人間ドックは80歳過ぎたら“卒業”?いくつまで受診できる?

2025年5月8日(木)15時0分 大手小町(読売新聞)

病気の予防や早期発見のため、定期的に健康診断やがん検診、人間ドックを受けることはとても大切だと言われます。しかし、超高齢化社会となった今、何歳まで受ければいいのか、迷うケースもあるようです。読売新聞のユーザー投稿サイト「発言小町」には、90歳の母親を人間ドック受診に連れて行ったら、医師に「80歳過ぎたら検診は卒業していい。もう十分に生きたじゃないですか」と言われたという投稿がありました。

「老人が人間ドック受診して言われた事(そういうものでしょうか)」というタイトルで投稿してきたのは、トピ主「もう行かない」さん。ふだん離れて暮らしている90歳の母親は、健康に見えるものの、最近は気弱になって不安を口にするため、一緒に人間ドックを受診することにしました。受診した結果、母親には何の異常もなし。

写真はイメージです

ところが、担当医は最後の説明でいきなり「私は『80歳過ぎたら、がん検診は卒業していい』と伝えています。検査できない項目もあるし、初期では見つからないものもあるから」と切り出したのです。さらに担当医は「人生100年というけれど、医師からしたらそんなのウソですよ。全人口に対する100歳の割合のなんと少ないことか。90歳まで十分生きたじゃないですか。この先、近いうちに大きな病気にかかる可能性がとても高いです。変に検査したり、治療したりしても副作用でふらついて転倒し入院……入院することで認知症が出ます」と説明したそう。

母親が最近やせたことが気になって受診したと担当医に告げると、「今回の結果の中では異常なさそうなので、ストレスはどうですか」と質問されたため、「ありますね」とトピ主さんが答えると、「それなら(うつ)かなあ。鬱も薬で気分を上げることはできるけど、高齢者には副作用が心配だしなあ……」と言うばかり。

そうしたやり取りを静かに聞いている母親の気持ちを思うと、その場で文句の一つも言えなかったというトピ主さん。「要は、『検診して悪いところが判明したって何もできないから無駄。これからまもなく死ぬ年なんだ』と言われたのだと受け止めました。最後の講評でそんなことを言うくらいなら、はじめから年齢制限でもして受け付けないでほしかった」と憤慨した気持ちを「発言小町」につづってきました。

この投稿には、約110件の反響(レス)が寄せられ、「びっくりマーク」が1100回以上、「エールマーク」が800回以上押されています。

「若い人だって人間ドックなんかやると1日でどっと疲れるのに、90歳に受けさせるなんて驚き」(「さくらなみき」さん)、「その医師の言い方は悪いけれど、実際にそうですよねとしか言いようがない」(「おばちゃん」さん)と、高齢の母親に人間ドックを受けさせたことを疑問視する人もいれば、「若い人や医師に『終わった人』みたいな扱いを受けるのは悲しいです」(「しだれ柳」さん)と医師の伝え方に疑問を投げかける人もいました。

写真はイメージです

高齢になれば体に変調をきたすのも致し方ありませんが、一方で、80代、90代になっても頑健な人も少なくないようです。

「hokutin」さんの父親は92歳。85歳で胃がんの手術を受け、その後は何事もなく過ごしていますが、90歳の検診の時に医療関係者から「もう90歳だし、胃カメラも危険だからな〜。出血したりするかも〜やめときましょうかね〜。万が一、なんか見つかっても治療します?」と聞かれました。それでも本人は「まだまだ大丈夫。治療も受けられるだけ元気あるわ」と言い張ったそうです。

「ぎんねこ」さんの祖母の場合は、85歳の時に大腸がんが見つかりました。「階段を下りる力があるなら、手術を受けたほうが良い」という医師の言葉で、開腹手術を受けたそう。「そのおかげか、98歳まで生きて大往生を遂げました」

「通りすがり」さんの90歳になる義父は、脊柱管狭窄(きょうさく)症で、医師から「本来ならば90過ぎなら手術はしないが、お義父さんは心身ともにお元気だからオペに耐えられるし、現在の痛みを取ることができる」と言われ、手術に踏み切りました。術後は車いすの生活になりましたが、痛みは取れ、数学の公式をすべて覚えているほど記憶力は鮮明なまま。囲碁も楽しむ義父の姿に「通りすがり」さんは「90歳だから、と考えるのではなく、(体の)具合によるのかと思います」と強調します。

超高齢化社会が進む中、がん検診や人間ドックは何歳まで受けられるのでしょうか。年齢だけで受診の可否を判断することは適切なのでしょうか。

簡単な質問に答えていくだけで関連する病気や対処法が調べられる症状検索アプリ「ユビー」を開発した「Ubie」(本社・東京)の共同代表取締役で医師の阿部吉倫さんに、この投稿を読んでもらいました。

「健康な状態で長生きしてほしいと、90歳の母親を人間ドックに連れてきた方の気持ちに寄り添えば、その医師の方の発言はやや配慮に欠けていたと思います」と阿部さんは指摘します。そのうえで、「人間ドックや健康診断に、特に年齢の上限が設けられているわけではありません。ただ、同じ80歳、90歳の高齢者でも、人によって健康状態は違います。だから、高齢になるほど、検査によって得られるメリットとデメリットについて、きちんと考えておく必要があります」と説明します。

例えば、大腸内視鏡検査は若い人だと健康診断で便潜血反応が陽性になった場合に、精密検査として鎮静剤を使用しつつ行われることが多いです。しかし、高齢者にとっては身体的な負担が大きくなる可能性があるので、事前に医師と相談し、健康状態や持病の有無を考慮した上で検査を受ける必要があります。また、造影剤を使用するCT検査も、腎臓に負担がかかるため、高齢者の場合は腎機能の低下に注意が必要です。

高齢になると、体の状態によってはできない検査もあること。さらに、病気が見つかって治療するとなれば、全身の状態を悪化させるリスクを侵してでも治療することを選ぶべきかどうか、難しい判断を迫られることが多いといいます。

阿部さんは「高齢者だけに限ったエビデンス(医学的証拠)が少ないのですが、高齢になればなるほど、個々の健康レベルに差が出やすくなります。生活習慣病の進行に伴う脳や心血管の疾患、がんのリスクが高いだけでなく、認知機能や身体機能の低下の進行がみられた場合、それらをどう評価し、適切な医療を選んでいくか。身近な人の問題だからこそ、そうした意識を持って健康診断や人間ドックを受けるようにした方がいい」とアドバイスしています。

(読売新聞メディア局 永原香代子)

【紹介したトピ】▽老人が人間ドック受診して言われた事(そういうものでしょうか)

プロフィル阿部 吉倫(あべ・よしのり)2015年東京大学医学部医学科卒。東京大学医学部付属病院、東京都健康長寿医療センターで初期研修を修了。血便を放置し48歳で亡くなった患者との出会いをきっかけに、データサイエンスの世界へ。2017年5月にUbie株式会社を共同創業し、症状検索アプリ「ユビー」などを開発。一連のサービス利用者は月間約1300万人に達している。2019年12月より日本救急医学会救急AI研究活性化特別委員会委員。

大手小町(読売新聞)

「人間ドック」をもっと詳しく

「人間ドック」のニュース

「人間ドック」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