就活生のわが子と、どう向き合う? どう支える? 親も知っておきたい、令和の新卒就活事情 第1回 情報誌世代の親が知っておきたい、Web世代の就職・採用活動

2025年5月12日(月)6時11分 マイナビニュース


もう成人しているのだから……と思いつつ、わが子の就職活動に無関心ではいられないというのが多くの親の本音ではないでしょうか。とはいえ、何をどこまでサポートすべきか、そもそも介入していいのかなど、疑問や悩みは尽きないと思います。
そこで本シリーズでは、就職時期を間近に控えた子を持つ親の視点で、令和の新卒就活事情を解説。講師はリクナビ編集長や、リクルート就職みらい研究所所長を経て、現在はリクルートグループのインディードリクルートパートナーズのリサーチセンターで上席主任研究員を務める栗田貴祥氏です。
○新卒採用スケジュールのルールと実態
現在、新卒予定者の就職・採用活動スケジュールは、政府(内閣官房、文部科学省、厚生労働省、経済産業省)によって策定されています。2025年4月現在、2026(令和8)年度卒業・修了予定者(=2027年3月卒業予定者)の就職・採用活動日程ルールは原則以下の通りです。
広報活動開始:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降
正式な内定日:卒業・修了年度の10月1日以降
4年制大学の学生なら、3年次の3月1日から始まる企業の広報期間に興味のある会社にプレエントリーを行い、企業説明会などに参加して働きたい企業を絞り込んだら、選考を受けたい企業にエントリーシートを提出。
6月1日以降に書類選考や面接などを受け、10月1日に企業側から正式に内定が出されるという流れです。
ただし、すべての企業がこのスケジュールに則って採用活動を行っているわけではないということを、知っておく必要があると栗田氏は言います。
「政府が示している日程ルールはあくまでも原則で、企業の採用活動の実態は、多様化かつ早期化の傾向にあります。
事実、リクルート就職みらい研究所(2025年3月時点)の調査によると、2025年4月1日時点での、2026年3月卒業予定の大学生(大学院生除く)の就職内定率(内々定を含む)は61.6%。前年同月との差は+3.5ポイントで、この数値は、現在の就職活動スケジュールとなった2017年卒以降、過去最高です。
このように、政府が示している就職・採用活動日程と実態には乖離があります。ですから、志望する企業がどういうスケジュールで採用活動を行っているのかをあらかじめしっかり調べて、計画的に就職活動を進めていかなければなりません」
○現代の就活生を取り巻く環境
就活生を持つ親のうち、特に50代の方々は、自身が就職活動を行った当時の主な情報収集源は、就職情報誌だったと思います。対して、現代の就職活動は、情報収集はもちろん、資料請求、エントリー、会社説明会や面接まで、Web上で行われることが一般的です。
「今は、地域や従業員規模に関わらず、PCやWebを使いこなせることが前提の就職・採用活動が行われています。PCを用意する、Wi-Fi環境を整える、といった物的支援は、就活生を持つ親の役目の一つと言えます」と栗田氏は話します。
さらに、現代の就活生を取り巻く環境について見ていきましょう。
「リクルートワークス研究所が行った調査によると、2026年3月卒業の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は1.66倍でした。これはつまり、民間企業に就職を希望する学生1人あたり、1.66件分の求人があったということになります。
ただ、従業員規模別に見ると、300人未満企業では8.98倍なのに対し、5,000人以上企業では0.34倍。業種別では、流通業が8.77倍、建設業が8.55倍、製造業が2.33倍、一方で、サービス業は0.41倍、情報通信業は0.28倍、金融業は0.21倍でした。
企業の採用意欲は堅調であり、いわゆる学生優位の状況は今後も続く見込みですが、業種・業界、企業規模によって求人倍率に大きな差が出ていることも、注目しておくべきです」と栗田氏。
就職氷河期世代の親からすると、「今は売り手市場だから」と安心してしまいがちですが、志望先によっては、そう簡単に思い通りの結果を得られる状況ではないようです。
○企業が注目する、未来を支える汎用的な能力
今、日本の企業は、新卒一括採用でどんな人材を求めているのでしょうか。栗田氏はこう説明します。
「2022年に経済産業省が、未来を支える人材を育成・確保するための方向性と今後取組むべき具体策を、「未来人材ビジョン」として取りまとめています。それによると、次の社会を形づくる若い世代には、基礎能力や高度な専門知識だけでなく、『常識や前提にとらわれず、ゼロからイチを生み出す能力』『夢中を手放さず一つのことを掘り下げていく姿勢』『グローバルな社会課題を解決する意欲』『多様性を受容し他者と協働する能力』といった、根源的な意識・行動面に至る能力や姿勢が求められると示しています。
今、日本の企業が新卒人材に求めているのも、まさにこうした汎用的な能力です。専門的な知識やスキルに関しては、採用選考活動の時点では、大学卒業までに獲得してくれるだろうという期待値で見ているケースが多いです」
では、就活生はどんな姿勢で就職活動に臨むべきでしょうか。
「まずは大学生活を充実させること。企業が求めている汎用的な能力はその中で培われるからです。いろいろな人と関わりながらさまざまな経験を重ね、自分を知り、そこから今後の人生における自身のありたい姿を思い描いて、仕事や職場を探していくといいと思います。
とにかく内定を獲得したいとやみくもに就職活動を進めてもと、しんどくなるし、ミスマッチも起こりやすくなります。就職活動を、世の中を広く見渡せるまたとない機会と捉えて、焦らず、肩肘張らずに臨んでほしいですね」
一方で、就活生を持つ親は、どんなスタンスでいるべきでしょうか。栗田氏は、こうアドバイスします。
「基本的にはお子さん任せで、相談されたら答えるという向き合い方でいいと思います。一番ダメなのは、親世代の価値観を押しつけること。そういう点で、今の世の中の状況を掴んでおくこと、就職活動の実態を知っておくことは、大事なことだと思います」
次回は、就職活動の具体的なステップと、就活生が直面する課題について解説します。
鈴木友紀 すずきゆき 出版社、広告代理店でトータル13年間勤務し、出産を機にフリーに転身。ライターとしてWebや雑誌でインタビュー記事やタイアップ広告記事などを執筆するほか、企業の販促物の企画・制作ディレクションなども行う。 この著者の記事一覧はこちら

マイナビニュース

「就活」をもっと詳しく

「就活」のニュース

「就活」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