「現場主義」掲げる農林水産省職員の働きがい「若手の業務の大半は抜き取り検査」「輸入植物から病害虫を発見したときは達成感」
2018年7月9日(月)7時0分 キャリコネニュース
公務員の職種や待遇は様々だが、学生などを対象とした様々な"なりたい職業ランキング"では、国家公務員が常連になっている。今回はそんな国家公務員にスポットライトを当て、キャリコネに寄せられた口コミからその労働環境の実態を紹介しよう。
当記事で取り上げるのは、農林水産省の職員たちの口コミだ。農水省は1881年に設立した、食料の安定供給の確保や森林・水産資源の保存管理などを図る行政機関。農林水産予算は2兆3021億円(2018年概算決定額)で、2万1000人以上の職員を抱え、農林水産政策の企画・立案、実行を行っている。
近年は1次産業の農林水産業を製造業・小売業などの事業と統合させる6次産業化を推進。成長産業に変えていく取り組みなどにも注力している。
「育休や産休への理解は浸透しており、このことがキャリアを妨げる可能性は低い」
人事院は6月下旬、来年度採用する国家公務員総合職の試験に1797人が合格したと発表している。うち女性は488人で、2016年度試験の512人に次いで過去2番目に多く、女性比率は27.2%と過去最高だった。
農水省の口コミからは、長時間労働を指摘する声もあるが、「女性の管理職が何名かいました。女性もキャリア志向が高い方が多く、結婚・出産をしても復帰する人が多いです。一般の企業よりも育児休暇制度が充実しているので、民間よりは復帰しやすい制度が整っていると感じます。自分がいた職場の女性管理職の方もお子さんがいらっしゃいますが、バリバリ働いていました」(20代前半女性 260万円)というように、ライフイベントに合わせ、長く働きやすい制度が整っていることが伺える。前年度の育児休業取得者数は162名で、うち37名が男性(2016年度実績)となっている。
「女性にとっては働き安い職場と思われます。また、国の政策で女性管理職を増やそうとする動きがあるので目指したいかたにとってはいい環境です。ただ、女性で管理職になりたい方は少ないのではないかと雰囲気から感じます。育休や産休への理解は職場内に浸透しており、このことがキャリアを妨げる可能性は低いと思います」(20代後半男性 480万円)
「有給休暇が入ってからすぐに取ることができます。(もちろん、申請した日を上司が許可すればですが)日数も民間より多めです。一般の企業だと、半年後付与のところが多いので、さすが公務員は待遇が違うなと思いました。健康診断も細かいところまできちんと行ってもらえるので好感がもてます」(20代前半女性 260万円)
「社会的な建前もあり人事上男女差別はない(と思われる)ので、女性でもⅠ種職員として採用され、キャリアを積めば管理職を目指すことは十分可能。ただし、Ⅰ種の職務は激務のポストを回ることが多いため、そこで男性と同様の激務(深夜残業や徹夜も多い)に耐え、結果を残していくことが必要」(20代後半男性 600万円)
他の国家公務員と同様、残業は多いが……やりがいは◎
一方、残業に関しては他の省庁同様に、「この業界ではある程度の残業は覚悟しなければなりません。ただ、付き合いでの残業ということはなく、必要なため残業をするという感じです。特に若手のうちは膨大な自分の仕事量をコントロールできないため、残業が多くなる状況です」(20代後半男性 500万円)など、厳しい声も多かった。
「(残業を)問題視する声も少なくはない。近年は世間体もあるため、夜遅くまで働くのはやめようという動きもあるが、部分的で、結局持ち帰り仕事が増えただけなのではないだろうか。有給はあってなきがごとし。しかし、それでも安定して雇ってもらえるので全体で見るとプラス」(20代前半男性 500万円)
「基本的に残業はほとんどなく、定時で帰る人が多いですが、特別な案件が入ってきたり、新しく法律ができる時などは忙しいです。休みも土日は休みでプライベートは確立されてると思います。祝日もきちんと休めるし、カレンダー通りです。逆にカレンダー以上の休みはないですが、あとはそれぞれが有給などを使用してお休みを取っています」(財務・会計関連職 20代後半女性 240万円)
やりがいについては、「出先機関にて、空港や港で輸入植物の検疫を行う業務に携わっていました。日本ではあまりお目にかからない珍しい植物をみることができます。また、まれではありますが、輸入植物から重要な病害虫を発見することがあり、そのような場合には、重要病害虫を水際で食い止めることができたという達成感を味わうことができます」(20代後半 男性 380万円)など、専門性の高い仕事では概ね高い評価が目立った。
「自分自身が民間企業経験者なので感じることなのですが、なかなか他の企業にアポイントをとって、時間を取ってもらうことはできません。行政の人間であることを伝えると、どんどんアポイントがとれるので、何か知りたい話があって自分で動ける状態であれば、苦労はありません」(30代前半男性 400万円)
「特に若手の業務の大半は、現場に出かけて行って抜き取りの検査を行うことの繰り返し。最近は院卒でそこそこの研究経験のあるような人も入所するようだが、そうした人にとっては物足りなさを感じるのではないか。自前の調査研究施設もあるが、そこに行けるかどうかは運まかせのような部分もある」(20代後半男性 380万円)
全国各地に多数の関係者を持つ農林水産省は「現場主義」を掲げ、全国各地域で意見交換会なども行っている。地道な仕事も多いそうだが、生産・流通・消費に幅広く関われる、唯一無二の組織と言えそうだ。