナビニュース


物価高がとまらない昨今、家計をうまく回していくためには節約の意識が必要となる。そこで集まってもらったのは、まさにお金の賢者ともいうべき、お笑い芸人のサバンナ八木真澄氏、節約・投資系YouTuberとして人気のくらま氏、節約オタクふゆこ氏の3人だ。それぞれに共通するのは、節約のストイックさだけでなく、節約を「我慢」ではなく「稼ぎ」と捉える独自の価値観だろう。3人の本音トークをお届けする。
○節約を始めた理由は「生活の苦しさ」
くらま:ふゆこさんは大学院を卒業後、半導体メーカーに就職されたのですよね。どうして節約生活の必要があったのですか?
ふゆこ:当時の手取り月収が20万円少々だったのですが、大学と大学院で奨学金を477万円借りていたので、月2万7,000円の返済が必要でした。さらに、ひとり暮らしの家賃と生活費を払うとお金がまったく残らなかったのです。奨学金の完済予定が40代なので、そんな財政状態がずっと続くと思うと、将来的に結婚して子どもを育てられるイメージも湧きません。
そして、老後2,000万円問題(2019年に金融庁が「平均的な高齢夫婦の場合、老後30年間で約2,000万円が不足する可能性がある」旨を発表し、物議を醸した問題)も話題となり、危機感を抱いたことが節約のきっかけです。確か、くらまさんも節約のきっかけは奨学金でしたよね?
くらま:僕も大学の奨学金返済が384万円ありました。卒業してまだ収入も少ないのに「あなたは400万円の借金があります」と突きつけられると、気持ちが暗くなって遊びに行くのも気が引けてきて……。それをなんとか完済したくて、「有り金は全部貯める」という気持ちで節約を始めました。
食事を1日1食にして、家具も買わずにダンボールで生活して、月7万円から8万円の支出に抑えながら副業もガンガンやりましたよ(苦笑)。おかげで社会人1年目には奨学金をほとんど完済することができました。
八木:奨学金って「給付金」のようなイメージで利用してしまいますが、つまるところは借金なんですよね。奨学金を返済し終わる前に、自分の子どもの教育資金が掛かり始めるダブルパンチもあって、かなり大変だと聞きます。
ふゆこ:そこに住宅ローンや自動車ローンも……と考えると、「あたりまえに訪れると思っていた普通の人生が自分には無理なんだ」と思えて、その絶望から脱却するための手段が節約だったわけです。八木さんは、どうして節約だったのでしょう?
八木:19歳で芸人になったので、もう30年も前の話ですが、駆け出し時代の芸人って本当にギャラが安いんですよ。当時はラジオに出演しても1回2,500円で、バイトのスタッフのほうが収入はいいほどです(笑)。吉本の劇場でやる漫才も新人は1回500円でしたから、月1万5,000円程度にしかなりません。
それでも生きていかねばならず、自然と節約が身につきました。飲み物はお茶を淹れて劇場に持っていきましたし、それもお茶っ葉1回分で3回淹れると決めていたので最後はほとんど水で、よく現場に居合わせていた他の芸人にいじられていましたね(笑)。あと、電車代を浮かすため移動はすべて原付バイクでした。
でも、当時よりギャラが上がったいまも、そんなに意識は変わらないですね。「費用対効果を考える」ことが完全に習慣になっているので、タクシーに乗ると落ち着かないです。ちょっと早めに出て電車やバスでも行ける場所なら、タクシーに乗るのはコスト的に合わないじゃないですか。
くらま:わかります、その感覚! 僕も前の用事からこの収録現場まで数駅分を歩いてきましたからね(笑)。節約を始めたころは意識的に切り詰めていましたけど、一定期間を過ぎると習慣化して、無理をしている感覚は皆無です。むしろ快感になっています。
ふゆこ:世間的には「節約=我慢」みたいなイメージがありますけど、それこそ、歯磨きのようにあたりまえのものであり、やらないと気持ち悪いものになっていますよね。
○3人の節約モチベーションの源泉になるもの
ふゆこ:節約があたりまえになっているといっても、八木さんもくらまさんも、その節約ぶりはかなりストイックだと思います。節約を徹底するためにやっていること、マインドはありますか?
