東レとプーマが「サニブラウンを速くするウェア」を開発、セイコーGPに参戦する〝日本のエース〟に注目!

2024年5月18日(土)12時0分 JBpress

文・撮影=酒井政人 


東レとプーマが開発した特別なウェア

 米国・フロリダを拠点にしているスプリンターのサニブラウン・アブデル・ハキームが久しぶりに日本メディアの前に姿を現した。所属契約を結ぶ東レ、パートナーシップ契約を結ぶプーマと共同開発した新ウェアを発表したのだ。

 サニブラウンは2015年の世界ユース選手権で100mと200mを大会新で制した逸材。2017年のロンドン世界選手権200mは史上最年少(18歳5か月)で決勝進出を果たして、世界的にも注目を浴びた。2019年5月に100mで9秒台に突入すると、翌月には9秒97の日本記録(当時)を樹立。東京五輪はヘルニアによる腰痛に苦しんだが、一昨年のオレゴン世界選手権100mで日本人初の決勝に進出して7位入賞、昨年のブダペスト世界選手権100mは日本勢最高順位を更新する6位に入った。

 今回発表された「HSB DAWN コレクション」のテーマはズバリ、「サニブラウンを速くするウェア」だ。

 サニブラウンは昨年4月に東レとグローバルパートナーシップ契約を締結。今回の商品開発は昨夏にスタートしたという。10月には本人が滋賀・瀬田工場へ赴き、フロリダの気候を完全再現した人口気候室でサンプルを着用。その後、何度も意見を交換して、12月に完成したという。「自分の思っている以上でした」とサニブラウンが驚くほどのスピードで〝特別なウェア〟が出来上がった。

 その着心地も従来商品にはないものだった。熱、紫外線、透けから身体を守るオリジナルの素材を使用。なかでも速乾性は秀逸で、高度な〝汗処理機能〟を持っている。亜熱帯性気候のフロリダでも快適にトレーニングができるウェアのようだ。

 さらに超軽量で、動きやすさも抜群。「特にスタート練習など速い動きでは違いを感じます。従来のウェアも良かったんですけど、まだ上があるとは思いませんでした。ルーズなものが好きなので、このウェアは制限なくパフォーマンスを発揮できる。動きづらさを頭の片隅に置くこともなく、レースにも集中できそうです」とサニブラウンは笑顔で話していた。メンタル面でも効果がありそうだ。

 デザインにもサニブラウンの思いが込められている。胸元のグラデーションは「DAWN(夜明け)」をイメージ。サニブラウンが立ち上げた主催大会「DAWN GAMES」から連想されたものだ。なお新ユニフォームは5月19日に開催されるセイコーゴールデングランプリでの着用を予定している。

 アスリートが力を極限まで発揮できるウェアは上下各4パターンずつ展開。一部ウェアにはリサイクル素材を採用している。6月15日より、プーマストアやプーマ公式オンラインストアなどで販売される予定だ。さらにシューズやスパイクも東レとプーマが共同で開発中。サニブラウンはまだまだ速くなるだろう。


好調のサニブラウンが目指すもの

 今季のサニブラウンは高機能ウェアの後押しもあり、「例年と比べて、しっかり状態ができています」と好調のようだ。

 2月に米国の室内60mで自己タイの6秒54をマークすると、100mは米国で3レースに出場している。3月のハリケーン大学招待で10秒02(+0.5)、4月14日のトム・ジョーンズ招待で10秒04(+1.7)。4月27日のイーストコーストリレーは10秒15(+0.9)だったが、5月19日のセイコーゴールデングランプリは、「今季はまだパリ五輪参加標準記録(10秒00)を切っていないので、しっかり切っていきたい」と〝9秒台〟も視野に入れている。

 そして日本記録(9秒95)についても、「ただの通過点です」という認識だ。

「オリンピックでメダルを目指すには9秒8台をしっかり出していかないといけません。日本記録はもちろん、(今季は)アジア記録(9秒83)くらい出していかなきゃいけないと思っています」

 これだけの言葉を堂々と口にできるのには明確な理由がある。課題にしていたスタート部分が大きく進化したからだ。昨季まではスタートからの2歩目でうまく地面反力を得られず、「歩幅が短くなっていた」という。それをカバーするために3歩目が「オーバーストライド」になり、そこで「ロス」を感じていた。

 しかし、昨年11月にダッシュ系の練習をしているときに、コツをつかんだという。反復練習をしたことで〝新感覚〟が定着。「早い段階でスピードに乗れるようになったので、自分自身がビックリしている部分でもあるんですけど、昨季までと全く違う(スタートからの)30mになっているのかなと思っています」と自身の成長を感じている。

 100mは後半で強さを発揮してきたサニブラウン。遅れ気味だった前半でスムーズに加速できれば、これまで日本人が到達してこなかった〝未知の領域〟にも到達するはず。東京五輪は不完全燃焼に終わったが、今夏のパリ五輪は大きな期待をかけてもいいだろう。

「世界大会の100mは過去2回、決勝に進出したんですけど、そこで100%の力を出すことができませんでした。今年は決勝で自分のやりたい走り、パフォーマンスを出せるようにしたい。4×100mリレーに関しても一昨年、去年と悔しい結果で終わっているので、今年は勝ちにいこうかなと思います」

 今夏はパリでどんな輝きを見せるのか。まずは最先端ウェアを纏うサニブラウンの国立競技場でのパフォーマンスを楽しみにしたい。

筆者:酒井 政人

JBpress

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