年金月額10万円。「絵の仕事なんていまは誰も必要としてない」「明日の面接は警備の仕事」元イラストレーター・79歳男性のリアルなお金事情

2025年5月13日(火)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

人生100年時代といわれるなか、「年金だけで暮らせるのだろうか…」と経済的な不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。そのようななか、登録者数11万人超えの人気YouTubeチャンネル『梅子の年金トーク!』を運営している梅子さんは、人には聞けない年金額、年金生活のリアルを、街角の年金受給者にインタビューして発信しています。そこで今回は、『梅子の年金トーク!』を書籍化した著書『聞くのがこわい年金の話 ─ 年金、いくらですか?』より一部を抜粋してお届けします。

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もう限界です! イラストレーター79歳男性の懺悔


年齢:79歳
性別:男性
職業:無職
家族:妻と二人暮らし
以前の職業:イラストレーター
自宅:賃貸
年金月額:10万円

仕事はいまはしていないんですけど、若い頃はずっと絵を描く仕事をしていました。コマーシャル関係のイラストレーターです。新聞広告に描くことが多かったですね。昔は、家具の広告なんていうと、写真を載せるよりも、絵で描いたりしたものなんですよ。いまは、ほとんどないですよね。世の流れです。昔あった絵の仕事なんていまは誰も必要としてないですもんね。

生活が苦しくなってきたのでちょっと働かないとならないんですよ。実は明日も面接なんです。年金はもちろん受け取っているんですけど、それだけでは生活が厳しいので働かないとならないんですよ。いままで、足りないぶんは貯金を取り崩してきたんだけど、貯金のほうも厳しくなってきたんでね。体が動く間は少しでも働いて年金の足しになればと思ってるんです。

いろいろやったけど、イラストレーターが長かったですね。最初はデザイン会社に勤めてね。そこは、電通の仕事が多かったから、電通経由の仕事なんてよくやりました。ポスターとかね。それから仲間と自分たちの会社を立ち上げました。そこには3年くらいいたかな。

その後はフリーランスで、ずっとひとりでやってきたの。

それがね、リーマンショックで仕事がなくなってね。これはいかんと思って、急いで会社に勤めました。そのときには、けっこう年齢もいっていたし、絵を描く専門の仕事なんてなかったですよ。就けた仕事は、ホームセンターの警備員とか、交通の誘導員です。60代後半までは、そんな風に仕事を続けていましたね。

フリーのイラストレーターの期間が一番長いから、たくさんもらえる年金ではないんですよ。一カ月に10万円くらい。ずっと働いていた家内が同じくらいの年金をもらってるから、まぁなんとかやってきました。

「もし仕事が決まったら……」


家は賃貸です。マンション持ってたんですけど、生活が厳しくなって手放しました。コロナが流行るちょっと前ですね。いまはその部屋を借りて住んでいる状態です。家を売ればある程度まとまったお金が入ってくると思ってたんですけど、思ったような値段では売れなかったですね。住むのに便利でいい場所なんですけどね。

家内もいまは働いていません。実は、認知症が進んじゃってね。家でずっと私がみてきたんだけど、もう限界なんです。私がそばにいないと探しまくるんで、何もできないで、付きっ切りの生活です。

明日の面接が決まってくれたら、家内を施設に預けて働くことができます。認知症もレベル4だから、私ひとりでみるのはきつい時期に入ってるんです。もし仕事が決まったら、いま、ショートステイをお願いしているところでみてもらいたいと考えています。

明日の面接は警備の仕事です。もう80歳ですからね。そんな仕事しかないですよ。最初は絵の技術を生かした仕事を探したりしたけど、もうね。AI(人工知能)なんかもありますしね。仕事を奪われるじゃないですけど、なくなっていく職種って多いんじゃないですか。

ろくな政治家がいない国だけど、福祉は頑張ってもらってると思っています。それはありがたいです。上を見ればキリがないですしね。

インタビュー後のアフタートーク!


技術があるにもかかわらず、時代の変化やAIの普及により、経験を生かした仕事に就くことができないという話は、YouTubeを生業にしている身としては、他人ごとではないと思わされました。

認知症の奥さまを施設に預けるため、80歳を手前に働きに出なくてはならないという予想外の状況は、大変だろうと考えさせられました。時間の都合上、もっと話を聞くことはできませんでしたが、この方が働きに出て、夫婦別々に過ごすという方法しかないものだろうかと考えずにはいられません。


(写真提供:Photo AC)

このような方をみんなで支え合える社会になるといいなぁと思ってやみません。

仕事は、単に収入を得るためだけでなく、人間にとって生きる意味の一つでもあります。何よりも好きなことだったり、人生のすべてだったりする人もいるくらいです。にもかかわらず、今後多くの仕事がAIにとってかわられるという研究結果が出ています。

皆さんのお仕事は大丈夫ですか?


2015年に発表されたオックスフォード大学の調査結果によると、今後10年から20年の間に、いまは人間がやっている仕事の約半分が、AIにより失われる可能性があるということです。

人間よりAIのほうが向いていることは、分析と学習、言語、画像、音声の処理、同じ作業の繰り返しです。そのような特徴を鑑みて、今後消えてしまうといわれている仕事をいくつか挙げたいと思います。

・一般事務(年収300万円)
・銀行員(年収600万円)
・スーパー、コンビニ店員(年収370万円)
・警備員(年収300万円)
・工場勤務者(年収300万円)
・経理(年収350万円)
・プログラマー(年収450万円)
・タクシー運転手(年収350万円)
・配達員(年収400万円)
・倉庫作業員(年収350万円)

皆さんのお仕事は大丈夫ですか?

年金格言 受給後も歩みを止めず、働く力が生活を守る!

※本稿は、『聞くのがこわい年金の話 ─ 年金、いくらですか?』(興陽館)の一部を再編集したものです。

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