大阪・関西万博でグリコが老化予防の最新研究を紹介 ― 「お米のキャラメル」も配布予定
2025年5月8日(木)11時59分 マイナビニュース
シグネチャーパビリオン「EARTH MART」シルバーパートナー、「大阪ヘルスケアパビリオン」プレミアムパートナーとして、2025年大阪・関西万博に協賛しているGlicoグループ。
「大阪ヘルスケアパビリオン」では江崎グリコが研究を進める“ヘルシーエイジング”に関する展示を行なっているほか、5月末からは「EARTH MART」で「お米のキャラメル」の配布を予定している。
4月30日には万博会場内の「EXPOサロン」で記者説明会が開催され、「細胞ケア」に関する特許取得に至った研究の詳細や「お米のキャラメル」の開発経緯などが紹介された。
○■大阪・関西万博に出展するGlicoグループの歩み
江崎グリコは今年で創立103年目を迎える大手菓子メーカー。創業者・江崎利一が牡蠣の煮汁に含まれる栄養素「グリコーゲン」に着目し、これを使った栄養菓子「グリコ」を1922年に発売したことが創業のきっかとなっている。
「食品を通じて人々の健康を支えたいという創業者の想いが、栄養菓子『グリコ』には込められており、パッケージには“ゴールインマーク”が採用されました。このマークは大阪・道頓堀に掲げられたグリコサインでもお馴染みです」と、江崎グリコの大阪・関西万博プロジェクトマネージャーの三木依子氏。大阪・関西万博への協賛・出展の背景として「健やかな毎日、豊かな人生」をパーパスに掲げる同社のこれまでの歩みを紹介した。
「創業以来の想いを体現した商品ブランドには、適正糖質生活を応援する『SUNAO』、免疫に配慮した乳酸菌入りの『ビスコ』、腸内環境を整えるビフィズス菌入りヨーグルト『BifiX』。ビタミンEや食物繊維を手軽に摂取できる『アーモンド効果』などがあります。グローバルブランド『ポッキー』でも食物繊維や全粒粉をビスケット部分に配合するなど、健康的で工夫を凝らした商品を提供してきました」(三木氏)
現在、Glicoグループは欧州や東アジア・東南アジア、北米など世界18拠点で、各地域の生活者ニーズに応じて、日本発の製品を最適化しながら事業を展開。大阪・関西万博の「命輝く未来社会のデザイン」というテーマに共感し、万博への協賛を決定したという。
地元大阪が「REBORN」をテーマに、iPS細胞や再生医療の可能性を発信する「大阪ヘルスケアパビリオン」で、Glicoグループは「細胞ケア研究所」ブースを出展している。
「『細胞ケア』とは老化細胞の除去など、細胞レベルで健康を維持・促進するという新たな考え方です。当社では“ヘルシーエイジング”の実現を目指して研究を進めており、ブースではディスプレイやグラフィックなどを使って、細胞ケアの仕組みなどをわかりやすく解説しています」(三木氏)
○■「細胞ケア」で特許取得、ネムノキエキスが老化防止に?
続いて登壇した基礎研究統括の田辺創一氏はGlicoグループの研究戦略について説明。パーパス実現に向けた長期経営構想のもと、「研究価値」「素材追求」「食文化創造」という三つの起点から研究を進めているという。
「『研究価値起点』では、発育・栄養の最適化やヘルシーエイジングなど5つを重点領域に定め、商品化につながる幅広い研究テーマを扱っています。第二の『素材追求起点』ではアーモンドやカカオと言った重点素材を活かして健康とおいしさを両立する、高品質素材を追求。第三の『食文化創造起点』では発酵技術やダシの活用、冷蔵・冷凍といった温度帯別の製造加工技術によっておいしさを生み出す研究を進めています」(田辺氏)
「研究価値起点」のヘルシーエイジング領域に位置づけられる「細胞ケア」研究では、ネムノキが老化細胞を除去することを世界で初めて実証。今年4月1日にはネムノキを老化細胞除去剤として特許登録した。
「細胞ケア」研究の具体的な内容などについて、基礎研究室 健康長寿ユニットの長野太輝氏が解説した。
「近年の研究では“老化の12の特徴”が明らかになっており、その多く細胞レベルで起こる変化で、それぞれが互いに影響し合うことで老化が進行することがわかっています。とくに『細胞老化』は他の老化要因にも作用することから、私たちは細胞老化を研究の主要な標的として設定しました」(長野氏)
老化細胞は加齢や紫外線、活性酸素といったストレスによりDNAが損傷して、細胞分裂が止まり、炎症性のたんぱく質を分泌するようになった細胞のこと。加齢とともに老化細胞の出現が増え、なおかつ老化細胞を排除する免疫機能が低下することから、老化細胞が体内で蓄積して老化が進行するという。
今回の研究では老化細胞を選択的に除去する素材を探索するため、ヒト由来の正常細胞を用いて人工的に老化細胞を作成。約6,000種類の天然素材を用いて評価を行ったという。
「イランからアジアを中心に分布するネムノキは、日本や中国で古来より花や皮がお茶として利用されてきた落葉高木です。本実験では、ネムノキエキスを添加して52時間後に老化細胞が取り除かれる様子がタイムラプス観察で確認され、培養環境で老化細胞だけが選択的に減少しました」(長野氏)
「また、正常細胞との比較でネムノキは9.8倍という効率で老化細胞を除去できるという結果を得ており、これは老化細胞除去作用が知られているケルセチン(約1.1倍)と比べても非常に高い効果を示しています」(長野氏)
老化細胞を除去することで老化の進行を抑制する効果などが期待されるネムノキ。今後はヒト試験などを通じて、ネムノキの老化細胞除去機能をより詳細に検証していく予定だという。
○■乳成分を使わない「お米のキャラメル」を新開発
シグネチャーパビリオン「EARTH MART」では、食といのちの循環に触れ、未来へのヒントと出会う空想のスーパーマーケットをコンセプトに展示が実施されている。
同パビリオンでは、食の未来をより良くするために世界に共有したい日本発の25の食として「EARTH FOODS 25」が設定されており、そのひとつに日本人の主食である「米(米粉)」が挙げられた。
Glicoグループでは創業以来培ってきたキャラメル製造の技術と、お米由来の素材を使った「お米のキャラメル」を新たに開発。5月末から「EARTH MART」の入館者に配布する。
栄養菓子・補食事業部商品開発部ビスケット商品開発グループの町田貴義氏は、「通常使用される乳成分を使わず、お米由来の原料と砂糖のみでつくられているキャラメルです。お米のやさしい味わいと、地球の未来への想いを一粒に込めたお菓子となっています」と説明した。
「お米のキャラメル」の原材料は米飴、米粉、米タンパク、米油など。砂糖を除きすべてお米由来となっており、乳成分などのアレルゲンを含まないため、より多くの人が安心して楽しめるキャラメルに仕上がったという。
「シンプルな素材にこだわり、お米の特性を最大限に引き出すことで、魅力的な風味と食感を追求しました。乳成分や添加物を使わずにキャラメルを成形・安定化させることは大きな挑戦でしたが、試行錯誤を重ねることで、香りと味わいが口の中にゆっくりと広がる新しいキャラメルが完成しました」(町田氏)
万博のための特別なお菓子として開発された「お米のキャラメル」の配布期間は、2025年大阪・関西万博の閉幕日である10月13日までの予定。なお、商品化の予定は現在ないとのことだ。
伊藤綾 いとうりょう 1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催 @tsuitachiii この著者の記事一覧はこちら