アトランティスに関係する人物像を発見か? 失われた古代王国「タルテッソス」とは?

2023年4月27日(木)11時0分 tocana

 超古代文明“アトランティス”は実在したのか——。長らく論争が続くこの謎の解明に一歩近づく発見がもたらされたようだ。


タルテッソスの遺跡から人物像を発掘

 古代ギリシアの哲学者、プラトン(B.C.427-B.C.347)がその著書で言及した“アトランティス”は大西洋に沈んだとされる神話上の古代都市である。アトランティスが滅亡したのはプラトンの時代の9000年前といわれ、現在から1万1000年以上も前の話となる。


 高度な文明を誇り栄華を極めたアトランティスだったが、次第に国内に堕落と腐敗を招き、周囲を敵対的に飲み込もうとする野心が神々の怒りを買い滅亡に追い込まれ、大地震と大洪水によって島は大西洋に沈んだとされている。


 文明国家の栄枯盛衰や盛者必衰を説明するための“たとえ話”の中で登場するという意味合いもありそうなアトランティスだが、はたして本当に実在した国家だったのか。


“実在派”の一部の見解では、2500年ほど前に歴史の表舞台から姿を消した古代王国「タルテッソス(Tartessos)」がアトランティスであったか、あるいはアトランティスの末裔であった可能性を指摘している。


 スペイン・グアレーニャにある「カサス・デル・トゥルヌエロ(Casas del Turunuelo)」は西地中海の内陸で最も保存状態の良い古代遺跡であるといわれ多くの考古学者が訪れているのだが、ここで先日、人間の顔を表現した5つのレリーフが発見された。これらのレリーフが作られた時期はなんと紀元前5〜4世紀であるという。そのような遥か大昔にこのレリーフを作ったのはいったいどんな人々なのか。


 この古代遺跡はかつてまさにこの地で栄えた古代文明「タルテッソス(Tartessos)」によって建設されたものであるといわれている。タルテッソスは、約3000年前にイベリア半島南部に定住した古代文明で、長らく栄華華を誇っていた。


 紀元前4世紀の古代ギリシアの歴史家、エポロス(B.C.400-B.C.337)はこのタルテッソスを「非常に繁栄した市場であり、多くのスズ(錫)が川で運ばれ、ケルトの土地から金と銅が運ばれた」と 説明している。冶金とスズ、金、銅 の取引で大きな富を得て繁栄していた国家であったのだ。


 まさにその繁栄を物語っているのがこのカサス・デル・トゥルヌエロで、これまでにもここで数多くの金銀をふんだんに用いた工芸品などが発掘されている。


 そして今回、ここで紀元前5世紀の5つの石の胸像が発見され、いずれも巨大で精巧なイヤリングで飾られており、これはタルテッソスの典型的な金細工品であるということだ。


 スペイン国立研究評議会(CSIC)の研究チームによると、最も保存状態の良い2つのレリーフは神殿の女神を表現したものであり、もう1つは兜をかぶった戦士である可能性があるということだ。



■タルテッソスはアトランティスなのか?

 今回の発見はこれまでの理解を覆すものでもあった。カサス・デル・トゥルヌエロで発見された初めての人物像であったからである。


 CSICのスポークスマンであるエリカ・ロペス氏は「新しい発見の珍しい点は、人間の顔を表現していることです」と声明の中で述べている。


 これまでタルテッソスの古代遺跡からは人物像や人物を表現したものは発見されてこなかったことからこの古代文明は偶像崇拝を禁じた「反偶像主義(アニコニズム)」に基づく文明であったと考えられてきたのだが、今回の発見によってそれが見直されることになったのだ。


「この並外れた発見は、動物や植物のモチーフ、またはベティロ(聖なる石)を通じて神性を表現するアニコニックな文化と伝統的に考えられてきたタルテッソスの人々の解釈における重大なパラダイムシフトになります」(ロペス氏)


 一説ではタルテッソスは紀元前9世紀にもさかのぼるといわれている。独特の文字と華麗な金属工芸品で知られていたタルテッソスは、西地中海の古ヒスパニック系とフェニキア系の両方のグループの子孫である可能性も高い。


 しかし栄華を極めたタルテッソスはなぜか2500年ほど前に消滅した。その時期に遺跡が意図的に焼き払われた形跡もあるという。


 一部の専門家は、鉱業と金属加工業の崩壊がタルテッソスの経済に致命的な打撃を与えたと推測している。


 また別の専門家は、大地震と大津波がタルテッソスに壊滅的な被害をもたらし、残念ながら文明を復興させることができなかったと示唆している。


 そこで想起されてくるのが同じく大地震と大津波で大西洋に沈んだとされている“アトランティス”である。一部の研究者はタルテッソスがアトランティス伝説の起源である可能性があると示唆しているのだ。


 いずれにしてもカサス・デル・トゥルヌエロが発見されたのは2015年とまだ最近のことであり、現時点では遺跡の一部しか調査されていない。今後の調査と研究によって、姿を消した謎の古代文明・タルテッソスへの理解は着実に深まっていくのだろう。



参考:「Daily Mail」ほか

tocana

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