珍しい歯の特徴を持つ、新種のジュラ紀の哺乳類の化石が発見される

2025年5月8日(木)20時0分 カラパイア


珍しい歯の特徴を持つ、新たに発見された新種の哺乳類/Credit: Victor Carvalho in Carvalho et al. 2025


 ポルトガル中西部にあるウルサ採石場で、歯の生え変わり方がきわめて珍しいジュラ紀の哺乳類が新たに発見されたそうだ。


 「Cambelodon torreensis(カンベロドン・トレエンシス)」と命名された「多丘歯目(たきゅうしもく)」の新種は、なんと子供の歯が生え変わるとき、奥歯から前歯に向かって飛び飛びに抜けていく。


 現生の哺乳類は基本的に前歯から奥歯へ向かって順番に抜けていく。だから、それとは逆の、しかも飛び飛びの生え変わりパターンはとびきりレアだ。


1億年にわたり繁栄した哺乳類の成功例


 カンベロドンが分類される多丘歯目[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%9A%E4%B8%98%E6%AD%AF%E7%9B%AE]はすでに絶滅しているが、1億年を超えて繁栄し続け、哺乳類としては大成功したグループだ。


 ジュラ紀(約2億130万年前から約1億4550万年前)中期に出現した彼らは白亜紀の大量絶滅を生き残った。だが、3500万年前の漸新世前期に絶滅した。


 ポルトガル、トーレス・ヴェドラス自然史協会のヴィクター・カルヴァーリョ氏は、小さなネズミからビーバーくらいまでと多種多様なサイズを持つこのグループについて次のように説明[https://phys.org/news/2025-05-jurassic-mammalian-fossil-unusual-tooth.html]する。


多丘歯目は、およそ1億年にわたりヨーロッパ・アジア・オセアニア・北アメリカなど複数の大陸に広がった、とびきり大成功した哺乳類の目です


長い時間をかけて、その歯列は大きな形態的多様化を遂げており、その適応の様子が化石からうかがえます(ヴィクター・カルヴァーリョ氏)


特徴的な歯から新種であることが判明


 ヨーロッパの多丘歯目の化石産地としては、ポルトガルのギマロタ炭鉱が有名で、10種以上が発見されている。


 だが今回の新種の化石が発掘されたのは、ポルトガル中西部にある「ウルサ採石場」のジュラ紀チトニアン(1億5210万〜1億4500万年前)の地層からだ。


 この地層から複数の化石が発見されているが、その中の1つである下アゴの片側をこれまでに発見された化石と比較したところ、その歯が特徴的なものであることが判明した。


 それは「大きな三角形の葉状構造」「第三小臼歯および第四小臼歯にある5つの突起」「第四小臼歯の基部にある9つの歯尖」といったもので、これらの特徴から新種であることが判明し、「Cambelodon torreensis(カンベロドン・トレエンシス)」と命名された。


 またカンベロドンが「ピンヘイロドン科(pinheirodontid[https://en.wikipedia.org/wiki/Pinheirodontidae])」の仲間であることも特定されている。


 長きにわたり繁栄した多丘歯目だが、この科は詳しい進化の経緯や位置付けがほとんどわかっていないひときわ謎めいたグループだ。



Cambelodon torreensis(カンベロドン・トレエンシス)の化石 A) 顎骨の化石の外側(側面)と内側(内側面)、B)まだ生え切っていない切歯を示す3Dモデル。スケールバーは2mm/Credit: Carvalho et al. 2025


歯の生え変わりがとびぬけてユニーク


 とびきりユニークだったのは、カンベロドンの歯の生え方だ。その化石は歯が生え変わる途中の子供のものだったので、生え変わりパターンを調べることができた。


 現存する哺乳類は基本的にどれも同じパターンで歯が生え変わる。まず前歯から抜け始め、それから奥へ向かって1本1本順番に抜けていく。これはほとんどの多丘歯目でも言えることだ。


 ところがカンベロドンは、奥歯から前歯へ向かって、1本おきに抜けていくのだ。この奥から前へ向かって非連続的に抜けるパターンは、同じく多丘歯目に分類される「パウルコファティア科(Paulchoffatiidae[https://en.wikipedia.org/wiki/Paulchoffatiidae])」でも確認されている。


 だが多丘歯目ならではの特徴というわけではない。


 カルヴァーリョ氏によると、多丘歯目の初期グループの研究からは、むしろ派生的な特徴だろうことが示唆されているという。


白亜紀後期や古第三紀初期の多丘歯目にこのパターンが見られないことから、長期的には適応レベルが低いか、環境や選択圧の変化により不要になった一時的な特徴だったのかもしれません(カルヴァーリョ氏)


 研究チームは今後のテーマとして、詳しいことがほとんどわかっていないピンヘイロドン科を包括的に調べたいと考えている。


 新たな化石が発見されたことで、特に歯の生え変わりパターンなどについてさらなる洞察が得られると期待できるそうだ。


 この研究は『Papers in Palaeontology[https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/spp2.70012]』(2025年4月10日付)に掲載された。


References: Cambelodon torreensis, a new pinheirodontid multituberculate from the Upper Jurassic of western Portugal[https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/spp2.70012] / New Jurassic mammalian fossil discovered with an unusual tooth replacement pattern[https://phys.org/news/2025-05-jurassic-mammalian-fossil-unusual-tooth.html]

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