国内初の「献便施設」、食文化が腸内細菌の多様性生む山形・鶴岡に…難病治療薬開発へ

2025年5月16日(金)7時8分 読売新聞

オープンしたつるおか献便ルームをアピールする中原社長(4月24日、山形県鶴岡市覚岸寺で)

 健康な人の便に含まれる腸内細菌を集め、難病治療薬開発に活用する国内初の「献便けんべん施設」が山形県鶴岡市にオープンした。山海の幸に恵まれた食文化が腸内細菌の多様性を生んでいるといい、便の提供を募るのに最適な場所として同市が選ばれた。

 4月24日にオープンしたのは、医療・創薬を行う新興企業メタジェンセラピューティクスの運営する施設「つるおか献便ルーム」。同市覚岸寺の鶴岡サイエンスパーク内に設置された。

 同社によると、人の腸内には、約1000種類、40兆個以上の細菌が生息している。腸内細菌のバランスが乱れると、様々な病気の発症に影響する。すでに、健康な人の便に含まれる「腸内細菌そう」を疾患を持つ患者に移植し、腸内環境を変える治療法が確立されている。同社は、2020年に腸内細菌移植の研究を行っている順天堂大や慶応義塾大のチームらで創業。集めた腸内細菌で、難病の「潰瘍性大腸炎」の治療薬開発を行う。

 献便ルームは約70平方メートル。専用のトイレが3か所あり、提供者は便器内の専用ボックスに便をする。その便から腸内細菌を抽出した溶液を作り冷凍。川崎市内の施設に運び、創薬に活用する。同社の計画では、26年に日米で治験を始め、32年にカプセルの飲み薬として承認を目指す。

 鶴岡市は食物繊維が豊富に含まれている山菜などが各家庭で親しまれ、ユネスコ食文化創造都市に登録されている。こうした食生活は健康な腸内細菌の素地となることから、同社は献便ルームの設置場所として鶴岡を選んだという。

 献便を行う「腸内細菌ドナー(提供者)」の対象は、18〜65歳の庄内地域に住む健康な人。専用アプリで健康チェックを行い、荘内病院(同市)での問診や血液・便検査などを経て、医師が適格と判断すると提供者として認定される。一度不適格とされても、健康な食生活を続けることで適格となる可能性もあり、地域住民の健康意識向上も期待出来るとしている。

 提供者は献便の3日前から酒や生ものなどの飲食が禁じられ、3か月ごとに検査を受けて資格を更新する必要があるが、献便1回あたり3000〜5000円の協力金が準備されている。

 応募者のうち、提供者として適格と判断されるのは1割程度。25年は約100人の提供者の確保を目指す。

 同社の中原拓社長は「便由来の薬は国内にはなく、我々がトップランナーとして進めている。最高のうんちから、最高の薬が生まれると思い、この地を選んだ。ぜひ皆さまにご協力いただきたい」と話した。

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