“月の眼”を持つ幻の部族「ムーンアイドピープル」の謎 ― 真っ白な肌と髪、大きな青い目… アルビノ族か、エイリアンか

2024年5月3日(金)21時0分 tocana

 北アメリカ大陸には、15世紀のヨーロッパ人による「発見」のずっと前から多くの人々が居住していた。だが、そんな彼らの間にも「先住民」の伝説が存在するという。チェロキー族が「月の眼を持つ人々(The Moon-Eyed People)」と呼び語り継いだ幻の部族とは、一体どのような人々だったのか。


■月の目を持つ人々


 現在の米国東部ノースカロライナ州は、ヨーロッパ人による植民地化以前はチェロキー族の人々が暮らす土地であった。だがチェロキー族の伝承によると、彼らがやってくる前からこの土地に居住していた部族がいた。彼らはアパラチア山脈の深い森の中に住み、石膏像のように真っ白な肌と髪、大きな青い目を持ち、顔にはひげを生やしていたという。小さな体をした夜行性の部族で、昼間は太陽を避けるように洞窟に隠れ、日が沈んでから森の中を歩き回っていた。太陽光より月光の下で活動するのに適した青い目を持っていたことから、チェロキー族は彼らを「月の目を持つ人々(The Moon-Eyed People)」と呼んだ。


 ムーンアイドピープルは長くその土地を支配していたが、やってきたチェロキー族との戦いに負けて追放されたという。伝承によれば、チェロキー族は彼らの洞窟の前で朝が来るのを待ち、太陽で目が見えなくなったところを攻めたとされる。同様の伝承は現在のテネシー州やジョージア州周辺に居住していたクリーク族にも残っているそうだ。


 この不思議な伝承を裏付けるようにノースカロライナ州やジョージア州、アラバマ州などアパラチア山脈の麓には古い遺跡が残っている。特に有名なのがジョージア州のフォートマウンテン国立公園に残る砦の遺跡で、西暦500年頃のものとみられている。


 


■謎の部族の正体は?


 1797年の医師で学者のベンジャミン・スミス・バートンが著書の中で取り上げて以来、ムーンアイドピープルは一般にも知られるようになった。バートンはこの部族を、12世紀にアメリカ大陸に入植したと伝説に語られるイギリス・ウェールズのマドック王子の末裔と考えた。そして、チェロキー族に追い出された後はパナマの先住民クナ族の祖となったのではと推測した。クナ族には現在もアルビノ(先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患)の人々が多い。アルビノの白い肌や髪の毛、太陽光に弱いといった特徴は、確かに伝承に語られるムーンアイドピープルのものとも一致する。


 ムーンアイドピープルとマドック王子の物語は、その後広く流布した。アメリカにいち早くやって来たウェールズの王子は今となってはただの伝承に過ぎないのだが、その当時は多くの人々がウェールズ人の血を引く先住民の痕跡を探していた。ネイティブアメリカンたちよりも早くヨーロッパ人がアメリカ大陸に入植していたという「物語」は、当時の白人たちにとって入植や迫害を正当化するものとして好まれたという指摘もある。


 また、ノースカロライナ州マーフィーでは、ムーンアイドピープルのものといわれる石像が見つかっている。二人の人物がくっついた形をした石像で、その顔には目・鼻・口などが刻まれているというシンプルなものだ。伝承に残るムーンアイドピープルの特徴や、この石像の人間離れした容貌から、彼らはエイリアンだったと主張する人々もいる。


 ウェールズの王子の末裔か、パナマのクナ族の祖先か、はたまたエイリアンなのか。その正体が何であれ、かつてアパラチア山脈に住んでいた謎の人々は、これからも我々の興味を引き続けるだろう。


参考:「ati」、「North Caroline Ghost Stories」、ほか


 


※当記事は2018年の記事を再編集して掲載しています。

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