<買う時に一旦考える><処分したら本当に困るのか>モノをためこまないための「4つのステップ」とは?名誉教授「子どもが老いた親に『よくできたね』と褒めるのはNG」
2025年5月21日(水)12時29分 婦人公論.jp
(イラスト:ナカミサコ)
片づいた空間は安全で暮らしやすく、気持ちのいい場所とわかっていても、なぜそれを実践できないのか。その原因を心理学の専門家が解き明します(構成:島田ゆかり)
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<前編よりつづく>
モノと向き合う4つのステップ
モノをつい手に入れてしまう心理、手放せない要因などをお伝えしてきましたが、いくつかのコツを掴めば、「ためこみ行動」を改善していくことができます。4つのステップに分けてご紹介するので参考にしてください。
最初のステップは、やはり、「モノを買わない、家に持ち込まない」こと。買う時に「本当に必要か?」といったん考えるのが入手しないコツです。
これまで、無意識、無頓着に、衝動のまま買っていたかもしれませんが、次のページの「買いたいと思ったら」の項目から2つだけでよいので思い出して、本当に今買う必要があるか考えてみましょう。その少しの意識が、抑止力になります。
また、今あるモノはどれくらいで使い終わるのかを把握することも重要です。シャンプー1本が何ヵ月で空になるのか、トイレットペーパー1巻は何日持つのか。買い替えの頻度をふまえていれば、「安いから。得だから」という理由では大量に買わなくなるはずです。
2つめのステップとして、「処分」のポイントについてお話ししましょう。
先ほどお伝えした、手放せない要因のなかで、手をつけやすいのは「もったいない」ととってあるモノ。使っていないモノを処分したからといって、困ることはありません。あることすら忘れていたならなおさらです。
どうしても捨てることに抵抗があるなら、リサイクルショップに持っていったり、ご自身が納得できる団体に寄付したりして、有効活用しましょう。
こちらも図の「手放したくないと思ったら」の項目と照らし合わせてみると、意外とすんなり処分できる人が少なくないと思います。
一方、処分の優先度が低いのは、思い出の品。これはきちんとしまっておき、年に1度見返すなどして、ゆっくり判断していけばいいでしょう。
3つめのステップは、「保管」です。
私が推奨しているのは「見える保管」。収納ケースを使う場合、ラベルを貼って整理する方法を見かけますが、作業が増えるとどうしても面倒になるもの。それにモノは視界に入らないと意識から外れてしまい、結局使わないということになりかねません。
最後のステップは、片づいた状態を「維持」すること。視覚的にモノが減ると、意識が変わるきっかけにもなります。片づけのメソッドはいろいろありますが、新聞や衣類、書類などのアイテムごとに片づけてもキレイになった実感が得られにくいので、私は「部屋ごと、場所ごとにできるだけ一気に」という方法をおすすめしています。
視覚的にモノが減ってキレイになったと実感し、心地よいと感じれば、片づいた部屋を維持するきっかけになります。また、定期的に友人を招くのも手。他人の目にさらされると、維持がしやすくなるでしょう。
家族に大切なのは理解と感謝
4つのステップのなかで一番大変なのが、「処分」だと思います。わかっていても手放せない。そんな人は多いはずです。そこで提案ですが、一人で向き合うのではなく、友人と一緒に片づけてみるのはどうでしょうか。
「今週はわが家、来週はあなたのおうち」と、お互いに協力し合うのです。第三者は「こんなモノいる?」と冷静に判断してくれるので、助かります。
もし家族で処分を行う場合は、互いにモノが多いことを責めたり、人のモノを勝手に処分したりするのは控えましょう。たとえ家族でも、必要な理由を訊いてみること。そうすれば、大事なわけがあったり、その問いにより本人が「いらないな」と気づいたりすることもあります。
また、子どもが老いた親に「よくできたね」と上から目線で褒めるのも気分を害することがあるため、おすすめできません。褒めるのではなく、片づいたことへの労いと感謝を。「きれいになったね」と感想を述べるだけでもよいのです。
心地いい部屋に変化すると、モノに対する向き合い方も変わっていきます。目指すのは、モノをきちんと使い、楽しめる生活。大切なモノは飾るなどして、ぜひ心豊かな空間を手に入れてください。
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