表にモノがないスッキリ空間はNG!シニア世代の片づけは、必要なモノを無理なく使いやすく収納。《片づけの3ステップ》で安心・安全・快適な暮らし
2025年5月19日(月)12時30分 婦人公論.jp
(写真:stock.adobe.com)
家事がはかどらない、すぐに散らかる、モノがなくなる……。悩みの原因は、住まいが今の暮らし方に合っていないからかもしれません。シニア世代ならではの整頓のコツを伝授します(構成:山田真理 イラスト:ナカミサコ)
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無駄な動きを減らす
私は身内の在宅介護をした経験から、年齢に合わせた住環境について考えるようになりました。現在は高齢者の整理収納サポーターとして、地域包括支援センターなどでセミナーを開くほか、体が不自由で片づけが難しい依頼者のご自宅を定期的に整えるお手伝いも行っています。
そうした場で声を聞き、お手伝いするなかで気がついたのは、シニア世代の家の片づけは「ただモノを減らせばいい。表にモノが出ていない、スッキリした空間を目指せばいい」わけではないということでした。
なぜなら、周りからは散らかっているように見えても、実はモノの定位置が決まっていて、本人にはその状態が《使いやすい》というケースがあるからです。
たとえば1日の大半を過ごすリビングのテーブルの上に、リモコンや文房具、メガネ、薬、化粧道具などが雑然と置いてあるとします。その理由が、立ち上がったり歩いたりするのがつらく、あちこちへ取りに行くのが大変だから、だったらどうでしょうか。
見た目のキレイさを優先してほかの場所にしまったら、かえって生活が不便になってしまいますよね。
年を重ねれば、腕が上がらない、深くかがめない、膝や腰が痛くて歩くのが億劫などと、体の機能は変化してくるもの。ですから家庭内事故で多い転倒を防ぐためにも、日常の動作が無駄なく、スムーズにできるように、使い勝手のいい場所に必要なモノが整理・収納されていることが大事なのです。
実際に片づけるのは、「床、廊下や階段(動線)」「リビングや寝室(滞在時間の長い場所)」「台所」の3ヵ所だけで十分。あちこち手をつけると収拾がつかなくなるうえ、長時間の作業は心身の負担になりますから、よく使う場所を中心に整えていきます。
安心・安全な住まいにするために、まずは、いて転ぶ危険を避けるため、動線である廊下や階段の床から、モノをなくすことを始めましょう。
安心・安全な住まいに
モノを大事にするシニア世代は、「いつか何かの役に立つ」と、段ボールや空き箱、スーパーのレジ袋、紙袋、新聞紙などを取っておきがち。それらが収納スペースから溢れたり、置く場所が決まっていなかったりした結果、床に《とりあえず》置いたままになっていないでしょうか。
ストックしたいモノは収納場所を決め、そのスペースに入りきらなければ潔く捨てるというルールを決めましょう。また、段ボールは害虫の温床にもなりやすいので、取っておかずに捨てることをおすすめします。
次に、「リビング/寝室」「台所」を片づけていきましょう。私が片づけをお手伝いしているなかで感じるのは、若い頃やその家に住み始めた時から、モノの収納場所や収納方法を変えていないご家庭が多いということ。
しかし加齢によって、あちこちの部屋に取りに行ったり戻したりするのが面倒になるうえ、手を伸ばしたり持ち上げたりする上下の動きが負担になってくるため、今の暮らしに合った収納に変えていくことが重要です。
とはいえ、すべての収納を一から見直す必要はありません。次のページで紹介する「片づけの3ステップ」は、自分に必要なモノを、無理なく使いやすく収納するための方法です。ステップ1と2で、今の暮らしに必要なモノを選び出したら(整理)、ステップ3で使い勝手のいい場所に置く(収納)。これだけで、無駄な動きが減り、快適に暮らせるようになるでしょう。
そうして「必要なモノ」が明らかになれば、おのずと「不要なモノ」も可視化されて手放しやすくなります。
片づけが進むと、転倒予防はもちろん、探しモノが減って時間が有効に使える、同じモノを買ってしまうことが減り節約になる、掃除や料理など家事がラクになるなどの効果も得られるでしょう。
さらに介護が必要になった際も、部屋が片づき、必要なモノがわかっていれば、自宅での介護がスムーズに受けられる。また、高齢者施設などへ移り住む時も、引っ越し作業に手間取らずに済むはずです。
片づけの3ステップ
【ステップ1】生活動線を把握する
その場所で「主に自分が何をしているか/その時に使っているモノは何か」を思い出し、モノの定位置を決める。
(例)
●その場所でしていること
リビングのテーブルで、本を読んだり、趣味の俳句を作ったりしている
●使っているモノ
本、老眼鏡、ペン、メモ帳、投稿用のレターセット、はさみ、のり
●モノの定位置
リビングのテーブルの上
【ステップ2】必要なモノを選び出す
ステップ1で洗い出した使うモノを、出し入れのしやすい引き出し、カゴ、半透明のケースなどに入れて《セット》にする。はさみなど頻繁に使うモノは買い足し、使う場所ごとにセットを作る。
(例)本、老眼鏡、ペン、メモ帳、投稿用のレターセット、はさみ、のりをカゴに入れて「趣味セット」とする
【ステップ3】使いやすい場所に配置・収納する
ステップ2で作ったセットを、よく使う場所、使い勝手のいい場所に配置・収納する。その際、重ねたり、布をかけたりすると忘れてしまうので、「見える収納」を心がける。
(例)「趣味セット」は、リビングのテーブルの上に置く
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次の記事から、場所とモノごとに片づけ術を紹介します。少しずつでもいいので、ご自身に合った快適な暮らしを実現していきましょう。
体がラクになる!場所・モノ別の片づけ術《台所編》につづく
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