星野リゾートの新ブランド「LUCY」が切り開く山岳観光の可能性とは?

2025年4月23日(水)9時50分 マイナビニュース


星野リゾートは4月22日、オンラインプレス発表会を開催し、新ブランドの展開や新規開業施設に関する情報を発表。その目玉となったのが、新たに始動する山岳ホテルブランド「LUCY(ルーシー)」だ。
星野リゾート代表の星野佳路氏は「私たちは山をもう一度、観光の拠点として現代の観光客に合うようなかたちにコンテンツを書き直す、"山のリブランド"をしていきます」と主張。
「登山客以外にも、山岳観光を選択肢の中に入れていただく。これが新ブランド『ルーシー』のミッションになります」と訴えた。
■ルーシーのコンセプトは「心揺さぶる山ホテル」
星野リゾートの新ブランドとして加わった「LUCY(ルーシー)」。これまで登山者向けに特化していた山小屋に代わり、より幅広い層が気軽に山の自然を楽しめる"山のホテル"の提供を目指す。
ブランドコンセプトは「心揺さぶる山ホテル」。山ならではの多様な風景や動植物との出会いを大切にしつつ、快適な滞在をサポートする"6つの機能"を備える。
具体的には、1. プライベートな寝室、2. いつもの温水洗浄トイレ、3. シャワー&パウダールーム、4. 肉、魚、玉子のぜいたくごはん、5. ホテル内に設置されるコンビニ、6. 充電‧Wi-Fi 無制限。いずれも平地でこそ常設されていて当たり前だが、従来の山小屋には欠けていた要素だ。
「ルーシー」の第1号施設として発表されたのが、福島県、群馬県、新潟県、栃木県の4県にまたがる尾瀬エリアに開業予定の「ルーシー尾瀬鳩待」(ホテルの場所は群馬県・片品村)。1名の利用から最大4名でのグループ利用まで、ニーズに合わせた3タイプの客室を用意する。
総支配人の福井ゆう子氏は、「尾瀬は東京から約3時間のアクセス。日本最大の高層湿原『尾瀬ヶ原』をはじめとする豊かな自然が広がっており、山デビューにぴったりの場所」とその魅力について語った。
尾瀬エリアでは環境保全の観点からマイカーの乗り入れが規制されており、観光客は専用バスでアクセスする必要があるものの、そのぶん自然が手つかずの状態で保たれている。
福井氏によれば、春には水芭蕉、夏にはニッコウキスゲなど四季折々の高山植物を楽しむことができ、周囲には百名山の「燧ヶ岳(ひうちがたけ)」や「至仏山(しぶつさん)」もあるため、初心者から上級者まで何度訪れても新たな発見がある場所だという。
■「山のホテル」はオーバーツーリズムの受け皿となるか
自然観光、とりわけ山岳エリアの再活性化を目的としたルーシーは、従来の山小屋の枠を超えた、より幅広い層に開かれた山のホテルとして展開する。その背景には、「オーバーツーリズム」の問題も潜んでいる。
星野代表は「日本のインバウンド観光は一部地域にかたよっており、全体の70%が上位5都道府県に集中している」と指摘。これがオーバーツーリズム問題を生み出している一方で、多くの地域が観光客を呼び込めていない現状に警鐘を鳴らす。
その解決の鍵として、自然観光の強化が不可欠であるとし、特に国立公園や山岳地帯での観光資源の開発に注力する必要性を強調した。
従来の山岳観光が主に本格的な登山者に限定されていたのに対し、「ルーシー」は自然を気軽に楽しみたい層にも開かれたホテル機能を備え、新たな山岳観光の選択肢を提供する。
星野代表はアメリカの国立公園におけるホテル事例を引き合いに出し、「私もヨセミテのアワニーホテルやイエローストーンのオールド フェイスフル インも見てきましたが、集客の数が違います」と、世界中から観光客が集まっている現状を報告。
「登山客以外にも山岳観光を選択肢の中に入れていただくというのが、この新ブランドのミッションになります」と訴え、日本でも海外のような宿泊体験の導入が必要だと語った。
現在、星野リゾートは「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO(おも)」「BEB(ベブ)」と5つのサブブランドを展開しているが、「サブブランドを増やすには、明確に異なる顧客ニーズと機能が必要」と星野代表は述べ、ルーシーがその条件を満たした意義ある新ブランドであると語った。
■「リゾナーレ下関」開業決定! OMOや界にも新展開が
星野リゾートが手がけるサブブランド「リゾナーレ」からも新たに「リゾナーレ下関」が登場する。山口県下関市の関門海峡を望む「アルカポートエリア」に、12月11日に開業を予定している。コンセプトには「海峡のデザイナーズホテル」を掲げる。
下関といえば、フグ料理や唐戸市場、関門海峡のダイナミックな船の往来など、多彩な魅力を持つ街として有名。リゾナーレ下関の総支配人・鈴木良隆氏によると、1日に500隻以上の船が行き交う海峡の迫力を間近で楽しめるロケーションが用意されているという。
「とにかく圧巻の景色が見られます。ホテルの近くには、鮮魚が集まる唐戸市場や、フグの仲間が100種類も見られる水族館などもあって、お子様との旅先としてもおすすめ。リゾナーレの運営だけでなく、下関市と一緒に地域の魅力を高めることを目的としたマスタープランに取り組み、日本を代表するウォーターフロントシティになることを目指します」(鈴木氏)
これまで、リゾナーレは軽井沢や八ヶ岳、那須、熱海、トマム(北海道)など、自然に囲まれたロケーションで展開してきたが、初の九州・山口エリア進出となる。
今回の発表会では、都市型観光ホテルブランド「OMO(オモ)」と、温泉旅館ブランド「界」に関する情報も公開された。
OMOブランドからは、2026年春に「OMO7横浜」が開業。日本の近代建築を支えた建築家、村野藤吾氏が手掛けた横浜市旧市庁舎を「レガシーホテル」として活用し、新旧の横浜が交差する独自の空間体験を提供するという。
また、横浜市内にはもうひとつのOMO、「OMO5横浜馬車道」も2025〜26年冬に開業予定。高層ビルの46〜51階に位置し、みなとみらいの絶景を望む特別なロケーションが魅力となっている。
一方、温泉旅館「界」ブランドでは2026年春、群馬県草津温泉に「界 草津」の開業が決定。コンセプトは「トンネルがつなぐ杜の湯宿と温泉街」で、施設から温泉街へ簡単にアクセスできる"宿泊者専用トンネル"も建設するという。
新ブランド発表、新施設オープンと次々に新たな動きを見せる星野リゾート。今後も同社から目が離せない。
猿川佑 さるかわゆう この著者の記事一覧はこちら

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