「事故のせいで踏切がちっとも開かない。雨の中待ち続ける私に、見知らぬおじさんがビニ傘をグイッと...」(奈良県・30代女性)

2022年8月22日(月)12時20分 Jタウンネット

シリーズ読者投稿〜あの時、あなたに出会えなければ〜 投稿者:Kさん(奈良県・30代女性)

今から5年前のその日、Kさんは会社から自転車で帰宅途中、踏切の前で立ち往生していた。事故の影響で、いくら待っても開かなくなっていたのだ。

そのうち雨も降ってきて困っていた所、隣にいた見知らぬおじさんに声を掛けられ......。

<Kさんの体験談>

5年ほど前、奈良の大和西大寺駅と菖蒲池駅の間にある踏切での話です。

元々閉まっている時間が長い踏切なのですが、その日は人身事故があり、全く踏切が開かない状態になっていました。

「傘持ってへんのか?」

私は仕事からの帰宅途中で、その踏切を迂回したとしても自宅に帰るにはどこかで同じ路線の踏切を渡らないといけません。「どこの踏切も閉まっているのなら、普段の帰り道であるこの踏切で待とう。もう数分もすれば開くだろう」と思い、私は待つことにしました。

しかし、待てども暮らせども踏切は開きません。30分が過ぎたころには、他の歩行者達は踏切をくぐって渡る始末。いけないことだとは百も承知ですが、正直私もそうしたかったです。しかし自転車なのでそれもできません。

そうしていよいよ1時間が経過。早く帰って食事を作って明日の仕事の準備もしないと......と思っていた時、不運なことに雨が降り始めてしまいました。

もう家に帰るだけとは言え、いつ開くか分からない踏切や、止むのか分からない雨に、私はすっかり悲しい気持ちに。そんな時、同じく踏み切り待ちをしていた男性に声をかけられました。

「傘持ってへんのか?」

暗くてよく分かりませんでしたが、多分50代ぐらいの方だったと思います。

「今でも大切な傘です」

「この傘使い。会社すぐそこやねん、まだ傘あるねん」

その人はそう言うと、遠慮しようとした私に傘をグイと渡して、雨の中をダッシュ。会社に戻って行かれました。

何分経ったかわかりませんが、その後その人は別の傘を持って戻って来られました。

すっかり濡れてしまっていたので、申し訳ないやらありがたいやら......。私はお礼を伝えると同時に会社名とお名前を聞いたのですが

「えぇよ、傘も返さんでいいから、もらっといて」

と、結局教えては頂けませんでした。

ただのビニール傘なんですが、私にとって今でも大切な傘です。他の傘と区別がつくよう持ち手の所にシュシュを巻いて、玄関の傘立てに入れています。

偶然居合わせたあの人にお礼の品を贈ったり傘を返したりすることはできませんが、受けた親切をまた別の誰かに返すことが私にできる恩返しだと、玄関の傘を見るたびに胸に刻み実行し続けています。

誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!

名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。

Jタウンネットでは読者の皆様の「『ありがとう』と伝えたいエピソード」を募集している。

読者投稿フォームもしくは公式ツイッター(@jtown_net)のダイレクトメッセージ、メール(toko@j-town.net)から、具体的な内容(どんな風に親切にしてもらったのか、どんなことで助かったのかなど、500文字程度〜)、体験の時期・場所、あなたの住んでいる都道府県、年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。

(※本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいた体験談を編集して掲載しています。あらかじめご了承ください)

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