「心がもやもやする……」と感じたら? キウイに注目 - 心と栄養素の意外な関係
2025年5月27日(火)16時4分 マイナビニュース
「なんとなく気分がすぐれない」「疲れが取れない」など、“心の不調”を感じるとき、キウイが助けになるかもしれない。
ニュージーランド・オークランド大学で栄養とメンタルヘルスの関係を研究するベン・フレッチャー博士は、ゼスプリ本社で「キウイに含まれる栄養素が気分の改善に役立つ可能性がある」という研究結果を紹介した。なんと、キウイの種類の一つである「サンゴールドキウイ」を1日2個食べることで、幸福感が高まり、「怒り」「緊張」「憂うつ」といったネガティブな感情が軽減されるという。
フレッチャー博士はニュージーランドのオタゴ大学で心理学の博士号を取得後、「若者のメンタルヘルスと栄養の関係」について継続的に研究。2022年からは、同国で実施されている大規模な縦断研究「グローイング・アップ・イン・ニュージーランド」にも参加し、心の発達に関するさまざまアプローチを行っている。
○■サンゴールドキウイの「ビタミンC」は脳の健康にポジティブに影響
ある調査によると、4人に1人が何らかの心の不調を抱えており、多くの人が「完全に健やかな心の状態ではない」と感じているという。こうした心の問題は、生活の質を下げるだけでなく、社会全体の負担にもなっている。フレッチャー博士は「心の健康には、毎日の食事が与える影響はとても大きい」と語る。
食事でとれる栄養素の中でも、フレッチャー博士が注目しているのが「ビタミンC」だ。
これまでの研究で、フルーツや野菜を食べることが心の健康によいことは知られていたが、「どの成分が特に効果的なのか」は明確ではなかった。実際に、ニュージーランドではフルーツを毎日摂取している人はわずか6%程度にとどまり、他の先進国でも同様の傾向が見られるという。
そこでフレッチャー博士は2017年からビタミンCの働きに着目し、研究を進めている。研究対象となったのは、ビタミンCを豊富に含む「サンゴールドキウイ」だ。ビタミンCには強い抗酸化作用があり、脳の健康を保つことや神経の働きを助けることに関わっていると考えられている。しかしビタミンCは体の中で作ることができないため、食べ物から摂取する必要がある。
○■1日2個のキウイで幸福度が高まる
フレッチャー博士の研究では、167人の大学生を対象に「プラセボ対照試験(治験薬の効果を評価するために、偽薬を投与して比較する試験)」を行った。被験者は3つのグループに分けられ、【1】「1日2個のサンゴールドキウイを食べるグループ」、【2】「250mgのビタミンC錠剤を摂取するグループ」、【3】「プラセボを摂取するグループ」に割り振られた。
8週間にわたり、スマートフォンを使って日々の気分や疲労感、ウェルビーイングの変化を記録し、2週間ごとに血液検査で血中ビタミンC濃度を測定。研究は導入期(2週間)、介入期(6週間)、ウォッシュアウト期(2週間)に分けて実施された。
「研究の結果、サンゴールドキウイを食べたグループは、ほかのグループに比べて、疲労感の軽減がはっきりと見られました。特に、研究開始時にビタミンC濃度が低かった人ほど改善が顕著で、これはビタミンC不足が疲労感と関連している可能性を示しています」(フレッチャー博士)
また、幸福感の指標も上昇。【1】「1日2個のサンゴールドキウイを食べるグループ」と【2】「250mgのビタミンC錠剤を摂取するグループ」の両方で、研究が始まって2週間後から、ウェルビーイングのスコアが上がり始めたという結果が出ている。
さらに、「怒り」「緊張」「憂うつ」などネガティブな感情を測る指標も、サンゴールドキウイを食べたグループでは明らかに低下したという。
○■ビタミンE、カリウム、食物繊維……キウイには10の栄養素が含まれる
研究結果を受けて、フレッチャー博士は「サンゴールドキウイにはビタミンCだけでなく、他の栄養素との相乗効果があり、メンタルヘルスの改善に貢献している可能性がある」と解説した。
実際に、キウイ自体にはビタミンEやカリウム、食物繊維など、10種類の栄養素が含まれており、これらが総合的に作用することで、より高い効果が得られていると考えられている。
フレッチャー博士はこの研究結果を経て「“食生活の改善を通じてメンタルヘルスを向上させる”という考え方が広がっていくことを願っています」と話した。
橋本 岬 2014年に法政大学大学院を中退後、女性ファッション誌の編集者を経てフリーランスに。得意ジャンルは、IT、スタートアップ、エンタメ、女性の働き方。2022年4月から2023年2月までカナダに語学留学。 この著者の記事一覧はこちら