八木:例えば、僕はウイスキーが好きなのですが、いますごく値段が上がっていますよね。国産ウイスキーとして人気の「山崎」や「白州」なんて、バーで飲んだら1杯2,000円近くします。ですから、「白州」の180ml瓶に業務用の安いウイスキーを夜のうちに入れておいて、次の日に仕事から帰ってくると「お、白州あるやん!」っていって飲むんです。
1本で6杯くらい飲めるので、1杯2,000円のバーに来たと思えば1万2,000円が毎日、「節約した」のではなく「儲かっている」という考え方です。ですから、毎日晩酌するので月30日計算で36万円、年間だと432万円も儲かって、将来的に累計1億円以上儲ける予定です。そういう気分でやっているから続くし、新しい節約アイデアが湧くのかもしれないですね。
ふゆこ:節約効果を報酬と考えて、「儲かったぞ!」って気分を上げていくのは大事ですよね。でも、我に返って気分が冷める瞬間はないですか?
八木:だから、ちゃんとやらないといけません。ウイスキーを詰め替えるとき、180ml瓶に入れ過ぎるときがあります。でも、新品のウイスキーボトルって水面の位置が一定じゃないですか。だから、それより入れ過ぎると「これ、俺が入れたやつやん……」って自分にバレて冷めてしまうので注意が必要です(笑)。ふゆこさんは、そういう「儲かった」っていう感覚はないですか?
ふゆこ:「儲かる」とは違うのですが、「つけ麺置き換え法」という考え方で節約しています。なにか衝動的に欲しくなってお金を使いそうになったら、「このお金でつけ麺が何杯食べられる?」と考えると我慢できるくらい、つけ麺が好きなんです。報酬に置き換えるという意味では同じかもしれませんね。
くらま:僕は明確に「節約は副業だ」と思っているので、八木さんと同じ感覚でびっくりしました。例えば、誕生日にファミレスに行くと、無料でパンケーキがもらえることがありますよね。それで、プレゼントも我慢してひとりでお祝いするんです。もし、ホールケーキでお祝いしていたら4,000円しますし、自分にプレゼントなんて買ったら3万円はかかるので、1日で数万円儲かるという計算です。
同じ考え方で、日々の食事も1日1食で栄養だけ押さえて簡素にすれば、普通の自炊より月に数万円は食費が儲かるし、外食と比べたらもっと儲かります。僕は今日、家を出る前にジャガイモ3個食べてきました。1日の活動に必要な成分は摂ったつもりなので、今日の食事はおしまいです。あとは、水を飲んで水分量を整えるくらい。食費は長期で見たら数百万円のポテンシャルがある節約ですから、稼ぐ気持ちでやっていますね。
八木:やるべきことを着々とやるって意味では、働くこととマインドは一緒ですよね。だから、くらまさんのいう「節約は副業だ」という感覚は、まさにそう思いますね。節約は、かなり地道な作業ですから……。僕は営業の仕事が多いので、頻繁にビジネスホテルに泊まります。そのたびに外食や生活必需品を購入しなくていいよう、面倒でも調味料や箱のティッシュなど必要なものを全部スーツケースに入れています。もちろんウイスキーも。あと、やっぱり節約は「楽しむ」ということも大事ですよ。
例えば、高級寿司店の出すネタの順序をネットで調べて、和紙を買ってきて「本日のコース 5万円」のお品書きを家でつくるんです。それと高級な割り箸、スマホにはお琴のBGMを入れて家族と回転寿司に行きます。お品書きどおりに注文して、妻と「たまにはこんな店もええなぁ」ってミニコントをしているわけです。やってみると、不思議なことになにもしないより美味しく感じるんですよ。気持ちひとつで満足感を高めることはできます。
○無理なく効率的な節約の仕組みが大切
くらま:節約で一番インパクトが大きいのは固定費の削減ですが、そのなかでも住宅費が大きいですよね。僕は会社員なので家賃補助が出て、月々5,000円で住めていることが大きいのですが、おふたりはなにか対策はされていますか?
