実は400軒もの生産者が作っている!? 今さら聞けない「揖保乃糸」の秘密とは?

2023年8月30日(水)10時50分 食楽web


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●兵庫県たつの市エリアが生んだ、日本屈指の手延べそうめんブランド「揖保乃糸」。知られざる秘密を探りに聖地を訪ねてきた

 今年の夏も口にした人は多いはずの手延べそうめんの名ブランド「揖保乃糸」。兵庫県の播州エリアの豊かな気候風土、良質の小麦、赤穂の塩、綺麗な水によって作られるもので、現在では全国の手延べそうめんシェアの約40%を占めるという日本屈指のブランドです。

 私たちが普段当たり前のように美味しく食べている「揖保乃糸」ですが、実は、「揖保乃糸」には一般に知られていない事実も多くあります。たとえば「いくつもの等級がある」「その等級によって、冬場の3ヶ月のみにしか作られないそうめんがある」「実は1社だけでなく組合に属するおよそ400もの組合員が製造している」など。

 今回は、そんな「揖保乃糸」の秘密を探るべく、兵庫県たつの市にある製造元の兵庫県手延素麺協同組合を訪ね、営業部企画課の天川亮さんに話を聞いてみることにしました。


兵庫県手延素麺協同組合・営業部企画課の天川亮さん

良質な原料と播磨人の職人気質により育まれた「揖保乃糸」


「揖保乃糸」の聖地・兵庫県たつの市を流れる揖保川

 たつの市は、兵庫県の南西部に位置するエリア。川の流れが緩やかな揖保川があり、この川のすぐ近くに兵庫県手延素麺協同組合があります。取材に応じてくれた天川さんにまず「揖保乃糸」の歴史について聞きました。

「地元では、約600年前からそうめん作りが行われていた文献が残っていますが、本格的にそうめん作りの組織化がなされはじめたのは江戸時代末期の頃のことです。それまでは地元で複数の業者が、それぞれブランドで製造、販売していたため、規格もまちまちでした。粗製や乱造といった悪循環を断ち切るため、基準を設けて品質を統一し、産地としての信頼を守り、伝統を維持していくために1887年には現在の兵庫県手延素麺協同組合の前身である、播磨国揖東西両郡素麺営業組合が設立され、本格的な『揖保乃糸』のブランド形成がはじまりました」(天川さん)

 そもそも600年以上前から、たつの市周辺エリアでそうめん作りが行われていたのには理由がありました。冒頭でも触れた通りの、そうめん作りに必要となる気候風土や良質の原材料が身近にあったことです。

「揖保川の綺麗な水の恵みがあり、粘りや弾力に富む良質の小麦が取れ、さらにそうめん作りに絶対に欠かせない塩も有名な赤穂の塩が近隣にありました。さらに、これは播磨人特有の気質として『職人魂』みたいなところがあるんですね。勤勉で真面目で常に、『より良いものを作りたい』という意識があり組合の設立以降、その品質基準も明確に制度化し、厳格に運用されています。『揖保乃糸』の商標が誕生したのは1894年のことです。厳しい品質基準にクリアしたものだけが組合の統一商標『揖保乃糸』として販売されています。」(天川さん)

 つまり、約600年前からそうめん作りが始まったというたつの市エリアですが、「揖保乃糸」ブランドが確立された時代を振り返っても、130年くらいもの歴史があるということになります。

約400軒の製造でもバラつきやブレが出ない理由とは?


