ムカデ型のロボットが農園の雑草駆除に大活躍

2025年5月22日(木)19時0分 カラパイア


雑草駆除や作物の観察を行うムカデ型ロボット Ground Control Robotics[https://groundcontrolrobotics.com/our-robot]


 ムカデの動きから着想を得たロボットが、ブドウ畑やブルーベリー農園で注目を集めている。


 雑草を取り除きながら、作物の様子を自動で観察できるこのロボットは、複雑な地形を体をくねらせて移動し、作物を傷つけずに作業ができる。


 アメリカのスタートアップ企業が開発したこのロボットは、すでに農園での試験運用が進められている。


 人手不足や高まる管理コストに悩む農家にとって、待望の救世主となる見込みがあり、期待が寄せられている。


ムカデから着想を得た体をくねらせて動くロボット


 ジョージア州アトランタを拠点とするスタートアップ企業、「グラウンド・コントロール・ロボティクス(Ground Control Robotics)[https://groundcontrolrobotics.com/our-robot]」が、ムカデに着想を得た農業用ロボットを開発した。


 このロボットは、センサーを備えた頭部と、複数の同じ構造を持つセグメント(節)をケーブルで連結した本体で構成されている。各セグメントには2つのモーターが取り付けられ、脚を動かして前進する。


 一見すると複雑な構造だが、制御方法は意外にもシンプルで、高度な演算処理に頼ることなくスムーズな動作を実現している。


 ジョージア工科大学で複雑流動現象と生体力学を研究するジョージア工科大学の「CRAB Lab」を率いるダニエル・ゴールドマン教授は、「このロボットは、ムカデやヘビのように、体をくねらせながら前に進みます」と語っている。



Ground Control Robotics[https://groundcontrolrobotics.com/our-robot]


複雑な農地を踏み荒らさずに進む仕組み


 このムカデ型ロボットの特徴は、多脚が生み出す滑らかな推進力にある。脚の上下運動を精密に制御することで、地面を蹴りながら安定した動作を保つのだ。


 ケーブル駆動により、各セグメントは一方向に柔軟性を持たせることができる。これが起伏のある農地でもスムーズに“泳ぐ”ように進める理由だ。


「中央の駆動力を脚部へと分散させる新しいメカニズムを導入しました。調整がうまくいけば、ロボットは剛性と柔軟性を切り替えられ、複雑な地形も難なく移動できます」とゴールドマン教授は説明している。


 大型機械では通れないような細い農地や茂みにも、このロボットなら無理なく進入できる。作物を踏み荒らす心配が少ない点は、農家にとって大きな利点といえる。



Ground Control Robotics[https://groundcontrolrobotics.com/our-robot]


期待されている役目は雑草駆除と作物の観察


 グラウンド・コントロール・ロボティクスがこのムカデ型ロボットに期待しているのは、主に多年生作物(年を越して収穫できる作物)を栽培する農園での雑草除去と作物のモニタリングだ。


 ブルーベリーやイチゴ、ブドウなどの畑では、作物の密集やつるの絡みつきにより、大型の除草機械が入りづらく、除草作業の多くを人力に頼らざるを得ない状況が続いている。


 こうした農園では、1エーカー(約0.4ha)あたり数百〜数千ドル(日本円で数万円〜十数万円)の作業コストがかかることも珍しくない。加えて、アメリカでも農業分野の人手不足が深刻化している。


 ゴールドマン教授は「私たちは、このロボットを作物のすぐそばまで送り込みたいと考えています。大きくて不器用な機械が畑を壊してしまうようでは意味がありません」と話す。



小型で安価、そして24時間稼働も可能に


 このロボットのもう一つの利点はコストの低さだ。構造が比較的単純で、脚部のモジュールも低価格で量産できることから、従来の農業用ロボットと比べて大幅に安く提供できる見込みだ。


 同社によれば、価格帯は数千ドル(数十万円)程度になる見通しだ。


 また、動作に高度なセンサーや演算装置を必要としない設計となっているため、「機械的知能」ともいえるシンプルな仕組みで動作する。


 このため、複数のロボットを群れのように分散配置し、無人で24時間稼働させる運用も視野に入れているという。


 現段階では、畑を巡回して雑草や作物の状態を見守る自動観察ロボットとしての運用が中心だが、それでも農家にとっては十分に価値がある。


 ロボットには、雑草の根元に除草剤を直接噴射したり、物理的に引き抜いたりする機能も搭載されている。


 今後は、専用のグリッパー(つかみ具)やレーザーを使った雑草除去機構の実装も検討されており、より幅広い作業への対応が期待されている。



Ground Control Robotics[https://groundcontrolrobotics.com/our-robot]


現在テスト運用中


 現在、グラウンド・コントロール・ロボティクスは、ジョージア州のブルーベリー農家やブドウ農園と協力し、現場でのテスト運用を進めている。


 このテストを通じて、ロボットのナビゲーション機能やセンサーの精度をさらに高めていく予定だ。


 また、同社は将来的に農業以外の分野、たとえば災害救助や軍事用途への応用も見据えている。



References: Meet Our Multilegged Robot[https://groundcontrolrobotics.com/our-robot]

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