八木:僕は、ロシアの「ダーチャスタイル」を参考にしています。ロシアのモスクワはかなり家賃が高騰しているので、働いている平日は狭い家を借りてコストを抑え、土日は田舎の菜園付きの別荘で伸び伸び過ごす二重生活を「ダーチャスタイル」っていうらしいんです。僕の場合は移動する仕事が多いので、家族は比較的住宅コストが安い大阪に住まわせて、東京に仕事用の小さいマンションを借りています。大阪の家は戸建てを買いましたが、東京で同じ条件を探すと価格が4倍します。住宅価格はかなり高騰しているので、東京に戸建てを買うより大阪のほうがかなりお得です。
ふゆこ:わたしは、田舎に住んでいるので3LDKで家賃6万5,000円に抑えることができています。東京で仕事があると新幹線で来るのですが、正直ちょっと疲れますね。だからといって東京で同じ条件の物件を借りると20万円以上もするので、いまの暮らしで満足しています。
くらま:全国的に見て、東京は所得も高いけど支出も多くて、可処分所得では全国最低レベルになっていますから、僕の家賃補助制度みたいなストロングポイントがないと、住むことが得策ではなくなっていますね。
八木:「お金がかからない仕組みや習慣をつくる」ってすごく大事です。住む場所もそうですし、趣味にしてもお金のかからないものにするとか工夫があるといいですよね。それができれば節約効果は高いので、食費とかお酒代とか、細かいところは節約しなくてもいいくらいです。
くらま:それでいうと、人間関係についても薄く広げることはやめています。飲み会とかお誕生会などに誘われても、角が立たないように断っています(苦笑)。
ふゆこ:わたしは親友からの誘い以外は、ほとんど行きません。お金がもったいないというのもありますが、行っても気疲れしてしまって翌日に寝込んだり、熱が出たりするので、そもそも人づきあいに向いてないんです。でも、八木さんは芸人ですし、後輩に奢ったりする慣習がありますよね?
八木:僕は軍団を率いているわけでもないですし、後輩に奢るといってもランチくらいですよ。そもそも誰かと飲みに行くのがあまり好きじゃなくて、お茶するほうが好きなのです。だから、おふたりのように親密な人とだけ時間とお金を使いたいというのは、僕もよくわかりますよ。無理はしないほうがいい。
くらま:ストレスがあると、それが浪費の原因になりますからね。今日は、近しい価値観の方とお話できてよかったです。八木さんが女性だったら結婚したいくらいです(笑)。
八木:ただ僕は、家族に節約を強要していません。むしろ、僕が節約しても奥さんがクレーンゲームで浪費しています(笑)。でも、それでいいと考えています。節約もあまり思い詰めてやらないほうがいいですからね。
ふゆこ:同じ節約でも、違った考え方に触れられて新鮮でした。八木さん、くらまさん、ありがとうございました。
構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 文/吉田大悟 写真/石塚雅人
八木真澄
1994年に高校の柔道部の後輩だった高橋茂雄とお笑いコンビ「サバンナ」を結成。芸人としてメディアや舞台で活躍する一方、節約家・投資家としての顔を持ち、2024年10月に1級ファイナンシャル・プランニング技能士 に合格。各メディアで金融知識を伝える他、著書に『年収300万円で心の大富豪』、2025年3月には共著で『FP1級取得!サバンナ八木流 お金のガチを教えます』を発刊予定(いずれもKADOKAWA)。
くらま
ファイナンシャルプランナーの資格を有する会社員。東京都内でひとり暮らしをしながら徹底的な節約・倹約生活を送り、社会人1年目で300万円以上あった奨学金をほぼ完済。週5で働きながら貯蓄術やお金のノウハウを発信するYouTubeチャンネル「倹者の流儀」を2018年より配信し、節約系ユーチューバーの先駆けとして知られる。著書に『すごい貯蓄 最速で1,000万円貯めてFIREも目指せる!』(KADOKAWA)がある。
節約オタクふゆこ
理系の大学院を修了後に電子系メーカーに就職。1カ月約10万円で生活して年間300万円を貯金し、20代で資産1,000万円を達成。現在はフリーランスとして活躍中。YouTubeチャンネル「節約オタクふゆこ」では、日常的な節約法や投資について初心者向けに配信し、チャンネル登録者数は60万人を超える(2025年2月時点)。著書に『貯金はこれでつくれます 本当にお金が増える46のコツ』(アスコム)がある。
※この記事はマイナビ健康経営が制作するYouTube番組「Bring.」で配信された動画の内容を抜粋し、再編集したものです。

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