「揖保乃糸」製造の後半にあたる「門干し(かどぼし)」と呼ばれる工程の様子

 こういった経緯から、「揖保乃糸」のそうめんは1社だけで製造するのではなく「組合に属する複数の組合員(生産者)が組合管理のもと『揖保乃糸』ブランドのそうめんを作る」という独特の取り組みとなっており、聞けばその生産者数はなんとおよそ400軒。しかし、素朴な疑問として、これだけの業者が「揖保乃糸」を作るとなれば、品質にブレが出てしまうのではないかということです。この点についても聞いてみました。

「原材料や資材など、定められた規格のものを組合が一括で仕入れ、それらを組合員に分配、統一された基準よって組合の検査指導員が製造指導や製品の格付け検査をおこなっています。厳しい検査に合格したものだけを組合のそうめん専用熟成保管倉庫に入庫、特約販売店を通じて全国に流通しています」(天川さん)

 その検査を行う「検査指導員」と呼ばれる人は、地元で実際に「揖保乃糸」の製造に従事している、そうめんづくりのエキスパート20名ほどからなり「揖保乃糸」の品質を死守し続けているのだそうです。

「揖保乃糸」は冬場の限られた時期に製造される!?


「揖保乃糸」は私たちがよく口にする赤帯の「上級品」(写真左端)以外にも、複数の銘柄があります

 こういった厳しい基準を経て作られる「揖保乃糸」ですが、実はその種類が数多くあります。スーパーマーケットなどで見かける赤い帯の「上級品」をはじめ、グレードは10以上。さらにひやむぎ、手延べうどん、中華麺、パスタなどもあります。中には、年間のうち、冬場のたった3ヶ月しか製造できない銘柄もあると言います。


ホームページの一部を抜粋(食楽web)

「『揖保乃糸』は製造過程において、何度も何度も熟成を挟んで完成させていくのですが、例えば夏の暑い時期に製造すると熟成のコントロールがままならず、品質が落ちてしまうんですね。ですので、そうめんの製造は温度、湿度が安定している10月から翌年の4月にかけておこないます。なかでも特に気温が低く、ゆっくりと熟成が進む12月から2月に製造の最盛期を迎えます」(天川さん)

繊細に作り上げた「揖保乃糸」だからこそ、丁寧に茹でてほしい


「揖保乃糸」をシンプルな出汁と薬味でいただきます。揖保乃糸資料館そうめんの里レストラン「庵」

 およそ400軒もの生産者が力を合わせ、協力しながら作り上げる「揖保乃糸」。その品質は地元の人たち同士が「揖保乃糸」を守り、そして多くの人たちの「美味しく食べてほしい」という思いのもとで製造されていることがよくわかりました。その上でいただく「揖保乃糸」は、いつも以上に繊細な味わいを感じることができました。瑞々しい口当たりと、程よいモチモチ感と喉コシ、そして口いっぱいに広がる優しい小麦の風味は、まさに唯一無二のそうめんだと思いました。ひいては、そのシンプル・イズ・ベストの味わいから、こだわりぬかれた良質な原材料、そして播磨人ならではのストイックな職人技をも強く感じることもできました。

●まとめ:古い歴史を持つ「揖保乃糸」。地元のおよそ400軒もの生産者が協力し品質を守り抜いているからこそ、あの美味しさが実現できていることがわかった!


瑞々しく、小麦の風味豊かな麺がたまりません!

 最後に天川さんに、生活者の方へのメッセージももらいました。

「今回解説させていただいた通り『揖保乃糸』は良質な原材料を採用し、組合管理のもと、組合に属する多くの組合員(生産者)さんが手間暇をかけて作っています。今後もぜひ多くの方にお召し上がりいただきたいです。また、そうめんは茹で方が命ですので、商品の袋や公式サイトの美味しい茹で方を参考にしてください。どなたでも簡単に、最高の状態で『揖保乃糸』をお召し上がりいただけると思います。公式サイトには季節を問わず、そうめんを美味しくお召し上がりいただけるアレンジレシピをたくさん紹介していますので、一年中そうめんを楽しんでいただきたいです」(天川さん)

「揖保乃糸」ブランドでは、9月いっぱいまで「そうめんやっぱり揖保乃糸キャンペーン」を実施中です。該当商品のバーコードを切り取り、複数あるプレゼントのコースに応じて必要枚数を集めて応募するもの。こちらもぜひチェックしてみてください。

(撮影・文◎松田義人)

●DATA

揖保乃糸

https://www.ibonoito.or.jp/index.html

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